競艇選手は強制的に引退させられることも!そのルールや条件とは?
競艇選手の年収は平均で1,600万円とも言われており、最下級のB2級選手でさえコンスタントにレースに出走していれば十分貯金できるほどの収入を得ることができます。
また、競艇選手はスポーツ選手としては競技人生がかなり長く、50歳を過ぎても現役バリバリでレースに出場している選手も多くいます。
こういった事実を知ると「自分も競艇選手になってお金持ちになりたかった」「競艇選手を目指そうかな」と考える競艇ファンもなかにはいるかもしれませんが、現実はそこまで甘くはありません。
まず、競艇選手になるためには養成学校で軍隊のような訓練の日々を過ごし、試験に合格する必要があります。
そして、晴れてプロの競艇選手になったとしても更に厳しい現実が待ち構えています。
競艇選手はただレースに出れば良い、という職業ではありません。
ある程度の勝ち星を重ねなければ、場合によっては引退を勧告されることもあります。
競艇は半期ごとに成績を審査される
競艇選手がA1からB2までの級別にあけられていることは競艇の舟券を買ったことがある人ならば誰でも知っていることでしょう。
この級別は選手の強さを一目で分かるように表したものなのですが、一度昇給すればずっとそのまま、というわけではありません。
競艇では1年を「前期」と「後期」に分けており、半期ごとに各選手の級別は更新されます。
それぞれの級にはその級に昇給する、または維持させるための条件というものが決められており、その条件以上の成績をあげれば昇給しますが、逆に維持できなければ降級となります。
それぞれの級に設けられているラインというのは覚えておいて損はありません。
もし自分が舟券を買おうとしているレースに、昇給や降級のラインギリギリの成績をあげている選手が出た場合、何とか成績を上げようとするので、思い切ったレースをしてくれることでしょう。
逆に無理をしなければ昇給、または維持出来ることが確定している選手が一般戦の予選に出走した場合、無理をして反則や事故などを起こさないようにしたいという心理が働き、積極的なレースをしない可能性が高いです。
前期と後期それぞれの期間について
「前期」と「後期」はそれぞれ期間がはっきりと決められています。
前期は1月1日から6月30日まで、後期は7月1日から12月31日までで、この期間内の成績によって昇給するか降級するか、または維持となるかが決められます。
どういった項目を審査されるのか
競艇選手の級別は「勝率」「連対率」「事故率」「出走回数」の主に4項目の成績で級別が決められる仕組みになっています。
「勝率」「連帯率」はその選手がどれくらい上位、つまり舟券に絡んでいるかを表した数字で、事故率はフライングなど反則の回数によって率が決められ、出走階数は単純に半期ごとにどれくらい出走したかを示したものです。
もっとも上位ランクであるA1級は、2連対率30パーセント以上、3連対率40パーセント以上で勝率が上位20パーセントに入っていなければならず、更に事故率0.70以下、半期間で90レース以上に出走しなければならないという非常に厳しい条件が設けられています。
A1級のレーサーは間違いなくその時の競艇選手を代表する人たちだと思っておいて間違いありません。
ちなみに勝率というのは、単純に1着になった回数を出走回数で割ったものではありません。
競艇では各レースごとに着順に応じて点数が設けられています。
一般戦の場合、1位は10点、2位は8点と下位の着順になるほど得点は下がっていきます。
また、G3やG2などグレードレースで上位に入着した場合はさらに得点が加算されるので、グレード上位のレースにたくさん勝っている選手はおのずと獲得点数も多くなり、勝率も高くなっていくという仕組みになっています。
ちなみに事故率が一定を超えた場合はそのほかの成績がどれだけ優秀だったとしても、最下級であるB2級まで一気に降格します。
競艇選手が引退する理由は大きくふたつ
競艇選手はほかのスポーツ選手とは違い、40代や50代になっても現役で活躍し続ける選手がたくさんいますが、一生続けられるものではなく、いずれ引退を決断することになります。
競艇選手が引退をすることになる理由は大きく分けてふたつです。
