転覆と落水は似ているようで違う!転覆した場合のペナルティについても解説
競馬を見ていると、ときおりレース中に騎手が馬から落ちてしまう「落馬」シーンを見かけることがあります。
競馬をはじめ4つの公営競技はすべて「何かに乗って」レースをおこなっているので、乗っているものから落ちてしまう可能性はどの競技でもあるといえるでしょう。
競艇で乗っているボートから落ちてしまうと、「転覆」あるいは「落水」という判断を下されます。
このふたつ、似ているようでいて少しニュアンスが異なっているので、ここでしっかりと覚えておきましょう。
いかに競艇選手といえど水面に落ちてしまうことはある
改めて言うまでもありませんが、競艇選手は私たち一般人とは比べ物にならないほどボートを操る技術は優れたものを持っています。
競艇選手になる前には養成所で脱落者も出るほど厳しい訓練を受け、実践も兼ねて操縦技術などを徹底的に学びますし、選手になれば1年間に100を超える回数、レースに臨むこととなります。
練習走行も合わせると、何千回とボートに乗っている選手は数えきれないほど居るでしょう。
しかし競艇は水上でおこなわれる競技です。
水上は競馬でレースが行われる芝や、競輪やオートレースがおこなわれる道路と比べると圧倒的に不安定な条件で戦っています。
更にターン付近では誰よりも早く先着しようとボートが密集し、あわや接触するのではと思ってしまうほどの接近戦が展開されますし、実際に接触しながら戦う場面も多々あります。
そのためどんなベテラン選手であっても、思わぬアクシデントによって水面に落ちてしまうことは十分ありえるのです。
ちなみに、いかに水面といえど全速力で走るボートから落ちて叩きつけられると、凄まじい衝撃が襲い掛かります。
競艇選手たちは皆、水面に落ちたときの恐怖とも戦いつつレースに臨んでいるのです。
選手が水面に落ちてしまう3つのケースとは?
競艇選手が水面に落ちてしまうケースというのは大きく3つに分けられます。
それぞれ落ちる時の状況や呼ばれ方が違うので、予備知識として覚えておいて損はありません。
転覆
転覆とは「ボートがひっくり返ってしまうこと」です。
競艇において、選手が水面に落ちてしまうケースとしては転覆が最も多いです。
そして転覆によって水面に落ちてしまった時が実は一番危険で、競艇で発生してしまった死亡事故というのはその大部分が転覆したことがきっかけになってしまっています。
舟券を買っていない有力選手が転覆した時はつい喜んでしまいそうになりますが、そうではなく無事に復帰できることを祈るようにしましょう。
落水
落水というのは、艇自体はひっくり返ったりはしていないものの、選手のみが水面に投げ出されてしまうというケースです。
考えられるのは、例えばターンを回る際にハンドルを握っていた手が滑ってしまい、遠心力で飛ばされて落水するというパターンが思いつきますが、このようなことは滅多に起こるものではありません。
競艇ではたとえ転覆してもハンドルは離さないようにと教え込まれているので、選手が単体で水に落ちてしまうような場面はほぼ見ることはないでしょう。
沈没
沈没とは、ボートそのものがなんらかのアクシデントで沈んでしまうことです。
ボートが沈没するケースというのは、ボートの底に穴が開いているなどしてボート内に水が入ったときしか考えられません。
しかしレース前は細かい部分までしっかりと点検が行われるため、水が浸入してしまうほど穴が開いた状態のボートが使われるようなことは無いと断言できます。
したがって、沈没によって選手が水に落ちてしまうという場面も恐らく見ることはないでしょう。
転覆が発生してしまいやすいケース
選手が水面に落ちてしまうケースは主に3つありますが、落水や沈没で水面に落ちてしまうことはほぼ無いので、ボートが転覆することで水面に落ちてしまうことが圧倒的に多いです。
では一体どのような場面で転覆が発生してしまいやすいのかを見ていくことにしましょう。
ほかの艇との接触
転覆でもっとも多いのが、「ほかの艇と接触」したときです。
特にターンマーク付近では激しい先行争いが繰り広げられるためボート同士が接近しますし、ときには反則スレスレでわざとぶつけるようにターンをしてくる選手も存在するので、そういった際に接触による転覆が発生しやすくなります。
自爆
そしてもう一つ「自爆」による転覆も意外に多かったりします。
例えば前の艇を抜こうとする際にはほぼトップスピードでターンをすることになりますが、その際に思っている以上にスピードが出てしまって体重移動が遅れた場合はバランスを崩してほかの艇と接触していないのに転覆してしまうことがあります。
また、水面は常にフラットではありません。
風の影響や、海水を使っているときは潮の満ち引きなどの影響で波が立ちます。
この波の立ち方が選手の予想に大きく反した場合もバランスを崩してしまい、転覆することがあります。
また、前を艇が走った時にも「引き波」という波が発生しますが、この引き波に飲まれて転覆するといったケースも十分起こりえます。
転覆してしまった場合舟券はどうなる?
