2022年非常識なフライングの反則ルールが変更!変更によるレースへの影響とは?
競艇においてフライングという反則は割と頻繁に発生しています。
競艇はボートにブレーキが付いていないのと水上で行われる競技であるという特性上、陸上競技や競馬などのようにスタートラインに横一列揃ってスタートをするということができません。
そのためスタートのタイミングが非常に取りづらく、ちょっとでもタイミングが早すぎるとスタートより前に飛び出してしまい、反則が取られてしまうのです。
そんなフライングに対する罰則が2022年に改定されました。
本記事ではどのような改定がおこなわれたのかや、改定によってどのような影響があったのかを解説していきます。
2022年4月より非常識なフライングをした選手への処置が変更
2022年4月19日、日本モーターボート競技会からフライングに対する罰則規定を変更するという発表がありました。
しかしながらすべてのフライングが対象というわけではなく、フライングのなかでも「非常識なフライング」と見なされた場合の罰則のみが変更されます。
これまで非常識なフライングを犯してしまった選手に対しては「即日帰郷」という処置がなされていました。
「即日帰郷」とは読んで字のごとく「その日のうちに帰らなければならない」という罰則です。
競艇はひとつのレースが数日間行われるのですが、たとえばレース初日にフライングをしてしまった場合、その日のレースには出場できますが、1日目のレースが終了するとすぐに帰らなければならないので、2日目以降のレースに出場することができなくなります。
しかしルール改定後はこの「即日帰郷」という措置が廃止となりました。
その代わり、元々フライングの罰則にある「フライング休み」に5日間がプラスされます。
1回フライングを犯してしまうと30日間レースに出られなくなりますが、非常識なフライングと見なされた場合は30日間に5日間をプラスした35日間レースに出られなくなります。
フライングは選手にとっても運営側にとっても痛い反則
競艇に興味を持ち始めた人の中にはフライングを犯してしまうとどうなるのか知らない、という人もいるでしょう。
フライングはレース前の反則という扱いとなるため、選手はレースそのものに出走できないという扱いになります。
したがって選手はフライングと見なされた時点でレースから外れ、さらにフライングとなった選手が絡んでいる舟券はすべて「無効」扱いとなるため、その分の売上げは全額返還となります。
選手からすればレースそのものに出られなくなるため、「出走手当」を始めとしたレースの賞金が一切得られなくなってしまいますし、運営側もフライングによって売上げが大幅に減額となるため、フライングは選手にとっても運営側にとっても非常に痛い反則といえるでしょう。
特にA1級の人気選手がSGレースでフライング事故を起こしてしまった場合、過去には何度か数十億円単位で返還されるといった事態になったことが実際にあります。
また、返還されて売上げが大幅に減ってしまうということは配当金も大幅に減るということになるので、私たちが舟券を的中させたとしても払戻金が減ってしまうということになります。
フライングは私たちにとっても非常に大きなデメリットがある反則といえるでしょう。
非常識なフライングとは?
(引用元:BOATRACEオフィシャルウェブサイト)
スタートの合図よりも先に飛び出してしまうのがフライングですが、その中でも「非常識なフライング」とはどういったフライングが該当するのかというと、「実際のスタートよりもコンマ05秒以上早いタイミングでスタートしてしまった」場合、非常識なフライングとみなされます。
私たちにとってはコンマ05秒というとほんのわずかな時間ですが、コンマ01秒の争いをしている競艇選手からするとコンマ05秒というのは明らかに早すぎると体感するフライングです。
しかしながら2021年には150件近くこの非常識なフライングが発生していることを考えると、非常識なフライングというのはそこまで珍しくない反則であるといえるのではないでしょうか。
今回のルール変更によって発生するメリットとデメリットとは?
