競輪選手同士が喧嘩することはある?殴り合いになりそうになった事例も
競輪選手は常にレースでは真剣勝負をしています。
真剣勝負をする選手同士なので、たまに他の選手を妨害するような走りをしたりすることもあるでしょう。
特にその選手にとって大事なレースで他の選手に進路を塞がれてしまうと感情的になり、レース後などにその選手に対して文句を言いたくなってしまうような状況は必ずあるはずです。
そこで本記事では競輪選手同士で喧嘩することはあるのか、実際に喧嘩が発生した事例はあるのかを検証し、過去に発生した暴動クラスの騒動についても紹介していきます。
競輪選手は試合に勝つことがすべての職業
競輪という世界は弱肉強食の世界です。
レースに勝ち続ければどんどん級班が上昇していって年収がアップしますし、一方でレースで下位順位が続けば級班は下がっていって年収もどんどん低下していきます。
上に上がるためにはレースで上位に入らなればならないので、競輪選手とっては試合に勝つことがすべてであり、試合に勝つために全力を尽くしています。
全力で勝つためには時には非情な手も使わなければならない事もあるでしょう。
そういった部分がぶつかり合うと、喧嘩の発端になってしまう可能性は十分あります。
特にグレードレースではすべてを賭けてレースに臨む
競輪のレースは「グレード制」に分かれていて、グレードが上がればあがるほど得られる競走得点も高くなりますし、賞金も右肩上がりに上昇していきます。
特にG1レースは勝利すれば数千万円クラスの賞金が得られるだけではなく、年末の「KEIRINグランプリ」への出場も確約されます。
KEIRINグランプリの出場が確定されるということはそれと同時に翌年のS級S班も約束されるので、G1レースに勝利するというのは得られる賞金以上にメリットがとても大きいです。
G1レースは出場条件が非常に厳しく、出場するだけでもとても大変なので、G1レースに出場した選手は優勝するために文字通りすべてを賭けてレースに臨んでいます。
競輪における重賞とは?グレードレースの中身を紹介競輪選手同士で喧嘩することはある?
競輪選手は、「ライン」という隊列をレース中に組むことになるので、選手同士の結束力はほかの公営競技と比べると非常に強いです。
仲の良い選手は頻繁にトレーニングを一緒にしたり、情報交換をしたりしますし、レースやトレーニング以外では食事を楽しんだり、キャンプブームとなっている現在では一緒にキャンプに行って楽しんでいる動画をアップしている選手もいたりします。
そんな競輪選手同士が喧嘩をすることはあるのかという問いに関しては、「真剣勝負をしている以上、時には意見のぶつかり合いもある」というのが結論になるでしょう。
競輪選手同士がとても仲が良いのは事実ですが、それと勝負事はまったく別問題です。
自分の思い描いている戦法をほかの選手が目に余るような妨害をしてきた場合は感情的になってしまっても致し方ないのではないでしょうか。
レースの勝敗以前に、競輪は落車によって命を落としてしまう恐れもある競技なので、危険な走り方をした選手に対しては怒りを覚えるのは当然の対応と言えるでしょう。
競輪の規定では暴力に関する罰則はなし
競輪は選手が同じ条件でレースを戦うことができるようにするため、さまざまな規則が定められています。
例えばレース中は携帯電話など外部へ連絡するための機器は一切使用できません。
これは外部の知人などと連絡することにより「八百長試合」が発生することを防止するための措置です。
そのほかにも一般の人からすると「厳しすぎるのでは?」と思ってしまうようなルールがたくさんあります。
では暴力に関するルールが定められているのかというと、競輪の場合、選手が暴力を奮った場合の罰則などは特に定められていません。
もちろん傷害事件と同じようなクラスの誰が見ても「やりすぎ」だと感じるような暴力沙汰となった場合は罰則が設けられますが、それはあくまでも「法律の範囲内」であり、競輪独自の暴力に関するルールは一切ないと言い切ってよいでしょう。
