競輪選手は常に怪我の危険と戦っている!落車事故の危険性や死亡事故についても

競輪選手は常に怪我の危険と戦っている!落車事故の危険性や死亡事故についても

競輪観戦の醍醐味と言えばやはり最終直線手前からの凄まじい競り合いではないでしょうか。
競り合い時には時に自転車同士や選手の体が接触するといった激しいぶつかり合いが発生することもあります。

競輪用の自転車はただでさえタイヤが一般的な自転車の3分の2ほどしかないためバランスを崩しやすいです。

そんな自転車に乗り、時速70キロで時にぶつかり合うような接触が発生するような競輪では、ある意味選手たちは常に怪我の恐怖と戦いながらレースに臨んでいます。

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競輪選手にとって「落車事故」は避けられないアクシデント

競輪選手にとって「落車事故」は避けられないアクシデント

冒頭に触れた通り、競輪選手がレースで使用する自転車はとにかく早く走ることを追求した設計となっています。
早く走るためにはタイヤの設置面積を極限まで少なくすることが必須であり、競輪用自転車のタイヤの太さはたった22ミリしかありません。

一般的な自転車のタイヤの太さが35ミリ前後となっているので、いかに競輪用自転車のタイヤが細いかが数字からも見て取れます。
さらに競輪用自転車にはブレーキがついておらず、危険な状況になったとしてもブレーキをかけて止まったり速度を落とすといった行動が取れません。

そのような条件で時速70キロというスピードの中、競輪では自転車や身体が接触するような競り合いを制さなければ勝てないので、競輪選手にとって落車事故というのはレースに勝利するうえで避けられないアクシデントの一つとなっているのです。

競輪で発生する「落車」とは?発生した際の車券の取り扱いについて解説競輪で発生する「落車」とは?発生した際の車券の取り扱いについて解説

落車事故の発生率は思っているより高い

落車事故の発生率は思っているより高い

競馬のレース中継を見ていても、割と頻繁に落馬事故が発生しているイメージです。
とはいえ、競馬の場合は競走馬が暴れてしまったことによる落馬がほとんどなので、競輪の落車とは比較対象にはあまりならないでしょう。

競輪の落車事故の頻度について調べてみることにしました。
競輪のレース全体の落車事故の発生率はだいたい6パーセントといったところでしょうか。

競輪は毎日少なくとも6会場で開催されるので、1日に72レース実施されています。
72レースの6パーセントですから、だいたい1日に4回ほど落車事故が発生しているという計算になります。
思っている以上に落車事故は発生していると感じるのではないでしょうか。

落車事故は激しいレースになればなるほど発生率は高くなる

落車事故は激しいレースになればなるほど発生率は高くなる

天候以上に落車事故の発生率が劇的に変化するのがレースのグレードです。
落車事故はレースレベルが高くなれば高くなるほど明らかに発生率は上昇していきます。

選手の級別とレースグレードで落車事故の発生率にどれだけの変化が発生するのかを確認していきましょう。

A級選手のレースよりもS級選手のレースのほうが事故率は高い

A級選手のレースとS級選手のレースとで事故率を比較してみたところ、A級選手のレースにおける事故率は約5.6パーセントと平均よりも低い事故率となっていました。
一方でS級選手のレースになると事故率は約9.5パーセントと一気に上昇します。

級別が上がれば上がるほどレースは激しいものとなりますし、選手のパワーやスピードもアップするので、少しの衝突でもバランスを崩して転倒してしまうのでしょう。

レースグレードが上昇すると事故率もアップ

S級選手はG3レース以上のグレードレースにも出場可能です。
重賞レースの事故率はどのようになっているのでしょうか。

グレード 事故率(%)
G3 9.89
G2 12.80
G1 13.01

G2、G1レースは一般戦に比べると極端にレース数が少なく、一度の落車で確率が大きく上昇するので単純に比べられるものではありませんが、それを考慮してもグレードが上がれば上がるほど事故率が上昇しているというのは否めない事実でしょう。

特にとG2、G1レースの事故率は通常レースの2倍以上になっており、この数値は驚異的です。
G2、G1は通常レースとは比べ物にならないほど賞金が高額です。

更にG1レースに優勝すると無条件で年末のグランプリに出場できるほか、翌年のS級S班が確定するなど優勝賞金以上に選手からすれば何としても手に入れたい特典があります。

そのため選手は多少無理してでも千載一遇のチャンスがあれば逃したくないという気持ちになって激しい順位争いとなりやすく、その結果事故率も飛躍的に上昇していくのです。

雨のレースでは落車率もアップ!

雨のレースでは落車率もアップ!

