競艇(ボートレース)の売り上げ推移と回復している理由について
競艇は競馬や競輪、オートレースとともに国に認可されている公営ギャンブルのひとつです。
当記事では競艇の売り上げはどれくらいあるのか、またこれまでの推移や売り上げがどのように振り分けられているかについて解説します。
競艇の売り上げの推移について
競艇は、はじまったのが1952年と、競馬よりもかなり遅いです。
1952年といえば、日本が戦後から復興しようとしているときであり、日頃仕事の汗を流している社会人たちの新たな娯楽のひとつとして生まれました。
開催後、競艇は公営ギャンブルのひとつとしてすっかり定着し、順調に売り上げを伸ばしていきました。
2019年時点までで最も売り上げ金額が多かった年は、1991年で、売り上げ高はなんと2兆5千億円を超えています。
理由はいうまでもなく、この時期はいわゆるバブル景気まっただ中であり、国民全員が今では考えられないほど裕福でした。
したがって、1レース当たりの掛け金も多かったことが、この売り上げ高になった大きな理由です。
しかし、バブル崩壊とともに売り上げ高は右肩下がりとなっていき、2010年には8,400億円まで落ち込んでしまいました。
8,400億円というと、全盛期のおおよそ3分の1の売り上げ高ですから、この落ち込み具合はかなり深刻だったといえるでしょう。
公営ギャンブルの中では、もっともメジャーである競馬も1997年のピークを境に売り上げ高を大きく減少させています。
売り上げの落ち込みには、バブル崩壊が大きく影響しているといえます。
ギャンブルはごく一部の人を除いてお金に余裕がある状態でないとチャレンジしませんから、景気に大きく影響される業界だといえるでしょう。
2010年以降売り上げ高は回復している
しかし、競艇の売り上げ高が減少していったのは2010年までで、それ以降は徐々に回復してきているどころか、一度も減少することなく右肩上がりで売上げをアップさせています。
どん底だった2010年の1年後ははやくも9,000億円台まで回復し、2017年には全盛期のおおよそ半分である1兆2,300億円まで売り上げをアップさせています。
そして2019年には1兆5,000億円の大台を突破しました。
特に2017年からの3年間は毎年10パーセント台の伸び率と、驚異的な回復力を見せています。
今後もこの勢いが衰える兆しは見えないため、現在公営ギャンブルの中では最も熱い競技といっても過言ではありません。
競艇の利用者が年々増加傾向に!
また、競艇のデータのなかでひとつ興味深いのが「競艇の利用者」です。
競艇の利用者に限定して推移を見てみると、2,000年頃から1度も減少することはなく、むしろ年々増加傾向にあります。
特にそれまではほぼ毎年1,000万人単位での増加だったのが、2016年ごろからは利用者が3,000万人から4,000万人単位で増加してきています。
利用者の計算というのは単純に舟券を買っている人たちを集計しているというわけではないので、実際にはこの数字よりも低くはなりますが、それでも競艇の舟券を買っている人たちの数は確実に増加しているといってよいでしょう。
ちなみに、利用者の推移と売り上げ高の推移が比例しないのには、若い人たちが競艇をするようになり、ひとり当たりの掛け金が少なくなったことが要因だと考えられています。
なお、競馬の場合は最も低いときと比較すると回復はしてきてはいますが、競艇と比べると回復のスピードは鈍いです。
テレビコマーシャルを積極的に放映
競艇はここ10年ほどで急激に売り上げを回復してきていますが、売り上げをここまで回復させたのにはさまざまな理由があります。
ひとつ目にテレビコマーシャルを積極的に放映したことがあげられます。
テレビを毎日見ている人なら誰でも気づいていることだと思いますが、一時期に比べ競艇のテレビコマーシャルを見る機会は飛躍的に増加しました。
「競艇」という単語を耳にしたり、目にする機会が増えたことは間違いなく売り上げ回復の要因となっているでしょう。
そして競艇のテレビコマーシャルにはその当時旬の芸能人を積極的に起用し、コマーシャル内ではあえて「競艇」という単語は使わず、「ボートレース」という単語を強調しています。
ボートレースは競艇をただ単に英語表記しただけなのですが、この変更によって特に若い人たちがこれまで競艇に抱いていた「中年のおじさんばかりのギャンブル」というイメージを見事に払拭することに繋がりました。
テレビコマーシャルは、競艇という公営ギャンブルを一般の人に認知させるだけではなく、イメージアップさせる効果ももたらしてくれたのです。
競艇場をリニューアル
競馬は今でこそ女性ファンも多くいますが、かつては従来の競艇のように「おじさんのギャンブル」というイメージを持たれていました。
そのイメージが無くなったのは、数々のスターホースが登場したこともありますが、競馬場を女性受けしやすくリニューアルすることにより女性でも気軽に行けるようになったことが強く影響しています。
