競艇における斡旋とは?仕組みや具体的な決め方を徹底解説!
本記事では競艇の「斡旋」について詳しく解説していきます。
斡旋の知識を得ても競艇の予想にはまったく役には立ちませんが、競艇選手の出走するレースがどのように決まっているかを知ることで、競艇に関する見識がより深まることでしょう。
最後の項目では斡旋に関するちょっとした問題点も提示しています。
「斡旋」という言葉の意味について
まず「斡旋」という言葉の意味について簡単に紹介しましょう。
斡旋という言葉の意味について辞書で調べてみると、「交渉や商売などで、間に入って、両方の者がうまくゆくように取りはからうこと。また、物事を紹介し世話すること」と記載されています。
つまり、買いたい側と売りたい側の間に入って双方の希望が満たされるように間を取り持って交渉を成功させるのが「斡旋」だと思ってもらえれば良いでしょう。
分かりやすい一例が「学生の就職活動」ではないでしょうか。
学生の就職活動では企業側が大学に新入社員を募集していることを伝えます。
そして大学側は学生に対して募集を出している企業を伝え、学生はその募集を見て自分が就職したい企業を決定、大学側のサポートを受けながら履歴書などを記載して企業に就職したい旨を伝え、企業側は自分たちが希望する条件をその学生が満たしていれば採用する、といった流れになります。
この場合は大学が正に企業と学生の間に入り、就職を「斡旋」する役目をしているというわけです。
そのほか、不動産会社の仲介も大家さんとお客さんの間に入って「斡旋」する役目を果たしている立場です。
競艇選手は仕事を「もらう」職業
(引用元:一般財団法人 日本モーターボート競走会)
競艇選手は全国24か所ある競艇場に赴いてレースに出場していますが、選手は自分の好き勝手に出場したい競艇場に行ってレースに出ているわけではありません。
競艇選手は競艇場側から「今度開催されるレースに出てほしい」と依頼されて初めてレースに出走することができます。
つまり、競艇選手は仕事を「もらう」職業なのです。
競艇のレースのあっせんは「日本モーターボート競争会あっせん課」という部署が取り持っており、ここが全24会場のレースにどの選手を出走させるかを決めています。
競艇のレースは1日軽く100レース以上実施されているので、最底辺の選手でもまったく斡旋がないということはありませんが、良い走りをすればほかの競艇場からも注目されて斡旋回数は増える可能性は十分あります。
レースでよい走りを沢山することが、競艇選手が競艇場に対してできる唯一の営業活動といえるでしょう。
「日本モーターボート競争会あっせん課」が競艇場側と選手側の間に入って斡旋役となり、競艇のレースに出場する選手が決められるというわけです。
選手の斡旋についてより詳しく知りたい人は、上記のリンク先を見れば斡旋についての規程がすべて記載されています。
「第6条」のレース斡旋の優先順位などはなかなか興味深い内容になっているのではないでしょうか。
レースのあっせんはグレードが高ければ高いほど優先順位が高いというのは何となくわかるかもしれませんが、実は同一グレードレースでも優先順位が決められていて、例えばSGレースの優先順位は以下のようになっています。
2.全日本選手権競走(ボートレースダービー)
3.笹川賞競走(ボートレースオールスター)
4.モーターボート記念競走(ボートレースメモリアル)
5.賞金王決定戦競走(グランプリ)
6.グランドチャンピオン決定戦競走(グランドチャンピオン)
7.オーシャンカップ競走
8.チャレンジカップ競走
獲得賞金が最も高額である「フランプリ」が最も優先順位が高いように思えますが、実は優先順位では5番目になっているというのを見て驚いた人も多いのではないでしょうか。
とはいえ、SGレースが同一日に実施されることは無いので、この順位付けが適用されることはほぼないでしょう。
級別ごとに月に出走できるレース数は決まっている
選手からすると、身体を壊さない範囲で沢山斡旋をもらって沢山レースに出たい!と思うのが本音でしょう。
