競艇の罰則のひとつ「出遅れ」とは?発生原因とペナルティの内容を解説
競艇は野球やサッカーといったスポーツではなく、金銭の増減が発生する「公営競技」となっているからか、公正さを守るために他のスポーツと比べても非常に厳しいルールの元レースを実施しています。
競艇の罰則などを知るとその厳しさに驚きを覚え、競艇選手という職業がいかに大変かを痛感するのではないでしょうか。
本記事では競艇の罰則のひとつである「出遅れ」について詳しく解説していきます。
競艇は「フライングスタート方式」
競艇は水上で行われる競技です。
したがって同じところに留まる事ができません。
そのため競馬や競輪などのようにスタートラインに全ての選手が横一列に揃ってスタートするといった、オーソドックスなスタート方式でレースを開始する事が不可能となっています。
そこで競艇では「フライングスタート方式」という特殊なスタート方式を採用しています。
具体的には以下のような流れでレースがスタートします。
・スタートのファンファーレが鳴るとスタート待機場所まで移動
・大時計のランプの色が変わったらスタート開始
・大時計のタイマーがゼロの時にスタートラインを通過するように速度を調整しつつラインを通過してレース開始
ボートが動いている状態でスタートまでの時間を調整しなければならないので、いかにタイマーがゼロの時にトップスピードの状態でスタートラインを通過するかが非常に重要で、上位ランクの選手はこの時間の合わせ方が巧みだからこそ勝利を積み重ねることができているのです。
「出遅れ」はスタート事故のひとつ
動きながらスタートするという事は、どうしてもスタートが早くなってしまったり、逆に遅れてしまったりする事があります。
競艇ではタイマーがゼロになってから1秒以内に通過しなければならないというルールが設けられています。
もしゼロになって1秒以内にスタートラインを越えられなかった場合はルール違反と見なされ、その選手は罰則を受けることになります。
この罰則が今回取り上げる「出遅れ」です。
ルール通りにスタートできなかった場合の罰則を「スタート事故」と言います。
つまり「出遅れ」はスタート事故のひとつという事になります。
ちなみにスタートが早すぎると「フライング」という罰則になるのですが、こちらの条件は非常に厳しく、たった0.1秒早くスタートしただけでフライングと見なされてしまいます。
出遅れしてしまった選手が含まれる舟券はどうなる?
出遅れてしまった選手はその時点でレースに参加する事ができず、失格となります。
出遅れてしまってレースを続けられなくなった選手を買い目に入れていた場合はどうなるのでしょうか。
フライング又は出遅れでレースに出走してしまった選手はレースに参加していないという扱いになり、その選手を含めている舟券は全て無効となります。
したがってスタート事故を起こしてしまった選手を買い目に含めている舟券を購入した際に支払った舟券代は全て返還されます。
ただし現地で紙の舟券を購入していた場合はその舟券が無ければお金を返還してもらえないので、どんなレースであってもレース結果が出るまでは舟券を捨てないようにしてください。
出遅れが発生してしまう原因
フライングと違って1秒も猶予がある「出遅れ」という反則が発生してしまう原因としては、主に本項目で解説する3つのどれかに該当します。
3つとも事前に予測する事は不可能であり、出遅れは全てなんらかのアクシデントが発生することによって犯してしまう反則なのです。
強い向かい風によって間に合わなかった
出遅れが発生する原因のひとつに向かい風があります。
競艇選手は時計を見ながらスタートできないので、スタートタイミングは全て感覚で合わせるしかありません。
ところが急な向かい風が吹いてしまうとボートが進んだ際に強烈な空気抵抗が発生し、なかなかスピードを上げる事ができなくなります。
すると本来ならばタイマーが0になった時にスタートラインを通過するはずが全く届かなくなってしまい、1秒経過して出遅れと見なされてしまうというわけです。
高波で煽られて著しくスピードが落ちてしまった
二つ目の原因はひとつ目の原因と関連しているのですが、スタート時に高波が発生し、その高波に煽られてしまってスピードが大きく低下、スタートに間に合わなくなって出遅れと見なされてしまうというケースです。
高波が発生する原因のひとつには「強風」があります。
つまり強い向かい風だと風そのものでスピードが落ちる上に発生した高波によってもスピードが落ちてしまう恐れがあるという二重に危険な状況でのスタートを強いられるというわけです。
モーターのアクシデント
もうひとつ、出遅れの原因として考えられるのがモーターのアクシデントです。
自動車に乗っていてエンストを起こした結果全く動かなくなってしまい、大変な思いをした経験がある人は多いのではないでしょうか。
競艇のモーターも自動車に使用されているモーターと構造的にはそう大きく変わる事はありません。
したがってスタート直後にいきなりエンストを起こしてしまって停止する事は普通にあります。
エンストを起こしてしまうと出遅れどころかレースそのものを続行する事が不可能になってしまう事でしょう。
また、プロペラと水の間に空気が発生してしまうと「キャビテーション」と呼ばれる現象が発生します。
キャビテーションが発生するとモーターの推進力が全く得られなくなってしまうためスピードが出なくなり、出遅れてしまう可能性が非常に高いです。
出遅れをしてしまった選手が受けるペナルティとは?
