2022年2件目の死亡事故が…中田達也選手の死亡事故について

2022年2件目の死亡事故が…中田達也選手の死亡事故について

競艇は「水上の格闘技」と呼ばれることもあるほど激しい競技です。
スポーツで死亡事故など決して起こってはならない事なのですが、悲しいことに競艇では過去複数回の死亡事故が起こっています。

2022年11月、また多くの競艇ファンに衝撃を与えるような悲惨な事故が起こってしまいました。
本記事では今回発生した事故について詳しく解説していきます。

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競艇は命を失う危険と常に戦っている

競艇は命を失う危険と常に戦っている

前述した通り、競艇は「水上の格闘技」と呼ばれるほど激しく、そして危険な競技です。
競艇だけではなく競馬、競輪、オートレースと、いわゆる「公営競技」と呼ばれている4つの競技はすべて危険な競技であることには変わりありません。

この4つの競技はとにかくスピードを競う競技であるため、万が一バランスを崩してしまった時に受ける衝撃は私たちの想像をはるかに超えたものとなります。

また、オートレースではプロテクターなどを装着してレースしますが、残りの3つはほぼ生身でレースをするというのも危険な競技であるという理由のひとつとなるでしょう。

そして、競艇独自の危険要素というのも実に沢山あります。
本項目では沢山ある危険要素のうち、特に事故につながりやすいものを3つ紹介します。

時速60キロで水面に叩きつけられた時の衝撃

競馬、競輪、オートレースは道路又は芝の上など、「地上」でおこなわれる競技です。
路面は固いので、バランスを崩して地面に叩きつけられたら非常に痛いですし、打ち所が悪ければ打撲や骨折をしてしまうというのは素人でも分かることでしょう。

いっぽう競艇は水面の上で行われます。
「水の上だったら叩きつけられてもそんなに痛くないのでは?」と思ってしまいがちですが、この認識は大きな間違いです。

プールで飛び込みをした際、「腹打ち」してしまって痛い思いをした経験がある人は多いのではないでしょうか。
競艇のレース中に受ける衝撃はそれとは比べ物にならないほど大きなものです。

競艇のレースでは時速60キロほどの速度で常に走っています。
この速度でバランスを崩してしまい、水面に叩きつけられた時の衝撃はコンクリートの地面に同じ速度で叩きつけられた時と全く変わりありません。

しばらく動けないほどの痛みでしょうし、頭を打ち付けてしまった場合は高い確率で気絶してしまうことになるでしょう。

ボートそのものが凶器となる

バランスを崩し、水面に叩きつけられただけではそうそう大事故とはなりません。
しかし転覆してしまった選手に、他の選手が操縦している「ボート」という凶器が襲い掛かってきます。

遥か遠くで転覆してしまったのであれば、プロ選手ですからいともたやすく回避しますし、回避が無理ならば減速して避けることができるでしょう。
ところが自分の目前で他の艇と接触して転覆してしまうと、流石に避けることはできません。

ボート自体も時速60キロの速度でぶつかれば十分殺傷能力がありますが、何より恐ろしいのはボート後方についているプロペラです。
このプロペラは1分間に数千回転という凄まじい速さで回転しています。

こんなものが人体に触れてしまったら、手足などは簡単に切断されてしまうでしょうし、腹部や頭部などに接触してしまったら文字通りひとたまりもありません。

競艇で発生している死亡事故の大部分が転覆後、後続のボートと選手が接触してしまったことによるものです。

バランスを崩しやすい水面で争われる

そもそも、競艇のレースが行われている場所が「水面」という非常に特殊な場所となっています。
競馬や競輪、オートレースは地上でおこなわれるスポーツですから、予想外の接触またはカーブを曲がり損ねるといったケースが無ければバランスを崩すようなことはないでしょう。

しかし競艇では元々不安定な「水面」という場所でレースが開催されます。
そのような不安定な場所で時速60キロのスピードを出すわけですから、ちょっとしたハンドル操作のミスなどでも簡単にバランスを崩し、転覆してしまいます。

競艇はほかの公営競技よりも各段にバランスを崩しやすい条件の中で勝負している競技である、ということは知っておいてほしいです。

2022年は既に死亡事故が発生している

2022年は既に死亡事故が発生している

もちろん運営側も競艇が危険な競技である事は私たち以上に分かっているので、これまで事故を少しでも減らそうとさまざまな対策を講じてきていますが、残念ながら死亡事故がゼロになるという事はなく、数年に一回のペースで死亡事故が発生しています。

2022年は既に死亡事故が発生しており、大きなニュースとなりました。
事故が発生したのは2022年1月12日、競艇の2022年シーズンが始まったばかりの事です。

多摩川競艇場での第6レースに小林晋選手が出走、2周目のバックストレッチあたりで他の艇と接触してしまい転覆、さらに後続の艇が小林選手を避けきれずに接触、これが致命傷となってしまい、搬送先の病院で亡くなってしまいました。

この事故は競艇選手のみならず、競艇関係者、そして何より競艇ファンに大きな衝撃を与え、競艇を愛する人全員が「もう2度とこのような痛ましい事故が起こらないで欲しい」と願っていた事でしょう。

小林晋選手の死亡事故について ボートレーサー小林晋選手の死亡事故の原因や接触相手を調査

中田達也選手について

中田達也選手(引用元:ボートナビ報知)

