競艇ではエンジン(モーター)がレースの行方を左右する!馬力や排気量などのスペックを紹介
競艇は、選手の実力がレース結果に大きく影響することは紛れもない事実です。
しかし、レースは選手の実力だけで決まるものではありません。
競艇選手はあくまでもスピードを出したり、ターンをしたりというようにボートを操舵しているだけです。
競艇で使用されているボートを前に進めているのは競艇選手ではなく、そのボートに取り付けられているエンジンです。
実は競艇のエンジンは、レース結果に大きく影響するほど重要な要素となっているので、競艇に勝ちたいのであれば、エンジンについて基本的な知識を身に着けておいて損はありません。
本記事は、競艇で使用されているエンジンについて、構造や予想での活用法を解説していきます。
競艇のエンジンとは?
エンジンと聞くと、一般的には車のエンジンのように動力部分全体を想像しますが、競艇でエンジンという単語は、動力部分全体ではなく、「モーター」部分を指すことが多いです。
エンジンはボートを前に進める原動力となる部分なので、速さを競う競艇においては最も重要なパーツといっても過言ではありません。
エンジンは各選手が所有するのではなく、各競艇場が60台ずつ保管しています。
そしてエンジンには「モーター番号」という番号が付けられていて、1年で新品と交換することが定められています。
エンジンには微妙に個体差や性能差がある
エンジンを作っているメーカーはなるべく公平なレースがおこなわれるように、厳しい基準を設けて同じ性能のモーターを製造するように心がけていますが、実際はまったく同じモーターというのはなかなか作ることが難しく、エンジンには個体差や性能差があるのが現状です。
素人から見れば微妙な差なのですが、コンマ1秒を争う競艇の世界ではこの微妙な差が勝負を決定づけることもしばしばあります。
どの選手がどのエンジンを使うかは毎年抽選で決まる
選手が使用するエンジンは選手自身が自由に選ぶのではなく、レースの前日に実施される、「前日検査」という検査の段階で抽選が実施され、その抽選によってその時のレースで使用するエンジンが決まります。
エンジンに性能差があることは選手たちも周知しているので、できるだけ高性能のエンジンを引き当てたいところですが、抽選なので良いエンジンを引き当てるかはどうかは100パーセント運頼みです。
選手にとってはある意味、運も実力のうちに入るのかもしれません。
エンジンは毎年新品に交換することが定められていますが、交換時期は競艇場によって異なっており、以下の表のようになっています。
エンジンの交換時期
競艇場 | 交換月(月) |
桐生競艇場 | 12月 |
戸田競艇場 | 7月 |
江戸川競艇場 | 4月 |
平和島競艇場 | 6月 |
多摩川競艇場 | 8月 |
浜名湖競艇場 | 4月 |
蒲郡競艇場 | 5月 |
常滑競艇場 | 12月 |
津競艇場 | 9月 |
三国競艇場 | 4月 |
びわこ競艇場 | 6月 |
住之江競艇場 | 3月 |
尼崎競艇場 | 4月 |
鳴門競艇場 | 4月 |
丸亀競艇場 | 11月 |
児島競艇場 | 1月 |
宮島競艇場 | 9月 |
徳山競艇場 | 4月 |
下関競艇場 | 2月 |
若松競艇場 | 12月 |
芦屋競艇場 | 5月 |
福岡競艇場 | 6月 |
唐津競艇場 | 8月 |
大村競艇場 | 3月 |
競艇のエンジンを製造している会社は1社のみ
エンジンは各競艇場に保管されていますが、全24カ所に補完されているすべてのエンジンはたった1社で製造されています。
競艇のエンジンを製造している会社は、「ヤマト発動機株式会社」というメーカーです。
ちなみにヤマト発動機はエンジンだけではなく、ボート本体をはじめすべてのパーツがヤマト発動機で製造されています。
つまり競艇はヤマト製のボートを使って争われている公営競技ということになります。
競艇で使用されているエンジンのスペックについて
現在使用されているモーターの基本的なスペックは、下記となっています。
・約23.5kW(31PS)で排気量は396.9cc
・最大出力は毎分6,600回転で31馬力
このあたりのスペックはあまり頭に入れておく必要はありません。
それ以上に重要なのが、2015年に競艇で使用されるモーターが標準型から低出力型に変わったことです。
現在のモーターの特徴で特筆すべきは、「モーターの性能差がかなり大きい」という点です。
つまり、これまで以上に良いモーターを引き当てれば格下の選手でも活躍できるほどの性能を持っているということになります。
逆に悪いモーターを引き当ててしまうと、百戦錬磨で整備には定評があるベテラン選手でもそのふりを覆すことは難しいです。
エンジンはさまざまな部品で構成されている
競艇で使用されているエンジンは自動車に積まれているエンジンと同様に、さまざまな部品で構成されています。
部品をひとつひとつ紹介するとキリがないので、部品のなかでも特に競艇レースに影響するであろうパーツのみ厳選して特徴を解説していきます。
プロペラ
プロペラはそれだけで独自のパーツといえるほど重要なのでエンジンの部品として扱うかは微妙なところですが、エンジンに取り付けて使用するため、ここではエンジンのパーツとして扱います。
いうまでもなくプロペラは、モーターの出力をボートの推進力に換えるパーツであり、競艇では無くてはならないパーツのひとつです。