転覆してしまった場合の舟券に関してですが、転覆をしてしまった場合、選手はそのレースで走行することはもちろん出来ず、失格扱いとなります。
そして舟券がどうなるかは、レース前に転覆したか、レース中に転覆したかで扱いが変わります。
滅多に起こる事ではありませんが、万が一レース前に転覆してしまった場合は出走取消となるのでその選手に支払った舟券は無効となり、返還されます。
しかしレース途中に転覆した場合、その選手は降着となるのでレースは成立し、いかなるケースの転覆であったとしても舟券代が返還されることはありません。
ただし、4艇が転覆し、3連単や3連複が不成立となってしまった場合は3連単・3連複の舟券代は返還されます。
転覆した選手に科せられるペナルティについて
転覆事故が発生してしまった場合は状況に応じて罰則が発生します。
接触によって転覆してしまった場合、接触させた側には「選手責任」として10点の事故点が加算されます。
もちろん接触によって転覆させられてしまった被害者側に関しては事故点をつけられることはありません。
しかしすべての被害者が例外なく事故点0になるわけではなく、交通事故の時と同じように検証が行われ、被害者側にも過失があると認められた場合は事故点がついてしまうこともあります。
とはいえ、フライングや出遅れといったスタート事故になると事故点が20点加算されてしまうので、それと比べれば転覆事故はそれほど重大な加点ではないともいえます。
出走する選手に「転覆歴」がある場合は要注意
競艇で使用するボートはレース節ごとに抽選で決まっており、その節の間は乗り換えることができません。
したがってボートが転覆した場合もそのまま使用することとなります。
転覆した艇に乗っている選手は、出走表に「転覆歴」と記載されるのですが、転覆歴がある選手は要注意です。
ボートが転覆しているということは、大量の水を吸って重たくなっている証拠ですし、モーターなど重要な部分に水が入れば大幅な整備を余儀なくされます。
大幅な整備をして性能が向上する場合もありますが、たいていはパフォーマンスが低下することが多いため、転覆歴がある選手はいつもより評価を少し下げるようにしましょう。
まとめ
競艇は水上で行われる競技です。
そして特にターンマーク付近では少しでもほかの艇よりも先行しようと多くの艇が殺到し、時には接触してしまうほどの接近戦が繰り広げられます。
したがって、いかに百戦錬磨の競艇選手といえど、艇から落ちてしまうこともあるのです。
選手が艇から落ちるケースとしては、ボートがひっくり返ってしまう「転覆」、艇から手を放して音てしまう「落水」、艇そのものが何らかの原因で支持んでしまう「沈没」の3つがありますが、原因としては「転覆」が圧倒的に多いです。
転覆はターンマーク付近などで艇同士が接触してしまうことで発生するケースが多いですが、スピードを出しすぎて旋回時に体重移動が上手くいかなかったり、予期せぬ波が発生し、上手く乗りこなせなかったときなど、接触が発生しなくても転覆してしまうこともたまにあります。
接触事故による転覆の場合、加害者には事故点10が加算されますが、フライングや出遅れといったスタート事故に比べれば罰則は軽いです。
舟券を予想する予定のレースで「転覆歴」がある選手は、パフォーマンスがいつもより落ちてしまっている可能性が高いため注意しましょう。