競艇選手には給料がないので、レースに出走した時の手当てや賞金が収入の大部分です。
沢山レースに出れば当然その分収入を得るチャンスももらえて年収もアップするため、斡旋はたくさんあるに越したことはないのですが、実は級別ごとに出走できるレースの数は決まっています。
A級選手は月に約3節レースに出走できますが、B1級選手は月に約2節、B2級選手は月に1節しか出走できません。
競艇選手は級別が上がると一気に収入がアップしますが、その最大の理由は出走するレースの数が飛躍的に増加するからだといえるでしょう。
「斡旋依頼書」を提出することで初めて斡旋してもらうことができる
競艇選手の斡旋に関しては前述した通り、「日本モーターボート競争会あっせん課」が登録されている約1,600名の選手全員の斡旋を実施しています。
各競艇選手は「日本モーターボート競争会あっせん課」に対して、前年の10月末までに「斡旋依頼書」を提出します。
斡旋依頼書を提出することで、「レースに出場したい」という意思表示になり、この書類を受け取って、「日本モーターボート競争会あっせん課」が各選手の斡旋を決定します。
逆に言えば「斡旋依頼書」を提出しなければ競艇選手はレースの斡旋をしてもらえません。
流石に今まで斡旋依頼書を提出し忘れたというトラブルは発生していませんが、出し忘れてしまうと競艇選手は1年間一切仕事がなくなってしまうことになります。
斡旋依頼書を出したら競艇選手は各競艇場からレースの出場依頼が来るまでひたすら待つことになります。
自ら競艇場やあっせん課に赴いて出場をアピールするといった事は一切できません。
ちなみに斡旋が決まった際は出場が決まったレースの1か月ほど前に「FAX」を使って斡旋通知が届くそうです。
メール全盛のご時世にFAXが使われていることは驚きですが、メールよりも文書の方が確実に選手に斡旋が決まったことを知らせることができるからでしょう。
斡旋の具体的な仕組みや決め方について
ここまで斡旋についての大まかな概要を解説しましたが、ここからは具体的にどのような流れで斡旋が決まっていくのかを詳しく解説していきます。
かなり古いものですが(10年以上前)、実際にレースの斡旋を担当している職員さんにインタビューした記事を発見したので、それをもとに具体的な流れを紹介することにします。
現在は多少変わっているとは思いますが、大まかな流れについてはそこまで変化はないと思うので、参考にはなるでしょう。
とにかく「公平性」を最優先に
斡旋を決める際に最も優先しているのは「公平性」です。
公平性というのは、各レースにおける公平性を当然考慮しなければならないでしょう。
A1級選手ばかりが特定の競艇場に固まらないようにしなければならないですし、一部のレーサーだけが休みなくレースに出続けるといった状況にならないようにも気をつけなければなりません。
施行者から「レーサーの希望人数」が記載された書類が送られる
あっせん課には施行者側からレースの開催日程とレーサーの希望人数が記載された書類が送られます。
6日間日程のレースを開催する際に必要とされる人数は52名必要だといわれているので、あっせん課は1,600名以上の選手のなかからスケジュール的に問題がない選手のうち52名を希望を出した競艇場へと斡旋することになります。
あっせんを希望する書類には斡旋を希望する選手名も記載されていますが、各協定上の希望を100パーセント聞いていると公平な斡旋ができないので、だいたい施行側の希望が通るのは全体の約30パーセント、残りの70パーセントはあっせん課が提示した選手で決まることになります。
もし施行側が提示した選手が被ってしまうようであれば、施行側とあっせん課側で会議をおこない、最終的に斡旋先を決定することになります。
「斡旋課」が公平性を考慮しつつ選手の振り分けを行う
斡旋するレースに対して、斡旋課が具体的に出場する選手を決めていくことになります。