プロペラは抽選をした際に選手にモーターとセットで渡され、整備をする際に調整するパーツとしては最重要となる部品です。
プロペラの調整具合によって乗り心地やモーターそのものの性能が大きく変わるので、プロペラの調整が得意な選手は多少の不利をひっくり返すことができます。
また、同じ競艇場のレースでもその日の気温や気候によってプロペラを触ることで、モーターの回転数を調整することもできます。
ピストン
ピストンは、出足をアップさせたいときや転覆してしまったときなどによく交換される部品となっています。
ただし単純に新品に交換すればいいというわけではなく、場合によっては使用済みの中古のピストンにあえて交換することもあります。
新品にするか中古にするかは、最終的には選手自身の経験や自分の能力で判断することになります。
チルト
チルトはモーターの角度を決定づける部品で、ここを調整することでボートか水面に接する面積が大きく変わり、乗り心地や走行が大きく変動します。
チルト角度を上げると安定性が低下する代わりに直線での伸びがアップするので、アウトコースの選手はチルトを少し挙げて挑む時があります。
クランクシャフト
クランクシャフトはエンジンの心臓部であり、ここが破損するとまともにエンジンとしては機能しなくなります。
交換する際にはとても時間がかかるため、クランクシャフトが交換されているモーターというのはよほど大きな問題が起こったのだろうと判断して間違いありません。
選手は自由にエンジンの整備をすることができる
抽選で良いエンジンを引けなかったとしても、挽回できるチャンスは十分あります。
実は選手はレース開催中、自由にエンジンの整備をすることが可能になっています。
抽選でモーターとプロペラを受け取ったら、まずは現状を確認するためそのままボートに取り付けて走行してみます。
その後の調整は選手の技術力によって仕上がりが大きく変わりますが大きく分けると、トップスピードの伸びを重視する「伸び足型」か、加速重視の「出足型」のどちらかに調整をかけていきます。
インに属する選手は出足型に、アウトに属する選手は伸び足型に調整することが多いですが、選手のレーススタイルやレース場のコンディションによってこれが逆転することもあります。
そしてプロペラもモーターの性能を決定づける重要な部品なので、細かな調整を施します。
エンジンの性能はレースに大きく影響、予想での活用法とは
エンジンの性能は、レースの展開に大きく影響することは間違いありません。
ただし実際にどのような調整をしたかを語られることがないので、現在のエンジンの調子がどれくらいなのかはデータの数字などで確認することになります。
本項目ではエンジンの性能差をどのように見極め、レースに活用していけばいいかを解説します。
出走表などでモーター勝率をチェックする
エンジンについての情報は、出走表などにある程度記載されています。
まずは出走表の情報のうち、「モーター勝率」という項目をチェックしましょう。
ここには選手が現在ボートに積んでいるエンジンの勝率や連帯率が書かれています。
この数値が高ければ高いほどいいエンジンだということになります。
だいたい2連対率が40%を超えていれば、かなり高性能のエンジンと判断していいでしょう。
部品交換を行っているかを確認
選手はエンジンの調整をする際、必要に応じて部品を交換することがあります。
実はどの部品を交換したかによって、そのエンジンの調子がある程度判別できるのです。
部品交換は単にモーターの調子をアップさせる目的と、現状調整しなければまともに使える状態ではないと判断して部品を交換する場合とに分けられます。
下記の交換が施されたエンジンは、調整前はとても使える状態でなかった場合が多いです。
・シリンダーケース
・ピストンを3本以上交換
・ピストンリングを3本以上交換
そして交換したとしてもそれほど高性能となるわけではないので、上記の交換が施されているエンジンを積んでいるボートは、あまり良いレースができないと判断したほうが良いでしょう。
可能であれば展示航走を見てモーターの出足などを確認しよう
エンジンの調子をもっとも確実にチェックできるのは、レース前に必ずおこなわれる「展示航走」です。
ここで綺麗にターンが出来ていたり、ほかのボートよりも出足が良いボートであれば、エンジンの調子はかなりいいと判断できます。
過去にあった返還金額の大きいフライングを紹介
フライングを起こした選手が絡んでいる舟券は全額返還となりますが、その選手が出場していて、なおかつ人気が高ければ高いほど返還金額は大きなものとなってしまいます。
本項目では、過去発生したフライングのうち、特に返還金額が大きくなったものをいくつか紹介します。
第12回グランドチャンピオン決定戦競走(SG)
ひとつめは2002年6月30日におこなわれた「第12回グランドチャンピオン決定戦競走」です。
グランドチャンピオンは、いうまでもなく競艇のレースの中でも最もグレードの高い「SGレース」のひとつです。
さらに決定戦競走ということは、このレースで優勝者が決まる、選手にとってはもちろんの事、運営側にとっても、そして舟券を購入しているお客さんにとっても大事なレースです。
そんなレースで、1号艇の西島選手と、2号艇の熊谷選手が揃ってフライングしてしまうという事態になりました。