中田達也選手は、やまと競艇学校第113期の卒業生で、福岡支部に所属していました。
卒業記念レースで優勝するなど、学生時代から同期の中ではトップクラスの実力で、2013年にデビューして事故を起こすまでに優勝7回という好成績をあげていたほか、2021年には周年記念競走とヤングダービーの優勝戦にも進出しています。

それまでA2級だったのですが、2023年度からはA1級に昇格する事が決まっていた矢先の事故でした。
また、中田達也選手は結婚しており、小さなお子さんが2人いらっしゃるとの事で、正にこれからトップレーサーへと飛躍しようという所で悲劇が起こってしまったと言えるでしょう。

死亡事故の経緯について

死亡事故の経緯について

事故が発生したのは2022年11月6日、宮島競艇場で開催された第10レースです。
中田選手は1号艇からの出走でした。

3周目のバックストレッチあたりを走行中に他の艇と接触、ボートは大きく横転し、中田選手は落水してしまいます。

そこへ不運にも後続の艇がほぼ全速力で突っ込み中田選手に接触、すぐに病院へ搬送されましたが、懸命の治療の甲斐もなく亡くなってしまいました。

事故の動画があったので確認しましたが、最初に他の艇と接触する前に中田選手の艇はかなりバランスを崩してしまっているという印象を受けました。
もしかするとまともに操縦ができず、そこへ他の艇が接触し、落水してしまったのかもしれません。

原因などははっきりとはしていませんが、ただひとつ、中田選手はもちろん接触してしまった2名の選手も断じて故意に事故を起こそうとしたわけではない、という事は断言できます。

それはこのレースを観ていたファンも皆同意見で、とにかく事故を起こしてしまった2名の選手のメンタルケアをしっかりして欲しいという声が多くあがっています。

宮島競艇場は11日まですべてのレースを中止することを発表

宮島競艇場は11日まですべてのレースを中止することを発表

宮島競艇場にとっては1954年に開設して以来初の死亡事故であり、運営側も非常にショックが大きかった事でしょう。

この事故を受けて、宮島競艇場は開催予定だったレースのうち、事故翌日の7日から11日までのレースを全て中止する事を発表しました。

一緒に切磋琢磨している戦友が亡くなった競艇場で今までと同じようにレースをするというのは無理な話ですし、全く集中出来ない状態でレースをしても公平さを欠いてしまいます。

何よりそのような状態でレースを行う事自体が危険極まりない行為ですから、レースを中止するというのは妥当な判断と言えるでしょう。

競艇の死亡事故を防ぐことはできないのか?

競艇の死亡事故を防ぐことはできないのか?

1年に2件もの死亡事故が発生してしまったことについて、ファンからは「もっと安全に配慮したルールを設定すべきでは?」といった声が多く寄せられています。

しかし結論から言えば、今多くのファンが感じている競艇というスポーツの魅力を維持しつつ死亡事故をゼロにするようなルールを設定するのは不可能に近いでしょう。

競艇最大の醍醐味は「スピード感」と「迫力」で、時速60キロでターンを周回し、他の艇と時にはぶつかり合いながら1着を目指すというレースに魅力を感じている人がほとんどです。

「ターン時は減速して追い抜き禁止」「走行中にコースを変更することは中止」恐らくこのふたつのルールを制定すれば、死亡事故はゼロにはならないまでも、かなり少なくなるでしょう。

しかし、ターンでスピードが落ちて追い抜きもしない、走行中全艇がスタート時のコースから動かない競艇に魅力を感じるでしょうか。
安全面は確保できますが、競技としての魅力は完全に失われてしまうでしょう。

競艇という競技の魅力を最大限に生かしながら運営を続ける以上は、このような痛ましい事故がつきまとってしまうというのが現状です。

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まとめ

本記事では2022年11月6日に発生した痛ましい死亡事故について取り上げました。
近年有名芸能人を積極的にコマーシャルに起用することで競艇のイメージは大きく変わり、「ライトなスポーツ」というイメージを持っている人もなかにはいるかもしれません。

しかし競技としての競艇の本質は昔と何ら変わっておらず、水上という不安定な場所で時速60キロ以上で走行し、ターンの際には他の艇と接触しながら自分のポジションをキープしなければ勝つことができない過酷な競技です。

競馬や競輪、オートレース以上に危険な要素がたくさんあり、数年に1件のペースで死亡事故が発生してしまっています。
2022年は1月に既に死亡事故が発生していたのですが、今回2件目の死亡事故が発生してしまいました。

亡くなってしまった中田達也選手は若手選手のなかでも特に将来を期待されていた選手の一人で、2023年度には初のA1級昇格を決めていたほど、今年は絶好調でした。

そんな中田選手が不慮の事故によって亡くなってしまったことは競艇選手や関係者はもちろんの事、競艇ファンに大きな衝撃を与え、SNS上では追悼の声が多く上がっていたと同時に、事故を起こしてしまった2名の選手の心のケアをしっかりして欲しいという声も多く寄せられています。

事故防止のために非常に厳しいルールが定められていますし、競艇選手の誰一人として故意に事故を起こそうと考えている人は居ません。

今回の事故は本当に不運が重なってしまったことによるものなのです。
1年に2件の死亡事故が発生してしまったことにより、抜本的なルール改正を求める声も挙がってはいますが、現在の競艇の魅力を残しながらルールを大幅に変えるというのは正直不可能に近いでしょう。