各選手が前走いつ出場したか、現在斡旋停止の状況にはないか、などをチェックして集草に無理がある、又は出走できる状態にない選手は除外していきます。
また斡旋に関してはいくつかの取り決めがあって、例えば「同姓の選手を同じレースに多数斡旋しない」「レースに中止や順延を考慮して斡旋の感覚を適切に開ける」といったものがあり、この規程を守りながら斡旋していかなければなりません。
インタビューによるとあっせん課は課長代理の下に3名の職員がいて、その3名で1,600名いる選手のすべての斡旋を決定していると書かれていました。
たった3名で各選手の出場状況や現状を考慮しながら全レースの斡旋を決めているというのはとても大変な作業ですが、職員はほぼ全選手の名前と登録番号を憶えているというから驚きです。
数名で話し合いをしながら手作業で斡旋を実施
おおまかな斡旋の枠組みが決まったら、細かい部分は話し合いによってどの選手をどのレースに出走させるかを決めていきます。
級別ごとにも注意しなければならない点はあるらしく、例えばA級選手は出走できる日数が多いですし、出走可能なレースが多い分、レース間隔が短くなりすぎないように注意しなければならないですし、B級選手はグレードレースには基本出走できないので、一般戦で全選手が同じ日数出走できるように平等に振り分ける必要があるでしょう。
インタビューによると、1名はA級男子レーサー、1名はB1級男子レーサー、1名はB2級男子レーサーと女子レーサーを担当するといった割り振りになっているそうです。
斡旋作業は1週間を要する
全選手の状況と施行側の希望人数や希望選手をチェックし、全体のバランスと希望を叶えるためのバランスを考えつつ、時には他のメンバーや施行側と会議を重ねながら最終的に斡旋する選手を決めるというのが一連の流れになりますが、書類を受け取ってから最終的に斡旋する選手を決定するまでは1週間を要するといわれています。
斡旋の際に特に注意していること
あっせん課は「24か所ある競艇場の施行者と1,600名余り居る競艇選手全員が納得するような斡旋を提示する」ことを目標としているものの、そのような斡旋を組むことは実質不可能です。
そこでできるだけその理想に近づくように「バランス調整」に関しては特に注意しながら斡旋を決定しています。
バランス調整作業には終わりがありませんが、公平・公正なレースを実施できるよう常に気を緩めずに斡旋作業を実施しています。
お正月とお盆の斡旋が最も気を遣う
斡旋する際は常に神経を使いますが、特に「お正月」と「お盆」は斡旋に最も気を遣うそうです。
まず単純にお正月とお盆は全競艇場でレースが実施されます。
通常1日にレースを開催する競艇場は多くても16会場くらいです。
それが24会場全部になるわけですから、単純計算で作業量は1.5倍くらいになります。
さらにこの時期はレーサー側が地元での出走を希望していますし、施行側も当然地元の人気選手を斡旋したいと希望を出してきます。
しかしあっせん側はそのような希望を全部聞くわけにはいきません。
とはいえある程度施行側や選手側の希望を受け入れなければならないでしょう。
公平なレースと施行側やレーサー側の希望を満たすこと、この両者のバランスを取るのが大変に難しいため、お正月とお盆のレースの斡旋を決める際は普段以上に時間をかけています。
手作業で斡旋をしている理由
コンピューターに選手全員のデータを記憶させ、自動的に割り振ったほうが時間もかからなくて楽なのではないかと多くの人が思うことでしょう。
もちろんそういったソフトはすでに開発されており、実際に活用されてはいるのですが、コンピューターによって組まれた斡旋には選手同士のこれまでの組み合わせや施行側あるいはレーサー側の意図を汲んだものとはなっていません。
したがって最終的な調整は結局手作業に頼らざるを得なくなり、今でも手作業が必要となる部分は非常に多いです。
近年、女子選手の斡旋が非常にハードになっている
(引用元:youtube)
2021年、ある選手の斡旋が大きな話題となりました。
その選手は平高奈菜選手です。
