競艇における「妨害」と「不良航法」の違いとは?罰則についても解説

競馬の場合、競走馬の能力が各馬それぞれ異なるため、競走馬の能力によって決着がつくことが多いです。
競輪も選手が自転車を漕ぐことによって前に進むため、選手の自転車を漕ぐ能力というのが勝敗を分ける大きな決め手となります。

一方競艇の場合は、ほんのわずかな差はあれど、選手が乗るボートも、積載するモーターもすべて性能は同じです。
したがって、ほかの公営競技以上にポジション取りというものが重要になり、選手たちは少しでもほかの選手よりも良いポジションを確保しようと考えながら走行しています。

そういった性質から、競艇では「妨害」や「不良航法」といった反則がとられてしまうケースがたまにあります。
本記事ではこのふたつの反則行為について詳しく解説していきます。


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性質上多少の接近バトルや接触は発生する

性質上多少の接近バトルや接触は発生する

冒頭で競艇はポジション取りがとても重要であるということを説明しました。
競艇でもっとも重要なのが艇が旋回する「ターンマーク」付近です。

このターンマーク付近でいかにほかの艇よりも内側に入るかでそのレースの勝敗がほぼ決します。
そのため、ターンマーク付近では艇同士がギリギリの距離まで接近する場合がほとんどですし、時には半ば強引に内側に入ろうとして接触するような場合も度々あります。

競泳のボートは最高時速80キロ近くまで出るといわれており、近年はほぼ全速力で旋回する「全速ターン」が主流なので、ターン付近であってもトップスピードにほとんど近い状態です。
そのような状況で接触が発生すると、艇のバランスは大きく崩れ、時には転覆することもあります。

しかしターンマーク付近での攻防による接近や接触は黙認されており、ルールに違反していない正常な争いで片方の艇が転覆してしまったとしても、それは選手の自己責任となります。
接触によって艇単体が転覆してしまった場合、加害者には事故点10点が加算されます。

被害者側は基本的に点数が加算されることはありませんが、検証の結果被害者側にも何らかの過失があると認められた場合はその過失に応じて事故点が加算されることになります。

妨害失格の定義について

妨害失格の定義について

競艇は一対一で争われる競技ではありません。
一度のレースで最大6艇が出走し、順位を争うことになります。

前の艇が転覆事故を起こした場合、後続の艇は巻き込まれないように必死に避けますが、予測不可能ということもあり、避けきれずに後続の艇も転覆してしまうというケースもまれに発生します。

加害者と被害者以外の艇が転覆事故にまきこまれて転覆してしまった場合、後続の転覆事故を発生させてしまった選手には「妨害失格」という罰則が言い渡されます。

妨害失格とよく似ている「不良航法」とは?

妨害失格とよく似ている「不良航法」とは?

次に「不良航法」について説明しましょう。
不良航法という言葉のニュアンスだけを見ると、恐らくルールに反する走り方をした場合に科せられる罰則であることが分かります。

ルールに反する走り方をしているということは、ほかの選手を妨害していると考えてよいでしょう。
しかしながら、ほかの選手の走行を妨害していることによる罰則はすでに「妨害失格」というものがあるので、わざわざ分けなくても良さそうな気がします。

実は不良航法とみなされる行為というのは明確にルールで定められていて、その行為は妨害失格とは大きく異なっています。
そのため「妨害失格」と「不良航法」は完全に区別されているのです。

不良航法と見なされる行為は大きく二つ

不良航法と見なされる行為は大きく二つ

不良航法と見なされる行為は「追い抜き違反」と「斜行違反」のふたつです。
それぞれどういった行為が反則と見なされるのか、詳しく見ていきましょう。

追い抜き違反

「追い抜き違反」に関しては、次のように記載されています。
「後ろに続く艇は先行している艇を追い抜く際、左方向に見て追抜くのが鉄則。これに違反した場合に追い抜き違反で不良航法を取られる。

※ただし、他艇の妨害があった場合、安全な間隔がある場合、その他やむを得ない場合のときはこの限りでない。」

左方向を見て追い抜くということは、競艇では基本的に右側から追い抜かなければならない、ということになります。
ターンマーク付近で相手を左に見て追い抜くということは、原則としてターンマーク付近では外側から追い抜かなければならないということです。