今度はバンクの周長や風の強さ、天候などレースそのものの条件ごとに落車率がどのように変化するのかを見ていくことにしましょう。

バンク周長も風の強さに関しては条件が変わっても事故率は6パーセント前後を推移しているのでこれらの条件が変わることで事故率が上昇することはほぼないでしょう。

その一方で雨の日は落車事故の発生率が高くなっていて、雨以外の日の落車発生率がだいたい6パーセント台なのに対して雨の日の落車率は7パーセントを超えています。

天候 事故率(%)
晴れ 6.38
曇り 6.45
7.12
5.62

雪の時の事故率が晴れの時よりも低いのは驚きですが、これは恐らく雪の日はあまりにも滑りすぎて危険なので、選手たちは着順を度外視して完走するのを最優先にしているからだと考えられます。

落車による怪我は骨折が圧倒的に多い

落車による怪我は骨折が圧倒的に多い

競輪選手の落車による怪我としては骨折が圧倒的に多いです。
競輪ではペダルから足が離れないようにペダルに固定しているので、転倒しても自転車から離れることができず、転倒した際には自転車にぶつかる可能性も高いです。

ペダルと足を括り付けるのは危険ではないかと思ってしまいますが、逆に固定していないと足が外れて転倒する恐れがあるので、極めて早い速度で争う競輪において突然の落車は大事故を引き起こす恐れがあり、かえって危険度が増すのです。

骨折の傾向としては転倒した際にハンドルに身体をぶつけたことによる鎖骨や肋骨を骨折してしまうケースが頻発します。
もちろん、転倒した際にバンクに身体を打ち付けた際に骨折することもあるでしょう。

特に転倒時に頭部をぶつけた時は危険で、いくらヘルメットをしているといっても打ち所が悪ければくも膜下出血など命の危険を伴う外傷を負ってしまうこともあります。

落車時の怪我によっては命を失ってしまうことも…

落車時の怪我によっては命を失ってしまうことも…

落車の際に打ち所によっては命の危険を伴う外傷を負ってしまうことがあると紹介しましたが、長い競輪の歴史においては落車によって選手が命を落としてしまうケースもあります。
本項目では近年発生したレース中の死亡事故を2件紹介します。

2008年9月11日一宮競輪場

2008年9月11日、一宮競輪場ではオールスター競輪が実施されていました。
この日はその初日ということもあり、多くの人が観戦に詰めかけていたのですが、その第7レースにおいて、内田慶選手は第3コーナーを回った際にほかの選手とぶつかり、そのまま落車します。

落車した際に内田選手はうつぶせで吐血して意識を失ったため非常に危険な状態と判断、直ちに医師がかけつけて応急処置を施しましたが、そのまま心肺停止で帰らぬ人となってしまいました。

内田選手は将来を期待されているだけでなく、多くの競輪選手からも愛されている選手であり、葬儀当日に出席した神山雄一郎選手はあまりのショックに崩れ落ちて号泣したそうです。

2012年7月7日小田原競輪場

2012年7月7日、小田原競輪場において坂本照雄選手は走行中前の選手が突如落車したため、それを避けようとコースから外れたのですが、その際に写真判定用のミラーボックスに激しく衝突してしまいました。

かなりのスピードでぶつかってしまったため坂本選手はそのまま意識不明となります。
控えていた医師がすぐにかけつけて先ほどの内田選手の時と同様に医師の処置がおこなわれて病院に緊急搬送されましたが、残念ながら二度と意識を戻すことはありませんでした。
死因は外傷性心肺不全と言われています。

競輪は死亡事故も発生している危険と隣り合わせの競技競輪は死亡事故も発生している危険と隣り合わせの競技

競輪選手が強靭な肉体を作り上げるのは怪我に強い体にするためでもある

競輪選手が強靭な肉体を作り上げるのは怪我に強い体にするためでもある

競輪選手は足だけではなく全身が筋肉で覆われており、初めてその体を見た時は驚く人も多いことでしょう。
競輪選手が体を鍛える最大の理由は他の選手よりも速く自転車を漕ぎ、ひとつでも順位を上げて多くの賞金を獲得するためですが、それだけではなく万が一転倒した際に少しでも身体へのダメージを軽減させるためでもあるのです。

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直近で大怪我を負ってしまった選手

直近で大怪我を負ってしまった選手

ここからは2023年に落車によって大怪我を負ってしまったものの、無事治療が終了してレースに復帰した2名の選手を紹介します。

守澤太志選手

守澤太志選手(引用元:KEIRIN.JP)

守澤選手は2023年8月現在、全競輪選手のうちたった9名しか名乗ることができないS級S班選手の一人です。
G2.G1レースの優勝歴はいまだないものの、圧倒的な安定感で常に賞金ランキング上位に入る活躍を見せていて、2021年、2022年と2年連続S級S班選手として活躍しています。

守澤選手は2022年にグランプリ出場を決めた後のレース後に落車、鎖骨を骨折するという大怪我を負ってしまいますが、懸命の治療とリハビリでグランプリに間に合わせたという根性の持ち主です。

