競艇の沈没失格とは?罰則やG1レースで発生した事があるのかを調査!
競艇には様々な失格となる行為がありますが、その中でもかなり珍しい失格のひとつに沈没失格があります。
本記事では沈没失格とはどのような失格で、どういった状況で発生するのかを解説し、競艇界ではトップクラスのレースであるG1レースでも沈没失格が発生したことがあるのかを併せて紹介していきます。
沈没失格とは?どのように発生する?
沈没失格とは文字通り艇が水中に沈んでしまうことによって発生する失格の事です。
艇が水の中に沈んでしまうとそこから復帰してレースに挑むことはほぼ不可能ですし、なにより沈没することによってモーターが水に濡れてしまうため、モーターそのものが動かなくなります。
その結果無理やり動かして漏電などが発生すると選手が感電してしまう恐れがあります。
したがって沈没してしまった場合は直ちにレースを中止、救助艇が沈没した選手と選手自身を救出するために出動します。
沈没といっても私たちがイメージする沈没とは少し違っていて、ボートは木製なのですが、モーターを積んでいる分後方のほうが重いです。
沈没が発生してしまう状況というのは、ターンをした際に他の艇の起こした波や、風などで発生した波などによって艇の中に水が入ってしまったり、何らかの原因で船底に穴が開いてしまい、そこから水が入ってしまった際に発生します。
水が入ってしまうと艇が沈んでいくわけですが、私たちがイメージするように船体が全部沈んでいくというわけではなく、艇の先だけが水面より上に出ている状態で、後方を下にして沈んでいく事がほとんどです。
沈没する際は艇がゆっくりと沈んでいくので、大変な目に遭ってしまった選手の目の前で決してこのようなことは言えませんが、ちょっとシュールでなんだか笑ってしまいそうな光景です。
沈没失格はそう頻繁に発生する失格ではないため、観戦中に観ることができればかなりのレアケースを目撃しているという事になります。
沈没失格になった場合の罰則について
沈没失格になってしまった際の独自の罰則というものはなく、失格した場合はすべてルールに則った罰則が与えられることになります。
失格した際はその失格が選手責任なのか、そうではないのかが審議されます。
他の選手に接触せずに沈没してしまった場合などは選手責任に該当し、選手責任と判断されると事故点10点が加算されてしまいます。
しかし、ほかの艇と激しく接触してバランスを大きく崩したことによって水が艇に侵入して沈没してしまった場合などは選手責任外となり、この場合は事故点は付きませんが、レース自体は完走できていないので、レースでの点数は0点です。
選手責任であっても、責任外であってもいずれにしてもレースそのものが無効になってしまうというのは選手にとっては非常に厳しいので、選手たちは失格は何としても避けたいと思いながらレースに臨んでいます。
沈没以外で選手がボートから落ちる失格
沈没以外で選手がボートから落ちてしまう失格には大きく分けると「転覆」と「落水」があります。
選手がボートから落ちてしまう事例としては、沈没よりも転覆や落水のほうが圧倒的に多く、1日レースがあれば1回は落水や転覆のどちらかが発生するといっても過言ではないくらいの頻度です。
転覆
転覆とは艇が何らかの原因によってひっくり返ってしまう状態のことを指します。
ひっくり返ってしまうと当然選手は艇から投げ出されてしまうので、当然レースを続行できるような状態ではなく、失格となってしまいます。
転覆はターンをした際にバランスを崩してしまったり、強風に煽られたりする場合によく発生する事故です。
また、他の艇とぶつかった際に大きくバランスを崩して転覆してしまうといったケースもあります。
落水
落水は選手がハンドルから手を放してしまい、選手だけが水中に投げ出される失格です。
転覆などで選手が艇の傍にいるのであれば他の選手も転覆した選手を視認して回避しやすいのですが、落水だと選手だけが水面に居るといった状況になるため視認が非常に難しく、プロペラに巻き込まれたり後続の艇と衝突する可能性が高いため、かなり危険な状況です。
そのため、競艇学校では「死にたくなかったら転覆してもハンドルから絶対に手を離すな」と教育を受けます。
G1レースで沈没失格になってしまった事例があった!