しかし競艇の決まり手のひとつに「差し」というものがあり、差しでは相手の艇よりも内側に入り込んでターンマークを回り、先行する艇を抜くことになります。

これはルール違反にあたるのでは?と思ってしまいますが、「追い抜き違反」の後半には「安全な間隔がある場合はこの限りではない」とも書かれています。

つまり、追い抜こうとする艇の周りにほかの艇があったり、走行を遮るものがないと判断できるのであれば、内側から追い抜いても特に問題はないのです。

斜行違反

次に、「斜行違反」については次のように記載されています。
「直線競争中、先行している艇や後ろに続く艇が進路変更した際に、あきらかに不利を与えたと判断される場合。」
※競艇場によっては、そもそもバックストレッチ斜行を許可していないところもあり。

つまり、直線を走っている時に自分の前や後ろを走っている艇が進路変更をした際、その邪魔をしたり進路を塞ぐような走り方をすると斜行違反と見なされる、ということになります。

上記の説明にもある通り、バックストレッチではそもそも斜行そのものを認めていない競艇場もあって、そのルールが適用されている競艇場ではバックストレッチでは進路を変えたりせずまっすぐ走らなければ反則とみなされます。

ダンプは不良航法と見なされやすい

ダンプは不良航法と見なされやすい

競艇選手のなかには、ターンマークを回る際にほとんど船首を返さずにターンを周り、相手の艇に自分の艇を突っ込ませて外へ弾き飛ばし、内側を確保して相手を抜き去る「ダンプ」という戦法を駆使する人もいます。

相手の艇にぶつけるような回り方をする「ダンプ」は素人目に見ても危険な戦法ですし、実際にダンプを受ける選手も接触によって無理やり外側に弾き出されるので、ときにはバランスを崩して転倒してしまうこともあります。

どう見てもダンプは「不良航法」に当たるような気がしますし、実際にダンプが不良航法と見なされてしまうケースも度々あります。

しかし、競艇では多少艇同士が接触するような事態というのは黙認されていて、明らかに悪質なダンプは不良航法と見なされますが、十分に間隔が確保できている状態の場合は内側から相手を追い抜くこと自体は認められていますし、少しの接触も黙認されているので、たとえダンプであっても特にペナルティを科せられることはありません。

ダンプが決まれば大きく有利にはなりますが、反則スレスレの戦法であるため、ダンプを嫌う選手やファンは一定数存在します。

妨害失格となった場合の罰則

妨害失格となった場合の罰則

競艇ではレース中に罰則行為を犯してしまった場合は特に罰金を払う必要はありませんが、一定期間出走停止など、レースに影響するペナルティが科せられることになります。

「妨害失格」の場合は「事故点」15点が加算されることになり、その節の間レースには出場できなくなってしまいます。
単体の転覆事故と比べると、かなり重い罰則になっているといえるでしょう。

不良航法とみなされた場合の罰則

不良航法とみなされた場合の罰則

不良航法でも事故点が加算されますが、昔と現在で加算される点数が変わっています。
これまでは不良航法1回につき7点の事故点加算でしたが、2020年4月より不良航法の事故点が10点に引き上げられました。

特にダンプによる接触で転覆事故が発生すると、大事故につながる可能性も十分あるので、この引き上げは誰もが納得いく変更でしょう。

ちなみに予選で2度不良航法をしてしまうと「賞典除外」になって準優勝戦以降のレースに出ることができなくなります。
準優勝戦で不良航法をした場合は優勝決定戦に出ることができません。


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まとめ

妨害失格と不良航法はよく似ていますが、妨害失格は転覆事故が発生した際に後続の艇が巻き込まれて走行不能となった場合に適用され、不良航法は明らかに悪質な走り方で前を行く艇や航法の艇の走行を著しく妨げた場合に適用されます。

不良航法に関しては、特に反則ギリギリの戦法であるダンプで適用されてしまうことが多いです。

罰則による罰金はありませんが、妨害失格では事故点15点でその節の出走禁止、不良航法では事故点10点で予選で2回不良航法をしてしまうと賞典除外、準優勝戦では1回でも不良航法をしてしまうと優勝決定戦には出られなくなります。