平高選手について簡単に紹介すると、2020年にクイーンズクライマックスを制してG1レース初制覇、その年の賞金女王にも輝きました。
更に2022年には通算1,000勝を達成し、ボートレースオールスターでは女性選手として市場4人目の優勝決定戦出場を決めるなど、トップクラスの女性選手として活躍し続けています。
そんな平高選手の2021年3月末からのレーススケジュールがあまりにもハード過ぎるとの声が上がったのです。
その時のレーススケジュールは以下になります。
・4月1日~4月6日:福岡ヴィーナスシリーズ
・4月8日~4月13日:浜名湖オールレディース
・4月15日~4月20日:多摩川オールレディース
・4月22日~4月27日:常滑オールレディース
・5月1日~5月6日:尼崎一般戦
細かく見ていくと、北丘ボートレースクラシックから福岡ヴィーナスシリーズまでは2日間の休みがあるものの、福岡ヴィーナスシリーズから浜名湖オールレディースまでは4月7日には浜名湖競艇場に前検入りしなければならないため休みなしです。
しかも福岡県から浜名湖競艇場がある静岡県まで移動する必要があります。
そして浜名湖オールレディースから多摩川オールレディースの間も同じく休みがありません。
更に多摩川オールれでいーすから常滑オールレディースまでも休みなしです。
移動も福岡県から静岡県ほどではないものの、静岡から東京へ移動し、そこから愛知県まで移動と、決して近場の競艇場を転々としているわけではありません。
常滑競艇場から尼崎一般戦までの間でやっと休みがありますが、休みは2日間だけで、4月30日までには愛知県から兵庫県への移動が必要になります。
つまり、4月1日から4月27日まで、4月はほぼまるまる1か月休みが無かったも同然なのです。
先ほど斡旋を決める際は「一部の選手が休みなく出走するといった偏りが発生しないように意識して斡旋を決定している」と紹介しましたが、残念ながら今回のレースではその約束は破られてしまっています。
幸いなことに平高選手がこの斡旋によって大きく体調を崩すといったことはありませんでしたが、一般企業であれば完全にブラック企業クラスの連続勤務です。
しかも、福岡から多摩川までの3連戦を経験したのは平高選手だけではなく、他に3名の選手が同じようなレーススケジュールとなっていました。
女子戦は売り上げが好調であるため、運営側のたくさん斡旋したいという気持ちは分からなくはないですが、やはり選手あってこその競艇なので選手の体調などを最優先に考えて斡旋スケジュールは組んでほしいところです。
まとめ
ここまで競艇選手の斡旋について解説しました。
競艇選手は自分自身で希望のレースへの出走する権利を獲得することができません。
前年10月に競艇選手は「日本モーターボート競争会あっせん課」に対して「斡旋依頼書」を提出することでレースを斡旋してもらって初めてレースに出走できます。
あっせん課には競艇場の施行者からレース日程と出走人数、そして斡旋希望選手が記載された依頼書が送られます。
あっせん課ではその依頼書を元にして全1,600名の選手のうち、日程的に問題がなく、斡旋停止処分も受けていない選手を選定してできるだけ競艇場や選手側の希望も加味しながら「公平・公正・バランス」に注意して最終的な斡旋を決定します。
斡旋作業はコンピューターも導入しているものの、組み合わせや施行側の希望等はコンピューターが決めた施行では加味されないため、最終的な細かい調整は今でも手作業に頼る部分が大きいです。
特にお正月とお盆は全競艇場でレースが実施される上に、施行側も選手も地元のレースに出走したいと希望を出してくるので調整に非常に時間がかかるため、特に神経を使って斡旋を決定しています。
斡旋に関しては、以前女子選手数名がまるまる1か月ほぼ休みが無い状態だったことが大きな話題になりました。
女子戦は人気があるのでつい施行側も多く出走させたいという気持ちになるのは分かりますが、選手の健康を最優先に斡旋日程を決めてほしいところです。