競艇場はもっとも売り上げがあった1990年代頃はどんよりとしていてダークなイメージでした。
こうしたイメージから、とても女性同士で立ち寄れるような場所ではありませんでした。
しかし現在では、各競艇場がイメージアップのために大幅なリニューアルを遂げ、見違えるほど綺麗になっています。
今では競艇場は若いカップルのデートスポットになっていたり、休日は家族連れが遊びに来ていたりと、単なる競技場の枠を超えた施設になっています。
競艇場のイメージが大きく変わったことも、競技人口の増加や売り上げ回復に大きく貢献しているといっていいでしょう。
インターネット投票ができるようになった
売り上げが回復した要因として、外せないのが「インターネット舟券を購入できるようになった」という点です。
いくつかある要因の中でもこれが最も売り上げ回復に貢献しているといえるでしょう。
これまで競艇の舟券は直接競艇場に行くか、場外売り場に行かなければ購入できませんでした。
競艇場は、一般の人がとても足を踏み入れるような雰囲気ではなかったですし、場外売り場にわざわざ足を運ぶのも一苦労という事もあって、なかなか新規参入が厳しい環境でした。
実は1985年から電話で舟券が購入できるようにはなっていたのですが、認知度はきわめて低かったといえるでしょう。
しかし、現在はインターネットの普及にともない、「テレボート」というサイトで舟券が購入できるようになりました。
インターネット上であれば、いつでもどこでも舟券を購入できますし、自分の地元の競艇場だけではなく、全国の競艇場の舟券が購入できます。
実は競艇は水を使う競技という事もあって、東北地方と北海道には競艇場がひとつもなく、この地域の人たちには特に認知度が低い競技でした。
インターネット投票ができるようになってからは、東北に住んでいる人や北海道在住の人も気軽に舟券が買えるようになり、競技人口を大幅に増やす一つのきっかけになりました。
美人選手やイケメン選手の存在
最近の競艇選手を見てみると、昔と比べルックスの整っている「イケメン選手」や「美人選手」がとても多いです。
特に女性選手の比率に関しては競馬と比べるとダントツに多く、イケメン選手や美人選手の存在が売り上げ回復やイメージアップに大きく貢献しています。
イケメンの選手には若い女性のファンが付きますし、美人選手には男性だけではなく女性のファンもたくさんいて、なかにはまるでアイドルのような存在となっている選手もいます。
女性選手のみのレースもとても人気があり、実際に新鋭レースよりも女子リーグのほうが売り上げは多いです。
ほかのギャンブルの客が競艇に流れてきた
テレビコマーシャルの積極的な放送、競艇場のリニューアル、インターネット投票、イケメン選手や美人選手の投票などは競艇という公営ギャンブルをとても「とっつきやすい」ものにしました。
もともと競艇は6艇で順位を争うため、予想が立てやすい競技です。
そのためパチンコや競馬など、ほかのギャンブルをメインにしていた人たちも競艇に流れてくるようになりました。
特にパチンコ・パチスロは年々規制が厳しくなってきていることもあって、競技人口は減少の一途をたどっており、こういった人たちの多くが競艇や競馬などの公営ギャンブルに流れてきています。
競艇場の売り上げの割り振り
競艇場の売り上げはどのように振り分けられているのでしょうか。
まず全体の売り上げのうち、75パーセントは配当金として舟券を勝った人に振り分けることとなっていて、残った25パーセントが競艇場の取り分となります。
しかし、25パーセント全部が競艇場の儲けになるわけではなく、ここから更にいろいろな所へ分配されます。
売り上げ高25パーセントのうち、おおよそ7割が「開催経費」にあてがわれ、ボートやモーターの費用や施設の維持費、広告費、そして人件費など、競艇場を運営するために使われます。
次に「日本財団交付金」としておよそ3パーセントが儲けから差し引かれます。
日本財団交付金は公益事業の助成金として使われていて、競艇の売り上げの一部は地域サービスのさらなる充実に役立てられていることになります。
また、ボートの維持や管理のための費用として「競走会交付金」を、地方公共団体金融機構への納付として、「団体金融機構納付金」が差し引かれます。
これらのお金をすべて差し引いた残りが競艇場の純利益になるというわけです。
まとめ
競艇は高度経済成長期に差し掛かった1951年から始まり、その後は順調に売り上げをのばして1991年には2兆5千億円もの売り上げを記録していました。
しかしバブル崩壊後は右肩下がりで売り上げは減少し、一時はピーク時の3分の1まで落ち込みましたが、積極的なコマーシャル放映や競艇場のリニューアルなどによってイメージアップを図った結果、売り上げは順調に回復してきています。
現在は公営ギャンブルの中でもっとも注目される競技になっており、今後も順調に売り上げを回復していくことでしょう。