自主引退
ひとつは「自主引退」つまり自らの意思で引退を決断する、というもので、自主引退をする主な理由としてはやはり「年齢」を理由とする選手が圧倒的に多くなっています。
競艇はコンマ1秒を争う世界なので、一瞬の判断の遅れによって勝てるレースも勝てなくなってしまいます。
ベテラン選手は経験を積んでいるので、勝負どころを察知する能力に優れていることには間違いありませんが、筋肉など肉体面ではどうしても衰えが出てきて、若い時のように思うようにボートを操舵できなくなります。
このように、肉体面での衰えを感じて勝てるはずのレースに勝てなくなるとだんだんと成績が下がっていき、引退を考えるようになる選手が多いです。
また、競艇選手は3年に1回選手登録を更新し、この際に視力検査を受けることになりますが、裸眼で0.5以上の視力がないと選手として更新できません。
年齢とともに視力が衰えていくのはどうしようもないので、この登録更新によって引退を余儀なくされる選手も過去には存在します。
さらに競艇選手は勝ち続けなければ上に上がれないので、メンタル面においてもダメージが大きい職業ですし、ときには命を失うほどの怪我を負う危険な競技なので、メンタル面や怪我によっても引退を決断する選手も一部存在します。
また、女性レーサーは結婚や出産を期に選手を引退する人も多いです。
引退勧告を受けての引退
もうひとつの理由が、「引退勧告を受けての引退」です。
引退勧告とは、組織側が選手に対して告げるものですが、ここで勘違いしないで欲しいのは、組織側が選手に伝えるのはあくまでも「勧告」であって、「指示」ではありません。
組織側が選手を強制的に引退させることは認められておらず、勧告なので、選手側に引退することを勧めるのみではありますが、引退勧告の条件が選手にとって復帰が絶望的ともいってよいほどの条件となっているので、引退勧告を受けた選手はその勧告通り引退を決断するケースが圧倒的に多くなっています。
引退勧告を受けてしまう条件とは?
競艇選手の引退間億基準については、「選手出場あっせん保留基準第8号」(通称8項)に詳しく記載されています。
具体的な条件とは以下の4つです。
- 「4期通算で勝率が3.8未満の場合」
- 「33年経過後4期通算勝率4.8未満の場合」
- 「4期通算事故率0.7以上の場合」
- 「4期通算出走回数60回未満の場合」
各条件について詳しく解説
選手が組織側から強制的に引退を勧告される条件について、ひとつひとつ詳しく見ていく事にしましょう。
各条件を見ることで、競艇選手という職業がいかに厳しいものであるかがわかるのではないでしょうか。
4期通算で勝率が3.8未満の場合
最初は「4期通算で勝率が3.8未満だった場合」という条件です。
競艇では1期は半年に当たるので、4期通算というのは2年通算ということになります。
つまり2年間の通算勝率が3.8を下回る場合、組織側から引退を勧告されるというわけです。
勝率は総合獲得千数を出走数で割れば求めることができます。
一般戦では1位10点、2位8点、3位6点、4位4点、5位2点、6位1点です。
つまり一般戦で4着や5着をキープしつつ、たまに3着に入賞すればこの条件はクリアできるということになります。
そう考えるとこの条件に関してはそこまで厳しくはないと言えるのかもしれません。
ちなみに、デビューしてから3年間はこのルールから除外されます。
そして、そこから4期、つまり2年間の成績が出なければ8項のルールは適用できないため、少なくともデビューしてから5年間は8項によって引退勧告を受けることはありません。
33年経過後4期通算勝率4.8未満の場合
デビューして33年が経過すると、引退勧告の条件がさらに厳しいものとなります。
4期通算で4.8以上キープするためには、少なくとも一般戦で4位ないし3位に常に入っておかなければ達成は難しいです。
ベテラン選手ともなればボートの操舵技術はかなりのものですが、逆に体力や瞬発力はどうしても低下してしまうため、思うような成績をあげれない事も多いです。
競艇選手は50代を超えると引退を考え始める選手が多いのですが、この引退勧告のルールは引退を決断するひとつの要素となっていることは間違いないでしょう。