出遅れとなってしまった選手はその時点で失格扱いとなり、レースに参加する事ができなくなる事は解説しましたが、出遅れをしてしまった選手が受ける罰則は失格になってしまうだけではありません。
出遅れを犯してしまった選手に対しては以下のペナルティが科せられる事になっています。
30日間レース出走停止
出遅れを犯してしまった選手は現時点で出走しているレースが終わった後、30日間の斡旋停止処分が下され、この期間はレースに出走する事ができません。
この処分に関しては「フライング」してしまった場合も全く同じ罰則であり、スタート事故を犯してしまった選手は例外なく30日間レースに出走する事ができないと認識しておけば良いでしょう。
事故点20点加算
出遅れしてしまった際のペナルティは斡旋停止だけではありません。
出遅れ、フライングをしてしまうと事故点20点が加算されます。
この事故点は半年ごとにおこなわれる級別を査定する際に計算に含まれます。
具体的には審査する際に半年間の事故点の合計をレースの出走数で割り算し、その数値が0.70を超えている場合、次の期は問答無用でB2級にまで降級してしまいます。
更に事故率が1.00を超えた場合は半年間レースに出走する事ができません。
同じ節で2本目の出遅れをすると更に重いペナルティが
出遅れは30日間の斡旋停止とはなるものの、既に出走しているレースに関しては対象外であり、勝ち続ければレース終了まで出走する事ができます。
しかしレースに出走できるという事は言い換えれば再び出遅れてしまう可能性があるという事です。
もし同じ節で既に出遅れを犯してしまった場合は更に重いペナルティが科せられる事となります。
同じ節で2回目の出遅れをしてしまった選手は「60日間の斡旋停止」が言い渡されます。
これは1回目の出遅れで科せられる30日間の斡旋停止とは別物です。
つまり出遅れを2度犯してしまうと1回目の30日と2回目の60日間を合計した、90日間の斡旋停止となってしまうため、どの選手にとってもかなり厳しいペナルティが科せられる事となります。
更に2度目の出遅れをしてしまった時点でその選手には「即日帰郷」が言い渡されます。
1回目の出遅れは斡旋停止の処分を受けるだけで、節が終わるまでは普通にレースへの出走が可能ですが、2度目の出遅れをしてしまうとその日のレースが終了したら、次の日のレースで出走する予定があったとしてもレースに出走する事ができません。
選手はその日の出番が終わったら直ちに荷物をまとめ、地元に帰る事となります。
出遅れの罰則が厳しい理由
競艇は特殊なスタート方式ということもあり、一般的な陸上競技と比べると「フライング」や「出遅れ」といったスタート事故はどうしても発生しやすいです。
にも関わらず、罰則やペナルティは非常に厳しいものとなっています。
なぜここまでスタート事故の罰則が厳しいのかというと、スタート事故を起こすことによって多方面に被害を及ぼすことになってしまうからです。
まず、出遅れた選手は失格となるのでその選手の番号を含んでいる買い目はすべて無効になり、返還されます。
すると舟券の売上額が大幅に減少するうえに買い目点数が減るためオッズは全体的に大幅に下がるため、舟券を購入する私たちからすれば参加するメリットがあまりないレースとなってしまいます。
運営側としても出遅れが出た時点で売り上げが下がるのは確定なので、利益が大きく縮小することとなります。
競艇ファンからするとたかが出遅れと思ってしまいがちですが、このように多くの人にとって大きなデメリットが生じる事象なので、その分厳しいものとなってしまうのです。
出遅れしてしまうと選手の心理に大きな悪影響を及ぼす
先に解説したように、出遅れを同じ節に2度犯してしまうと、選手自身に多大なペナルティが科せられることになります。
さらにこの2回目の罰則は「出遅れ」だけに適用されるわけではありません。
例えば出遅れを1度犯してしまった選手が同じ節にフライングを犯してしまうと、出遅れとフライングがそれぞれ1回で「スタート事故を2回犯している」ことになるため、計90日の斡旋停止と即日帰郷のペナルティを受けることになります。
選手としてはこのペナルティは何としても避けなければならないので、スタートはかなり慎重にならざるを得ません。
スタートが勝敗を大きく左右する競艇において、この心理的ダメージはレースに多大な影響を及ぼすことは間違いありません。
スタート事故を犯しているかどうかは「出走表」を見れば一目瞭然なので、スタート事故を犯してしまっている選手については評価を大きく下げておいたほうがよいでしょう。
まとめ
競艇は水上でおこなう競技なので、陸上競技のようにスタートラインに揃った状態で一斉にスタートすることができません。
競艇では「フライングスタート」という特殊なスタート方式を採用していて、レースがスタートする前からボートは動いている状態であり、「大時計」の針がゼロになった時点でスタートとなります。
そしてボートは大時計の針が0になった瞬間から1秒以内にスタートラインを越えなければなりません。
出遅れは大時計の針がゼロになってから1秒以内にスタートできなかった場合に適用される罰則で、フライングと同じく「スタート事故」に該当します。
出遅れを1度犯してしまうと、現時点で出走している節が終了してから30日間は斡旋停止処分という罰則が科せられ、さらに事故点0点が加算されます。
そしてその節の間に再度出遅れあるいはフライング、つまり「スタート事故」を犯してしまうと、さらに60日間斡旋停止期間がプラスされ、「即日帰郷」が言い渡されるため、その日のレースが終了したら直ちに地元に帰らなければなりません。
出遅れが発生してしまうと、その選手の買い目はすべて無効になって返還となってしまうため、すべてのオッズが下がり、舟券を購入する側にとっては大きなデメリットとなるほか、運営側から見ても無効となった舟券の売り上げはそのまま損失となるなど、多大な方面に迷惑をかけることとなるため、罰則が厳しくなっています。
選手にとっても2度目のペナルティは多大なダメージとなるので、1度出遅れないしフライングを犯した選手はスタートが非常に慎重となるため、レースでは大きく不利となります。
自分が本命視している選手が過去にスタート事故を起こしてしまっているのであれば、評価は少し下げて予想をしたほうがよいでしょう。