西島選手が0.09秒、熊谷選手に至ってはわずか0.06秒というほんのわずかなものですが、それでもフライングであることに変わりはありません。
SGレースであることももちろんでしたが、競艇はインコースであればあるほど有利ということもあり、西島選手と熊谷選手は1番人気、2番人気の選手でした。
したがって、舟券を買っていたほとんどの人が1番、2番がらみの舟券を購入していたのですが、フライングによってそれらは全て無効となります。
このフライングによる返還金額はなんと24億3513万3,800円という金額となっており、実に舟券の売り上げのうち、92.8パーセントが返還される事となりました。
この金額はいまだにフライングによる返還金額歴代1位となっています。
第16回笹川賞競走(SG)
笹川賞は現在「ボートレースオールスター」という名称で、前年などにSG選手に出場経験がある選手又はファンによる人気投票によって選出された選手のみが出場できるレースとなっています。
ボートレースオールスターはSGレースの中でも人気選手が出場しているという事もあり、売り上げの大きいレースですが、1989年5月9日のレースで、1コース2号艇の西田選手、4コース1号艇の荘林選手が揃ってフライングをしてしまいました。
このレースも1号艇、2号艇の選手が相次いでフライングしたという事もあって、返還金額は19億3514万3,500円と、歴代2位の返還金額となっています。
ちなみに売り上げにおける返還率は69.4パーセントです。
第42回総理大臣杯競走(SG)
総理大臣杯競走は、現在「ボートレースクラシック」という名称になっています。回数を見ればわかる通り、SGレースの中でも古くから開催されている格式あるレースです。
1997年3月27日に開催された同レースの優勝戦において、5コースに入った植木選手がフライングを起こしてしまいました。
植木選手と言えば「艇王」「不死鳥」の異名を持つ、当時圧倒的な実力と人気を誇っている選手でした。
そのため1名のみのフライングでありながら、返還金額17億4522万7,700円、返還率84.6パーセントと、運営側にとってはとても大きな損失となりました。
第16回賞金王決定戦競走(SG)
賞金王決定戦は、現在「グランプリ」という名称になっています。
ボートレースにおいて、その1年を締めくくるレースであるとともに、賞金も他のレースとは桁違いに大きいものとなっています。
グランプリに優勝した選手がその1年での賞金王に輝くことも珍しくありません。
そんな競艇界最高峰のレースにおいてのフライングは相当大きな返還金額になるであろうことは容易に想像出来ます。
2001年12月24日に開催された同レースの優勝戦において、5コースに侵入した5号艇の山崎智也選手がフライングを起こしてしまいました。
返還率は43.3パーセントと他の事例と比較すれば少ないですが、返還金額は18億5882万8,200円と、決して引けを取らない金額です。
この金額を見るだけでもいかにグランプリが大きな売り上げを記録するレースかが分かるのではないでしょうか。
最近のレースでも大きな返還金額が発生!
これまでは過去のレースのフライングについて紹介しましたが、実は最近のレースでも大きな返還金額となってしまったフライングが発生しています。
2019年8月27日から9月1日にかけて、SGレースのひとつである「ボートレースメモリアル」が開催されていたのですが、その準優勝戦でフライングが発生しました。
1ターンマークを回った時点で先頭だった峰選手、2番手篠崎選手、さらに吉田選手、この3名全てがフライングとなり、これらの選手が絡んでいる舟券はすべて無効となりました。
ちなみにフライングタイムは、峰選手と篠崎選手がコンマ02、吉田選手はコンマ01という本当にほんのわずかなタイムです。
峰選手は、勘としてはフライングだと感じたそうですが、スピードを落とすと外の選手にまくられると感じてスピードを落とせなかったとコメントしています。
峰選手は現在競艇界で実力人気ともにトップの選手、そして他の2選手もトップクラスの選手ということもあり、舟券はこの3選手に集中していました。
返還金額こそ5億1823万9,800円と、これまでの事例と比較すれば少ないですが、返還率は99.5パーセントと桁違いに高い数値です。
運営側にとっては、このレースでの売り上げはほぼゼロに等しい損失といえます。
まとめ
競艇でエンジンといえば、ボートに積んでいるモーターのことを指す場合がほとんどです。
エンジンはボートを前に進める動力部分なので、ボートのパーツの中でも要ともいえる部分です。
競艇のエンジンはヤマト発動機という会社ですべて製造されています。
なるべく同じ性能のものを製造するように心掛けてはいますが、実際にはエンジンごとに微妙に性能差があり、この性能差はレース展開を大きく左右するほどの違いです。
エンジンは選手が好きなものを選べるわけではなく、レース前日に実施される前検に抽選が実施され、抽選で引き当てたエンジンをその節では使い続けることになります。
ただし、渡された状態のものをそのまま使い続ける必要はなく、選手はレース期間中自由にエンジンの調整をすることが可能です。
エンジンはレース結果を大きく左右するということもあり、舟券の予想をする際は出走表のモーター勝率や2連対率を確認して、各選手のエンジンの性能もチェックしておきましょう。