競艇の賞典除外とは?発生する条件と帰郷との違いを解説
競艇の舟券を購入する際には、事前に公表される出走表などをチェックしてどの選手が3着以内に入ってくるかを予想します。
その出走表に記載されている情報のなかにごく稀ではありますが、「賞典除外」という言葉が書かれていることがあります。
競艇初心者には馴染みの薄い言葉かもしれませんが、賞典除外の選手がいる場合は予想を大幅に変更しなければいけないこともあるほど重要な情報です。
本記事では、競艇における賞典除外の意味と発生する条件について解説します。
賞典除外とは?
賞典除外を解説する前に賞典について解説しておきましょう。
賞典とは、簡単にいえば予選以外のレースのこと。
つまり優勝戦、準優勝戦、そして特別選抜戦のことを意味します。
賞典レースは出場できる選手が限られているということもあって、一般戦よりも賞金が高く設定されていますし、一般戦では4着以下には賞金が支払われないのに対して、賞典レースでは最下位でも賞金が発生します。
賞典除外とは、なんらかの要因によってこの賞典レースに出場できない状態であることを意味しています。
賞典除外によるデメリットとは?
賞典除外は、選手の立場からいえばとても痛い通告です。
選手が賞典除外によって受けるデメリットはとても大きく、場合によっては選手自身の級別(ランク)などにも影響することがあります。
本記事では賞典除外によるデメリットを解説します。
獲得賞金が少なくなってしまう
賞典除外による最大のデメリットは、やはり「賞金を獲得する機会が少なくなる」ということです。
特に優勝戦の獲得賞金は一般戦と比べると数倍の差があるので、選手にとってはかなり痛いペナルティであることはいうまでもありません。
出場できるレースが限られてくる
競艇の上位グレードのレースの中には、獲得賞金が出場条件となっているものもあります。
賞典除外になって、獲得する賞金が少なくなってしまうと、当然ながらそういった条件のレースに出場することがとても難しくなります。
たとえば競艇における最高峰のレースである、「ボートレースグランプリ」の出場条件はその年の獲得賞金ランキング上位18名以内となっています。
例外はあるものの、グランプリを制した選手はそのままその年の賞金王になるケースがとても多いので、賞典除外になってしまうと、賞金王への道がとても険しいものになってしまう、ともいえるでしょう。
さらに選手はひとりひとり級別(ランク)が設定されているのですが、ランクの条件のなかに最低出走回数というものがあります。
賞典除外によって出場するレースが減ってしまい、設定されている出走回数を満たない場合は、ランクの上がり下がりにも大きく影響してくるのです。
賞典除外が発生する条件
賞典除外は、レース中にそのレースの進行の妨げになったり、ほかの選手に悪影響を与えていると判断された場合に言い渡されます。
具体的には以下のような状況になった場合に、賞典除外が選手に言い渡されるようになっています。
フライングや出遅れ
賞典除外になる条件のひとつめが「スタート事故」です。
スタート事故とは、「フライング」と「出遅れ」のことを意味しています。
競艇は競馬のようにスタートラインに一直線に並んだ状態からスタートするのではなく、スタート前にすでにボートが動いている状態です。
そして「大時計」とよばれる時計のスタートが「0」になってから1秒以内にスタートしなければいけない、というルールになっています。
大時計が0になるよりも先にスタートラインを通過してしまうと、「フライング」となりますし、スタート指示から1秒を超えた状態でスタートラインを超えると「出遅れ」となります。
フライングや出遅れそのものが賞典除外となるというわけではないのですが、フライングや出遅れを犯してしまうと、「事故点」というものが与えられます。
競艇では予選レースを数回行い、順位に応じて点数が付与されます。
選手は予選レースに数回出走し、合計獲得点数の上位が準優勝戦、決勝戦へと出場できるのですが、事故点が付与されると、獲得点数から事故点を引かなければいけません。
すると得点で上位に上がることができないので、事実上賞典レースへの出場が不可能になる、というわけです。
妨害行為とみなされた時
妨害行為によって、自分の後ろを走っている艇が転覆したり選手が落水してしまった場合は、賞典除外が言い渡されます。
ただし、自分だけが転覆してしまった場合は選手の責任による転覆失格となります。
この場合の減点は5点です。
レースが失格となるので不利であることには変わりありませんが、獲得点数がほかの選手よりも飛びぬけて高ければ賞典レースに出場するチャンスは十分あります。
