競艇の「ツケマイ」という超絶テクニックについて徹底解説

競艇の「ツケマイ」という超絶テクニックについて徹底解説

競艇の動画を見たり、記事を読んでいたりすると、必ず一度は目にするであろう専門用語のひとつに、「ツケマイ」があります。

競艇に長く関わっている人であれば、常識といっても良い言葉のひとつですが、競艇を知ったばかりの人にとっては、「ツケマイ」という単語は聞いたことがあっても、それがどういった事を意味するのかまでは知らないのではないでしょうか。

本記事では競艇初心者の人にも理解してもらえるよう、「ツケマイ」について詳しく解説していきます。


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ツケマイとはどのような戦法?

ツケマイとはどのような戦法?

「ツケマイ」とは競艇で選手が操るテクニックのひとつです。
まずは「ツケマイ」の言葉がどのような意味を持ってつけられたのかを知ることから始めましょう。

「ツケマイ」の「ツケ」は相手の艇にピッタリ「つける」という意味でつけられています。そして後半の「マイ」ですが、競艇では回ることを「まう」という事があります。

選手のレース前やレース後のコメントなどでよく用いられるのですが、例えばモーターのターン性能について「マイ足が良かった」と言ったり、プロペラの回転数についても「回りすぎ」ということが多いですが、選手によっては「マイすぎ」と表現することもあります。

ツケマイとは少し無関係の話になってしまいますが、モーターが回りすぎるというのは実はあまり良い事ではありません。
回転数があまりに早すぎると回線の際に生じた空気の中でプロペラが回転してしまうので、却って推進力が伝わりづらくなるのです。

回転数を多すぎないように調節するのも、選手がモーターを整備する際には重要な要素のひとつとなっています。
少し話がそれましたが、とにかく「マイ」というのは回るという意味で使われるということは覚えておいて損はありません。

マイという言葉を使って用いられる競艇の専門用語としてよく聞くものは、「先マイ」という言葉があります。
ここまで説明した単語の意味になぞらえるのであれば、「先マイ」は「先に回る」という意味だと理解できるのではないでしょうか。

つまり「ツケマイ」というのは、ほかの艇の横にピッタリとつけてターンを回る戦法であると理解しておけばよいでしょう。

もっと具体的にどのような戦法なのかを説明すると、ツケマイとは外側の艇が内側の艇の横にピッタリとつき、そのすぐ横をなぞるようにしてターンを回り、内側の艇を抜き去るというテクニックです。

ツケマイが効果的である理由

ツケマイが効果的である理由

外の艇の横にピッタリとついてターンを回る「ツケマイ」ですが、別の艇のすぐ横を回ることがどうして効果的なのだろうと疑問に感じる人も多いのではないでしょうか。

ツケマイが効果的である理由を説明するには、先にボートがどのような仕組みで前に進んでいるのかを説明するところから始める必要があります。

競艇用のボートだけではなく、水面を走る舟はすべてモーターが生み出す回転によって回る「プロペラ」が作り出す「推進力」で前進します。

推進力によって艇が前に進むと、その後ろには「引き波」と呼ばれる波が必ず発生するのですが、ツケマイで外側を旋回することによって、内側の艇のすぐ横で「引き波」が発生し、引き波の影響によって内側の艇は押さえつけられてしまうのです。

ツケマイをされてしまうと、内側の艇は推進力が奪われてしまい、前に進む能力が一時的に落ちるので外側の艇がより抜きやすくなる、というわけです。

このように文章で説明するのもなかなか難しい「ツケマイ」を実際に繰り出すのは卓越した操縦技術が必要で、自在に操れる選手はとても少ないです。
競艇選手のテクニックとしてはまさに最高峰といえますし、ツケマイが見事に決まると、会場は大いに盛り上がります。

実際に動画を見てみよう

実際に動画を見てみよう

ツケマイは競艇のテクニックでも特に盛り上がるので、動画は複数アップされていますが、初心者の人が見ても「どの艇がツケマイをしているの?」と困惑してしまうことが多いです。

恐らくツケマイを紹介する動画でもっとも分かりやすいのは、「ボートレース」のオフィシャルサイトにある「用語集」に貼り付けられている動画でしょう。

こちらの動画ではツケマイをする艇を分かりやすく表示してくれているので、初心者の人もツケマイがどのようなテクニックかが一目でわかると思います。

参考 ツケマイ | BOAT RACE オフィシャルウェブサイト

ツケマイとよく似た戦法「まくり」

ツケマイとよく似た戦法「まくり」

競艇の決まり手のひとつに「まくり」というものがあります。
まくりは、外側の艇があえて大きく回ることで内側の艇を抑え込み、抜き去るという戦法です。

文章だけで見ると、「まくり」と「ツケマイ」は何が違うのだろうと困惑してしまうかもしれません。
事実、何も知らない人が見れば「まくり」も「ツケマイ」も同じに見えてしまうでしょう。

まくりとツケマイの違いとは?

まくりとツケマイの違いとは?