過去にはG1レースで沈没失格になってしまった事例もあります。
全ての事例を紹介することはできませんが、YouTubeで動画に残っているものが2レースあるので紹介します。
1つ目は2017年11月4日、児島競艇場で開催された「児島開設65周年児島キングカップ」予選3日目第1レースにおいてです。
動画の2分35秒あたり、第2ターンマークを周回直後に2号艇椎名誠選手の艇がバランスを崩します。
転覆の危機は何とか持ちこたえたものの、その後艇が水中に沈んでしまい、艇の下半身が完全に沈んでしまっています。
もう1つは2019年10月3日に鳴門競艇場で実施されたG1レースで発生した沈没事故です。
映像には4コースの川原正明選手が1本目の動画と同じようにターンマークを周回したのちに艇がバランスを大きく崩し、その後後部から沈没していっている様子がはっきりと撮影されています。
その後川原選手は救助艇に救出されるのですが、救出された際も力が完全に抜けてしまっており、かなりショックだったのでしょう。
救助艇に救出された後、お客さんに向けて土下座のような姿勢で何度も頭を下げている姿が非常に印象的でした。
本当に申し訳なさそうな謝り方ですし川原選手本人も落胆している様子で、あんな姿を見せられたらヤジを飛ばしてやろうなんて気持ちにはならないでしょう。
沈没は一生懸命勝負を挑んだ結果ですし、何ら恥じるようなことではありません。
沈没失格になった選手の舟券は買わないほうが無難
沈没失格になってしまっても選手が大きなケガを負っているなどしてレースに出られないという状況でなければ以降のレースには普通に出走できます。
しかし沈没失格になってしまった選手の舟券は基本的には買わないほうが無難です。
なぜ買わないほうが良いのか、その理由を詳しく解説していきます。
選手自身が反則を恐れて積極的にレースに挑めない
失格をすると事故点が付与されてしまい大きく不利になるうえに、同じ節(競艇のレースは数日間の日程でおこなわれ、それを「節」と呼んでいる)に2度目の失格をしてしまうと即日帰郷という更に重い罰を課せられます。
即日帰郷は翌日以降のレースにすべて出られなくなってしまうので、選手にとっては非常に痛いです。
選手の立場に立った心理としては「何としても2回目の失格だけは避けなければならない」といった気持ちでしょう。
また事故点が付与されると予選では大きく不利になるので、「頑張っても恐らく予選は突破できない」といった心境にもなるでしょう。
そのため「とにかく失格せずに無難に完走して完走手当や賞金を稼ごう」という心理状態になります。
このような心理状態の選手が自分の力をフルに発揮できるわけがありません。
積極的に勝負ができない選手が競艇のレースで勝つことはないので、沈没失格した選手はあまり買わないほうが良いという理由に繋がるというわけです。
沈没の影響でボート、モーター共に大きな損傷を受けているため
沈没失格になってしまった選手を買わないほうが良い理由には選手自身の心理状態以上にボートそのものの状態によるものが大きいです。
沈没してしまうとボートもモーターも水浸しになって多大な損傷を受けた状態になります。
ボートは水に濡れたところでそこまで大きな影響を受けることはありませんが、モーターが水に濡れてしまうというのは致命的なダメージです。
そのままではレースに出ることすらままならないので、急いで損傷部分を確認して部品を交換するところがあれば交換し、整備や調整も1からやり直しになります。
モーターはレースを重ねる際にどんどん今の水面状況に適したモーターへと調整していくわけですが、沈没してモーターが水浸しになることによってそれが全て失われてしまいます。
ほぼ全面改修後のモーターがどれくらい走るのかは調整した選手自身もわからない状態です。
しっかりと整備されたモーターと、あらゆるところを調整して走るかどうかわからないモーターとでは整備されたモーターのほうが信頼度が高いというのは言うまでもないでしょう。
G1レース以外では沈没失格は頻度は少ないものの毎年のように発生している
G1レースでの沈没失格というのはレース数が少ないというのもあって滅多に発生するものではありませんが、一般戦での沈没失格というのは毎年数回程度ではありますが発生しています。
直近だと例えば2022年10月8日、徳山競艇場で行われた優勝戦において、待機行動中に1コースを奪おうとした2号艇の選手に対して1号艇の選手が突然艇をぶつけたことによって2号艇選手が沈没し、失格してしまうという事故が発生しました。
このレースでは結局1号艇選手が優勝しましたが、この選手も待機行動違反となっており、優勝パレードが中止となりました。
そのほか2023年5月16日、若松競艇場の第8レースの第1ターンマークで転覆2艇、落水、沈没といった事態になり、3連勝式が不成立になってしまうといったトラブルが発生しています。
競艇選手は命がけで戦っているので失格してもヤジを飛ばさないようにしよう
競艇は時に命を失う恐れもある危険な競技です。
競艇選手は非常に年収の高い職業として有名ですが、それは命がけでレースに挑んでいるからにほかなりません。
レース中の失格はレースで負けたのと同義なので、失格になった時点でその選手が含まれている買い目はすべてハズレとなります。
自分が舟券を購入している選手が沈没や落水、転覆といったアクシデントで失格になってしまうとついついカッとなってヤジを飛ばしてしまいたくなる気持ちも分かりますが、もしその選手が事故によって引退を余儀なくされるような大ケガを負ってしまったり、最悪亡くなってしまうと二度とその選手の舟券を購入することができません。
たとえ失格になったとしても、次のレースに出走してくれればまたその選手の舟券を購入できます。
決して失格してしまってもヤジを飛ばさず、次のレースに期待するようにしましょう。
まとめ
競艇の沈没失格とは、文字通りボートがレース中に沈没してしまうことによってレース続行不可能となってしまうトラブルです。
沈没はターンの際にバランスを崩す、ほかの艇とぶつかる、強風に煽られるなどといった原因で艇に大量の水が入ることによって艇が沈んでいきます。
沈むといっても艇全体がすべて沈んでいくというわけではなく、艇の先が水面より上に出た状態でモーターを積んでいる後方が沈むといった沈没の仕方をすることがほとんどです。
選手が水面に落ちてしまう失格としては他に落水、転覆がありますが、発生する比率としては転覆や落水のほうが圧倒的に多く、1日に1度くらいの比率で発生しているといっても言い過ぎではないほどです。
G1レースにおいても沈没事故が発生しており、その時の選手は非常に脱力し、ファンに対して申し訳なさそうにしている姿が動画でも撮影されています。
沈没をはじめ転覆、落水といった行為によって失格になると、その選手が含まれている舟券はすべてハズレになってしまうので、ついつい選手に対してヤジを飛ばしてしまいそうになりますが、競艇は時に命を失う事もある危険な競技です。
失格になっても生きていれば次のレースでまた舟券を購入できますが、亡くなってしまうと二度と舟券を購入することができません。
たとえ失格したとしても、選手に対してヤジを飛ばすようなことはしないようにしましょう。