待機行動中の違反行為
競艇では合図があるまでピットという場所で合図があるのを待ち、ファンファーレが鳴ったと同時に一斉に動き出します。
そこからスタートするまでが「待機行動」と呼ばれている範囲です。
待機行動中は、各選手がコース取りをするための駆け引きをおこなうわけですが、いろいろとルール細かく決められていて、そのルールを破らないように待機行動を取らなければいけません。
もし待機行動違反を1回おこなうと、レースでの特典が減点されてしまい、準決勝や決勝戦といった賞典レースへ出場するためのハードルが高くなります。
その節で待機行動違反を2回犯すと直ちに賞典除外となって賞典レースに出場できません。
待機行動中は審判が見張っており、違反行為にあたるかどうかは審判の判断によって決められます。
不良航法とみなされた時
インコースに無理やり入り込んで前の艇がまともに走行できないような追い抜き方をしたり、後方からわざと激突してスムーズな走行を邪魔するというような、誰が見ても明らかにほかの艇の迷惑となるような走行をすることを「不良航法」と呼びます。
1回目の不良航法では減点7点となって、この時点でも賞典レースに出場することはかなり厳しくなりますが、その節で2回不良航法とみなされると、その時点で賞典除外が言い渡されます。
選手自らが賞典除外を希望することも
ここまではレース中に賞典除外が言い渡されるケースについて説明しましたが、実はそうではなく、選手自らが賞典除外を希望することがあります。
賞典除外になると賞金が高い賞典レースに出場できないですし、単純に出走できるレースが少なくなるとデメリットばかりです。
選手側から賞典レースに出ないことを希望してくるというのは、普通に考えればあり得ないようなことです。
賞典除外の希望は正しくは「出走調整」といい、その節はレースの出場を1回ないし2回にしてほしいという希望を出すことです。
どうしてこのような希望を出すのかというと、勝率を維持したり事故率をこれ以上増やさないようにするというのが大きな目的です。
特に審査期間の終盤になると、その選手の順位などがほぼ決定します。
例えば、すでに来期もA1級を維持できることがすでに決まっている場合で、下手にたくさんレースに出て勝率が下がってしまうとA1に残れない恐れがある場合は、出走調整を希望して出場するレースを減らすということもあります。
即日帰郷との違い
競艇でレースに出れなくなるような重いペナルティとして、賞典除外のほかにもうひとつ「即日帰郷」があります。
賞典除外と即日帰郷は出場できないレースが大きく違います。
賞典除外の場合は賞典レースに出れないというだけで、一般戦には出場することができます。
しかし、即日帰郷は言い渡された瞬間に、その日の残りのレースにも出場することができず、そぐに返らなければいけないので、賞典除外よりもさらに重い罰則といえるでしょう。
参考 競艇の即日帰郷について解説!即日帰郷となる条件とは?賞典除外が選手の心理に与える影響
賞典除外は選手の心理にとても大きな影響を与えます。
まず出走表を見て賞典除外と書かれている選手は、どれだけインコースにいても、どれだけランクが高い選手であっても本命にはしないようにするのが無難です。
賞典除外を言い渡された選手は本気で走ろうとしません。
本気で走って1着を取ったところで準優勝戦や決勝戦には出れない上に、本気で走るということは転覆やスタート事故といったリスクを背負うことにもなるので、デメリットしかありません。
賞典除外になった時点で選手は無難に走行したほうが良いと判断し、スタートも無難なものとなるでしょう。
また、待機行動違反や不良航法を1回してしまっている選手も要注意です。
不良航法や待機行動違反を2回してしまうと、その時点で賞典除外となってしまいます。
そのためどうしてもレース運びが慎重になってしまい、普段通りの大胆な戦法をとることができなくなります。
まとめ
準優勝戦や優勝戦、選抜戦といった予選の成績がよい選手だけが出場できるレースを賞典レースといいます。
競艇における賞典除外とは、賞典レースに出場できなくなることを意味しています。
賞典レースは賞金が高いうえに6艇がすべて賞金を得られるなどメリットが大きいので、賞典除外は選手にとっては大きな痛手といえるでしょう。
賞典除外はスタート事故や妨害行為、待機行動違反、不良航法というようにレースの進行を妨げる行為をした場合に言い渡されるほか、現在の成績を維持したい選手が「出走調整」といって賞典レースに出場しないことを宣言する場合もあります。