競輪で喧嘩に発展する要因
では競輪競技を実施するうえで選手同士の喧嘩に発展してしまうような要因とはどのようなものが考えられるのでしょうか。
ここでは3つの要因を取り上げましたが、競技中に偶発的に発生するものから、個人的感情によって引き起こされるものまで実に様々です。
競輪選手は2,300名以上在籍していますが、人間の性格というのは一人一人違います。
したがって大げさな言い方をすれば、競輪選手同士が喧嘩に発展する要因を細かく分けると少なくとも2,300通り存在すると言えるでしょう。
危険な走りをされた
競輪のレースでは、特に先頭誘導員がコースから外れ、鐘が鳴らされた瞬間から選手たちは一気に動き出します。
特に最終コーナーを回ってからゴールまでの直線では時に選手たちが密集して身体をぶつけながら走ることも多々あります。
このような故意ではない接触に関しては罰則はありませんが、競輪選手によっては明らかに故意ともとられかねない接触をしたり、時には感情的になって勝敗を度外視したぶつかり合いに発展することもあります。
以上のように落車を招くような危険な走りをされると、やはりカッとなってしまい、喧嘩に発展してしまうというケースは非常に多いです。
問題児的な選手
先ほども触れましたが、2023年時点で2,300名の競輪選手が登録されています。
もちろん厳格なルールを守らなければ競輪選手としてレースに出る事はできないので、定められたルールは全員守っている事は間違いありません。
しかし、学校などでも必ず何人かは居るように、ルール違反スレスレの行為を犯す事が日常茶飯事の「問題児」と呼ばれる人物はどの業界にも一定数存在します。
厳しいルールを遵守している側からすると、そういった問題児の行動は目について仕方ないでしょう。
あまりにも目に余る場合は意見したり注意したりしますが、問題児というのは自分の行動や意見に対して注意を受けるとだいたい逆上します。
結果的にそこから喧嘩へと発展してしまうのです。
また、問題児から見て気に入らない行動をしている選手に対して喧嘩を仕掛けるといったケースもあるでしょう。
選手同士が不仲
最後は個人的な感情論になってしまいますが、人の考えというのは千差万別で、ある人によっては許容範囲の事柄でも別の人からすると決して許す事のできない事柄だったりします。
基本的な考えが相容れない人同士はどうやっても仲良くなる事はできないですし、嫌いな相手だと他の人なら許せる事であっても何故か許せないといった感情に誰もがなってしまうものです。
競輪選手も人間なので、全ての人と平等に接するという事はできません。
生理的に受け付けない相手に不快な事をされるとつい感情的になって喧嘩に発展してしまう…という事も十分あり得ます。
競輪選手同士で喧嘩となった事例
ここからは実際に競輪選手同士で喧嘩に発展してしまったケースを紹介しましょう。
どちらが悪いといった判断はせずに、喧嘩が発生してしまった事例のみ記載する事にします。
諸橋愛選手と木暮安由選手
喧嘩に発展する事例の一つ、「選手同士の不仲」に関してですが、ファンの間で有名なのが、「諸橋選手」と「木暮安由選手」が不仲であるというものです。
事の発端は2017年7月30日のG3レースでした。
レース前に「誰が番手につくか」という話し合いをした際に諸橋選手は吉田選手にすると主張したものの、木暮選手は「いくら先輩でもここは譲れない」として自分が番手につくと反論しました。
双方の主張が相容れずにレース本番を迎えた結果ラインは崩壊、このレースに勝利出来なかった事をきっかけに両名は不仲の関係になってしまいました。
しかし後にトップ選手の1人である佐藤慎太郎選手の仲介によって両者は和解、実際レースではしっかりとラインを組んでレースを走る姿も見せています。