非常識なフライングの罰則ルールが変更されるとどのようなメリットやデメリットがあるのかを考えてみましょう。
従来の罰則ルールだと非常識なフライングでは選手がその日のうちに帰らなければならないため、欠員が生じます。
もし予備の選手や代わりの選手がいない場合は大急ぎで代わりの選手を斡旋しなければならないため、運営側にとってはかなり大変です。
したがって、状況によっては運営側の判断で「即日帰郷」という罰則が帳消しになって翌日以降も普通にレースに出走しているというケースも実際あったそうです。
これは選手側からすると不公平だと思われても仕方ないでしょう。
しかし即日帰郷が無くなったため、非常識なフライングが発生してもそのレースは選手を追加したり変更することなく開催できるため、運営側にとっては非常に楽になったといってよいでしょう。
舟券を購入して応援している私たちにとっても自分が好きな選手が突然居なくなるということが無くなるため、レースの日程が終了するまで安心して選手を応援し続けることができます。
またフライングを犯してしまうと、場合によっては碧南訓練所という施設で二泊三日間、スタートの研修を受けなければならなくなります。
研修を受けなければならないのは「優勝決定戦でのフライング」「非常識なフライング」の2つだったのですが、今回のルール改定によって非常識なフライングではこの研修を受けなくてもよくなりました。
一方でフライング休みが伸びるというのは選手にとってはデメリットでもあります。
レースに出られないということは当然その間選手の収入はゼロになりますし、場合によっては延長された5日間の間にG1やSGなどの格式が高いレース日程と被ってしまい、出走できなくなってしまうといった事態になることもあるでしょう。
G1レースやSGレースは出走手当も一般レースよりもかなり高額なので、選手にとってこれらのレースに出走できないのは非常に大きな損失です。
今回のルール変更は運営側の都合による変更のように感じられる
通常罰則のルール改定というのは、「その罰則を犯す回数を減らすように厳しくする」ことが多いです。
例えば交通事故の罰則は近年何度も改定されており、特に飲酒運転をした際の罰則が非常に厳しくなったのは記憶に新しいのではないでしょうか。
では非常識なフライングの罰則は厳しくなったのかといえば、即日帰郷だったのが即日帰郷が廃止となった代わりにフライング休みが5日間伸びたという改定では、罰則が厳しくなったとはとても言えません。
というよりも、今回のルール改定でメリットを多く享受するのは運営側であるため、今回のルール変更は運営側の都合による変更ではないかという疑念さえ抱いてしまうほどです。
ルール変更してどうなったか
実際にルール変更となってからどのような変化が起こったのでしょうか。
ルール変更となってから最初の月となる5月中、フライング事故は合計134回発生したそうです。
そのうち6件がコンマ05秒以上のいわゆる「非常識」とされるフライングとなっていて、これは全体の6パーセントに該当します。
2021年は計150件近いフライング事故が発生していて、月ごとに計算するとだいたい13件ほどなので割合としては半数になっており、数字だけ見れば効果が出てはいますが、2022年度全体で見てみなければ効果の有無の判断はできないでしょう。
今回の変更の影響を最も受けるのは選手たちですが、選手たちは皆「即日帰郷のほうがまだ良かった」と話しているそうです。
やはりレースに出走できなくなる日数が5日増えるのは、勝率や獲得賞金の事を考慮すれば選手にとってダメージが非常に大きいので、そう考えればある程度の抑止力は結果的には出てくるのかもしれません。
特に選手の成績が最終的に決まってしまう期末ごろになると、今までよりもフライングを控えようとする選手は多くなりそうです。
まとめ
2022年4月より、コンマ05秒以上早くスタートしてしまう、いわゆる「非常識なフライング」に対するルールが改定されました。
今まではその日のレースが終了後地元に帰る「即日帰郷」という罰則だったのですが、それが無くなり、代わりに「フライング休み」が5日プラスされることとなります。
これによって運営側は代わりの選手を斡旋する手間が省けるなど多くのメリットを享受しました。
一方選手にとって5日休みがプラスになるというのはダメージが大きく、運営側の都合によるルール変更のようにも思えますが、一定の効果は期待できそうです。