見た目には同じようなことをしている「まくり」と「ツケマイ」ですが、実際に選手がやっていることというのは、実は大きく異なります。

まくりの場合は単純の内側の選手よりもさらに速い速度で外側からコーナーを周って外側の艇を抜くのに対して、「ツケマイ」の場合は速度は標準で周り、「引き波」を使って内側の艇の速度を殺して外側の艇を抜き去ります。

まくりの場合は速度さえ上げれば良いので、操縦技術に関しては「ツケマイ」ほど高度な技術を要しません。
そのため若手の選手も積極的にまくりを狙いますし、「アウト屋」と呼ばれている外側からのまくりを得意とする選手も一部存在します。

それと比べるとツケマイを狙える選手はごくわずかなので、数多くのレースがおこなわれる競艇でもツケマイを見ることができるシーンというのはそれほど多くありません。
ちなみに、競艇の決まり手は「逃げ」「差し」「まくり」「まくり差し」「抜き」「恵まれ」の6つです。

「ツケマイ」は正式には決まり手ではありません。
実は以前は決まり手に「ツケマイ」があったのですが、ツケマイとまくりの違いは内側の艇にピッタリと寄り添った状態でまくりを決めているかどうかなので、判断基準が難しいです。

そのため現在は「ツケマイ」という言葉は残っているものの、「まくり」と統一化され、ツケマイによって勝ったとしても決まり手は「まくり」となります。

ツケマイが得意な選手

本項目では近年のレースで鮮やかな「ツケマイ」を決めた選手を4名紹介します。
紹介した4名はいずれも卓越した操縦技術を持っており、現在競艇界において上位の成績を上げている人たちばかりです。

山崎智也選手

山崎智也引用元:BOAT RACE オフィシャルウェブサイト

山崎智也選手は近年では2018年8月、丸亀競艇場でのレースで見事にツケマイを決めています。
山崎選手を語るうえで外せないのはそのルックスでしょう。

渋みを加えた今も良いですが、全盛期の20代後半から30代にかけての頃は「イケメン過ぎる競艇選手」として紹介されるほどでした。

実力もSGレースを複数回優勝、G1レースを加えると優勝回数を数えるのが大変なほどです。
しかし近年は競艇選手の職業病のひとつである「腰痛」に苦しみ、苦戦が続いています。

毒島誠選手

毒島 誠引用元:BOAT RACE オフィシャルウェブサイト

毒島誠選手はその名前から「ポイズンキラー」というニックネームをつけられています。
毒島選手の代名詞といえば「全速ターンでのツケマイ」で、ビッグレースでも隙あらば積極的にツケマイを狙えるほど操縦技術に長けた選手として知られています。

近年でも2020年「ボートレースオールスター」にて5号艇でのスタートながら豪快なツケマイを決め、見事優勝を決めました。

ちなみに「ポイズンキラー」という物騒なニックネームから怖そうな人を想像してしまいますが、実際そんなことはなく、トレーニング仲間であるバイクレーサーの「青木宣篤」選手から「総監督やらない?」と言われ、本当にバイクチームの総監督をやっちゃうほどノリの良い選手です。

興津藍選手

興津 藍引用元:BOAT RACE オフィシャルウェブサイト

興津藍選手といえば「ツケマイ」とファンからはすっかり有名になっているほど、興津藍選手はツケマイを巧みに操ることができます。
操縦技術で言えば現役競艇選手のなかでもトップクラスだといえるでしょう。

2018年びわこ競艇場でも華麗にツケマイを決め、オール3連対に絡むという素晴らしい活躍を見せてくれました。
まだSGレースでの優勝経験はありませんが、ツケマイは強力な武器のひとつなので、近い将来SGレースを制する可能性は十分あるでしょう。

大山千広選手

大山千広引用元:BOAT RACE オフィシャルウェブサイト

女性選手にも数少ないですが、ツケマイを操ることができる選手が存在します。
そのなかでも代表格とされているのが「大山千広」選手です。

大山委弘選手はお母さんも競艇選手であり、デビュー前から「競艇界初の母娘競艇選手」として注目を集めていました。
そして初勝利をお母さんと共に出走したレースで決めるというドラマチックなシチュエーションで決めます。

その後も注目に恥じない活躍を見せており、現在女性競艇選手ではトップクラスの成績を上げている選手のひとりです。
近年では2021年12月、戸田競艇場のレースにて3号艇でのスタートから華麗にツケマイを決め、優勝を飾っています。

2021年グランプリは瓜生正義選手がツケマイを決めて優勝!

2021年の最後を飾るレース「グランプリ優勝決定戦」においてもツケマイが勝敗を決めました。
3コースから進入した瓜生正義選手が完璧なツケマイを決めて、1号艇の峰竜太選手が操る艇の勢いを完全に殺してトップに立ち、そのまま優勝しています。

ちなみにこのレースは4艇が転覆し、3連単3連複が不成立となる大波乱となったレースで、返還金額約41億円はワースト1位を更新してしまいました。

しかし、このアクシデントは瓜生選手をはじめ、選手全員が「なんとしても優勝したい」という強い気持ちから生まれたものであり、故意に事故を起こした選手は一人も居ないということだけは理解しておきたいところです。


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まとめ

ツケマイは競艇における操縦テクニックのひとつで、内側の艇のすぐ横に外の艇がピッタリとつき、内側の艇を撫でるような軌道でターンをして抜き去ります。

競艇のボートは推進力で進んでおり、ボートが進んだ後方には必ず「引き波」という波が発生します。
ツケマイは相手の艇のすぐそばで引き波を起こすことで相手の艇の推進力を低下させ、外側から抜くというテクニックであると覚えておけばよいでしょう。

ツケマイは非常に高度な操縦技術を要するテクニックで、自在に操ることができる選手はごく限られています。
ツケマイを自在に操ることができる選手というのは、実力がトップクラスの選手であると認識しておいて間違いありません。