そんな災難に見舞われた守澤選手ですが、2023年5月2日、平塚競輪場で開催された日本選手権において、またも落車してしまい、今度は頸椎を骨折してしまうという惨事に見舞われます。

しかしそれからわずか1か月ほどで復帰、6月13日の高松宮記念競輪には出走するのですから、その回復力は驚くばかりです。

この時のインタビューによると、1週間前までコルセットを装着する生活だったそうで、この時点では骨が完全にくっついてはいなかったそうなのですが、骨が完全にくっつくまでは待っていられないという気持ちで出場を決めたと話していました。

後藤浩二選手

後藤浩二選手(引用元:KEIRIN.JP)

後藤選手は現在54歳でA級3班となっていますが、一時期はS級でレースをしていたこともある実力者でした。
2023年2月、レース中に落車し転倒、意識を失って集中治療室に運ばれ、一時は命の危険もあるほどでしたが奇跡的に復活します。

しかし怪我は肋骨の前側7本と後ろ側の6本骨折という大変なもので、医師からは3か月入院する必要があると言われていたそうですが、後藤選手は3か月も入院していると気が狂いそうになるからと2か月目に退院、その後リハビリと練習をして5月11日に復帰しました。

競輪選手が怪我をしてしまった際の治療費はどうなる?

競輪選手が怪我をしてしまった際の治療費はどうなる?

競輪選手としてレースに出ている以上、怪我は避けられないアクシデントです。
しかし怪我をしてしまうと治療しなければなりませんし、治療している間はレースに出場できません。

レースの賞金が主な収入源である競輪選手にとって怪我をしてしまうと収入は大幅に減少してしまいます。
ここでは怪我をした際の治療費や、治療中の収入面の保証について解説していきます。

プロ野球選手はかなり手厚い補償

プロスポーツ選手と言われて多くの人が真っ先に思い浮かべるのがプロ野球選手ではないでしょうか、プロ野球選手の怪我に関してはかなり手厚い補償となっているそうです。

プロ野球選手の給料は年俸制なので、たとえシーズン中に怪我をして試合に出られなかったとしても、その年の年俸が急に減少するような事はありません(もちろん翌年の年俸には影響しますが)。

治療費そのものに関しても、試合中や練習中の怪我と認められた場合は球団側が負担してくれるケースもありますし、怪我によって障害が残った場合も全額ではありませんが一部補償するという決まりになっています。

プロ野球選手以外のプロ選手の補償は不十分

では競輪選手をはじめ、プロ野球選手以外のプロスポーツ選手が試合や練習中に怪我をした場合はどうなるのでしょうか。
プロ野球選手以外のプロスポーツ選手が怪我をした場合、基本的には運営側や協会などが治療費を負担してくれる事はありません。

例外はあるかもしれませんが、治療費は全額自己負担となります。
この点は労働災害がある一般サラリーマンと比べても補償は不十分だと言わざるを得ません。

そして治療中の収入も、競輪に関しては一切補償されないので、その間の収入はゼロです。
下位クラスの選手が怪我をすると生活費すら怪しくなるので、復帰後はレース以外でもアルバイトなどをして収入を増やさなければなりません。

障害が残った際の補償もないと思われるので、競輪選手にとって怪我は非常にリスクの大きいアクシデントなのです。

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まとめ

競輪は太さ22ミリという極限までタイヤを補足しているうえにブレーキが無い自転車に乗り、時速70キロというスピードを出しながら時には自転車や身体同士をぶつけ合いながら1着になることを目指す競技です。

したがって上位を狙っていくためには落車による怪我は常に覚悟しながらレースに出走しなければなりません。

競輪のレース全体の落車率は約6パーセントとなっており、毎日70レース以上実施される競輪においては毎日4回は落車事故が発生するほどの頻度なので、落車事故はかなり頻繁に発生しているといえるでしょう。

・雨の日
・S級選手のレース
・グレードレース

以上3つの条件だと落車率はさらに上昇する傾向にあり、特にG2レース以上では落車率は10パーセントを超えているのですが、これは選手同士の争いが激しくなっているからに他なりません。

競輪ではペダルに足を固定した状態で乗るので、転倒すると自分の自転車ともぶつかる恐れがあります。
特にハンドルに胸を打ち付けるケースが多く、鎖骨骨折や肋骨の骨折は競輪の怪我の中では最も多いです。

もちろん転倒してバンクに身体をぶつけた際に骨折することもあり、特に顔面を強く打ち付けると場合によっては命を落としてしまうこともあります。

競輪は常に死と隣り合わせの危険な競技であり、競輪選手が全身を鍛えるのはレースに勝つためであると同時に落車した際のダメージを少しでも軽減させるためでもあるのです。