4期通算事故率0.7以上の場合
競艇における事故として具体的にどのようなものがあるのかというと、まずは「フライング」があります。
競艇は止まった状態でスタートするのではなく、走行中にスタートラインを超えた時点でスタートとなるわけですがこのスタートラインに時計より早く入ってしまったりするとフライングとなり、失格扱いです。
逆に出遅れも事故と見なされますし、ほかの選手の走行を妨害するような危険な走行をしたときも事故として扱われます。
競艇ではそれぞれの事故に「事故点」というものが設けられていて、1期の通算事故点を出走回数で割ったものが「事故率」となります。
この事故率が1期中に0.7を上回った場合、どんなランクの選手でも一気にb2級へ降級となります。
そして、4期通算の事故率が0.7を超えていると引退勧告を受けます。
どれだけ優れた成績を上げている選手でも頻繁に反則をするようであれば、いつ大事故を犯すか分からないですし、レース前に反則をした場合は舟券代が全額返還となるので、運営にも悪影響を及ぼします。
したがって反則行為に関しては厳しいペナルティが設けられているのです。
4期通算出走回数60回未満の場合
これまでの引退勧告の条件を見ると「4期通算」「出走回数」というのが大きなくくりになっていることが分かります。
では早々に勝率の条件を満たし、後はずっと出走しないというのを4期続ければ引退勧告から逃れられるのではないか、と考えるかもしれませんが、実際はそう甘くはありません。
出走回数についてもしっかりと8項に定められており、4期通算の出走回数が60回に達していない場合も引退勧告を受けることになります。
実はなかなか好成績を上げることができない選手は、勝率と同じくらいこの出走回数においても常に頭の中に意識しながらレースに臨んでいます。
競艇は基本的に成績が良い選手であればあるほどレースに斡旋されます。
成績が良い選手というのは買ってくれる可能性が高い選手、つまり多くの競艇ファンが舟券を買うということになるので、さまざまな競艇場が自分のところにその選手を呼びたいと考えるようになります。
いっぽうあまり成績が良くない選手は呼んでも売り上げに貢献してくれないので、なかなか声がかかりません。
すると、おのずと出走回数は少なくなってしまいます。
万が一反則を犯してしまうと、一定期間出走停止となるので出走回数は更に限られてしまいます。
競艇というのは、成績が悪ければ悪いほど厳しい世界だということが分かります。
競艇選手の強制引退制度が存在する理由
競艇選手が引退勧告を受ける条件は主に先に紹介した4つですが、実はもうひとつ条件があります。
「4期通算勝率で1601位以下の選手」も引退勧告を受けます。
競艇選手は現在全部で約1600名ほど在籍しているのですが、その中で最下位に近い成績の選手はほかの条件をクリアしていたとしても引退勧告の対象になるというわけです。
しかし実際はそこまで下位になると、たいてい4つのルールどれかに引っかかっているので、あまりこの条件に関しては気にする必要もないでしょう。
引退勧告というのは、選手として現役を続けたいという選手にとってはとても厳しい現実です。
しかし競艇では毎年新人選手が誕生しています。
ベテラン選手のなかには自ら引退を決断する選手もいますが、そういった選手がずっと出なかった場合、競艇選手の数は増える一方でゆくゆくは「飽和状態」となります。
そういった状況にならないようにするために、成績が振るわない選手に対しては引退勧告をし、競艇界全体の活性化を常に図っているのです。
まとめ
競艇選手の年収は確かに一般会社員と比べるとずっと多いです。
しかし高い給料だからというだけで続けられるほど甘い世界ではありません。
競艇は完全実力主義であり、レースに勝ち続けられなければ階級はどんどん下がっていき、人気があまりない選手は競艇場から斡旋の依頼を受けることも少なくなっていきます。
そして競艇選手には引退勧告の制度があり、4期通算で勝率、事故率出走回数を一定数満たしていない選手は例外なく引退勧告の対象となります。
引退勧告はあくまでも勧告であり強制ではありませんが、引退勧告を受けた選手はそのほとんどが引退を決断することが多いです。