【豊橋便り】SPR賞の関東3車は平原康多ー諸橋愛ー木暮安由で“まとまる”。3人が関東ラインを大事に、で一致した。平原は「競輪界の一つの奇跡でしょう」と喜び、木暮は「自分も変化しないと。ライン大事!」。諸橋の「時が経ち過ぎてるよと木暮には言ったんだよ」と話した後の笑顔が印象的だった。 pic.twitter.com/4miz9okZ3E
— 東スポ 競輪班 (@tokyosportsmid) May 30, 2020
中山拓人選手と高本和也選手
続いて2022年12月3日の出来事、とあるレースの決勝メンバーが発表され、その中に同期である中山拓人選手と高本和也選手が出場することになっていました。
レース前のインタビューにおいて、まずは中山選手が、同期で学校では同じ部屋だった高本選手への感謝を伝えると共に、初対決は緊張するが楽しみである事、そして自分が主導権を握りたいと意気込みを話しました。
それを受けて高本選手は、「中山選手には色々と良くしてあげたよな。借りがあるからオレに先行させろよ」といったニュアンスのコメントを返しましたが、中山選手もそこは譲らないと拒否、これは一触即発かと思われましたが、このやり取りは気心が知れているからこそできるやり取りであり、写真撮影の際には格闘技の会見でよく見られる、お互いが拳を交わし合うようなポーズでの撮影となりました。
(引用元:トリマクリ!Keirin NAVI)
ところがこれが一部で曲解され、「両選手殴り合い寸前の喧嘩に発展」といった情報が一部で流れたようです。
ファン同士では暴動まがいの喧嘩が勃発したことも
以上のように競輪選手同士はどちらかと言うとお互いにリスペクトしているので、殴り合いの喧嘩に発展するような事は滅多にありません。
それよりもレース結果等を巡ってファン同士がエキサイトし、暴動に近いような大喧嘩に発展するケースが過去に何度かありました。
鳴尾事件
競輪関連の暴動で最も有名なのが「鳴尾事件」です。
この事件は1950年9月9日に当時存在していた鳴尾競輪場で発生しました。
この日の第11レース、とある選手がピンが緩んでいるのでレースをやり直したいと審判に申し出ます。
そして自らコースを離れ、ピンを締めなおした後、あろう事かそのままレースに復帰しました。
コースを離れた時点で観客からは怒号が飛んでいたのですが、レースはそのまま続行されてしまい、レース自体も成立となりました。
これを不服とした一部のファンが結果が出る前から走路に進入し、警察官と揉めるという一幕がありました。
更に選手に責任を押し付けてレースの成立を強行させた運営の判断によって観客の我慢は限界に達し、数百名のファンが走路に進入、ガソリンを放火したり車のガラスを割る、果ては金庫に侵入して現金を強奪しようとするものまで現れるなど、現場は大混乱となりました。
この日は1万人の観客が詰めかけていたのですが、そのうち半数が暴徒化しています。
松戸事件
松戸競輪場でも暴動まがいの事件が過去に2度発生しています。
1度目は1959年6月23日で、第5レースの着順判定があまりにも不自然であり、「八百長疑惑」があるとして暴徒化、更にこの時、一部の客に「車代」として金銭を渡していた事も発覚しました。
2度目は1979年6月11日、今度は1着の選手がゴール後に失格となってしまった事を受けて18,000人の観客が着順を巡って騒ぎ出します。
そしてこのうち数百名が場内に投石したり放火するなど暴徒化し、最終的には8名の逮捕者が出るという騒ぎになってしまいました。
まとめ
競輪は勝たなければ上には上がれないため、全ての選手が勝つ為に全力を尽くしています。
そのためレースが絡むとつい感情的になり、喧嘩に発展してしまう事もあります。
・ルールをあまり守らないなど問題児的な行動や発言が目立つ
・性格が根本的に合わず不仲な関係である
上記のようなことが喧嘩に発展してしまう主な要因として挙げられますが、殴り合いの喧嘩になるようなケースはほとんどありません。
それよりもむしろ観客がレース結果などを不服と感じ、エキサイトして暴動を起こす事の方が多く、過去には逮捕者が出るような事件が何度か発生しています。