コロナ禍に実施されていた5車立てレースについて考察してみた

コロナ禍に実施されていた「5車立て」レースについて考察してみた

コロナ禍、特にロックダウン時や緊急事態宣言時には多くの店舗が休業を余儀なくされ、売上げを大幅に下げていました。

ところが競輪をはじめ公営競技の場合は「巣ごもり需要」が増えたことによって逆に売り上げを伸ばしていて、それが現在の堅調な売り上げ増加につながっていることは間違いありません。
本記事ではそんなコロナ禍に実施されていた「5車立て」レースについて考察していきます。

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5車立てレースとはどのようなレース?

5車立てレースとはどのようなレース?

5車立てレースとは
文字通り「5名で実施されるレース」の事を指します。

競輪のレースは本来7名で行われる「7車立て」と9名で行われる「9車立て」の2パターンしかないのですが、2019年中旬あたりから2021年後半ごろまで実施されていた「無観客試合」の時にはレースによってはこの「5車立て」による試合が実行されていたのです。

5車立てレースが実施された背景

5車立てレースが実施された背景

5車立てレースが実施された背景には競輪を運営する側が取り決めた施策があります。

新型コロナウィルスがまだ恐れられていた時期、競輪の運営にあたっては「新型コロナウイルス感染拡大のリスク回避のため、2月17日を初日とする開催から3月末までの競輪開催については、『追加・流用・補充のあっせんを行わない』『不足する選手は欠車とし、状況により繰上げ充当を行わない措置やレースカットも併せ実施する』」という施策が事項されました。

通常、何らかの理由でレースに出走する予定の選手が欠場となった場合、通常ならば追加で船首を補充して7名または9名になるように調整しています。

ところが別の場所から急に選手を呼び込むということはその選手が外部からウィルスを持ってくる可能性があり、感染拡大に繋がる恐れがあると判断したことから、欠場選手が出てレースの人員が足りなくなったとしても選手の補充をせず、そのままレースを続行するよう指示が出されたのです。

これまでは「5車立て」のレースなどほぼあり得なかった

これまでは「5車立て」のレースなどほぼあり得なかった

通常欠員が出てさらに補充もできない場合、1名程度ならばレースを続行しますが、2名欠員となるとだいたいそのレースをカットしたり別の日に変更するといった措置をとります。

そのため5車立てのレースなどということはこれまでは考えられないようなレースですし、多くの競輪ファンが5車立てのレースが実施されるなどということは予想だにしなかったことでしょう。
コロナ禍ではこのありえないレースが普通に実施されていた、ということになります。

コロナ禍においては1人の選手が感染によって欠場すると、その選手と話したことがあったり同じ環境で練習している選手など接触したことが疑わしい選手全員が欠場するので、かなりの人数の選手が欠場してしまうといった事態になることも多々ありました。

本来ならば欠員が出れば延期または中止としたいところなのですが、コロナ禍でそういった処置をしているとまともに興行ができず、売り上げが下がるどころか赤字になってしまう可能性があります。

さきほどの施策の文章の中に「不足する選手は欠車とし、状況により繰上げ充当を行わない措置」と書かれてあります。

つまり7車立てで2名選手が欠場し、5車立てになったとしても繰り上げやレースカットをせずにそのままレースを施行しても構わないと書いているようなものです。

運営する側からすればたとえ選手の人数が不足していてもレースを施行すれば車券が売れるのでその分確実に売り上げは増えます。

そういった背景から、5車立てであってもレースを実施するというある意味暴挙ともとれる行為が行われたのです。

そしてもうひとつ、選手の斡旋本数も5車立てレースを強行せざるを得なかった理由のひとつです。
競輪では各選手の級別というランクが設けられています。

このランクは半期ごとに見直しが行われて昇級したり降級したりするのですが、この昇級や降級となる条件が「競走得点」と「斡旋本数」です。

選手の人数が足りないからといってどんどんレースをカットしていると多くの選手の斡旋本数が足りなくなり、理不尽な降級が相次ぐといった事態になります。

そうなる事を防ぐため、5車立てであってもレースを強行していたというわけです。
しかしながらこの件に関しては何らかの措置を取ることで何とか回避できたのではないかと思ってしまいます。

5車立ての特徴

5車立ての特徴

5車立てのレースは競輪ファンから「7車立てや9車立てとはまったく別物」「競輪じゃなくて競艇の世界だ」というように、通常のレースとは大きく異なる特徴をもっています。
5車立てのレースとはどういった特徴を持っていたのかを整理していくことにしましょう。

ライン決着になる可能性が非常に高い

5車立てではラインによる決着となったレースの比率が非常に高くなっていました。
S級、A級、チャレンジレースとすべてのパターンのレースでライン決着が50%以上になるというデータが出ています。

特に前を確保できたラインがそのままレースのペースを握ってしまうケースがとても多く、スタートして最初のコーナーでの着順でほぼレースが決まってしまうといっても過言ではない状況でした。

これは第1ターンマークでの着順でほぼレースが決まってしまう「競艇」と相通ずるものがあります。
「5車立ての競輪は競輪ではなく競艇だ」というのはいい得て妙といえるでしょう。

レース中の競り合いはほとんど発生しない

ライン決着が多いということは、レース途中での競り合いはほとんど発生しないということの裏返しになります。

競輪ではレース終盤までにしばしば番手を狙って選手が競り合ったり、先行を狙ったりするのですが、5車立ての場合、先行選手は最悪でも4番手で走ることができます。

4番手というのは通常のレースで考えれば7車立てならば真ん中の位置、9車立てならば上位の位置で走っていることになります。

4番手ならば無理して前に行こうとしなくても、先行が得意な選手の豊富なスタミナであれば余裕で最終周でまくりを決めることができるでしょう。

こういった状況なので、前を行くラインと競り合うと無駄に体力を失うことになります。
無理に競り合わなくても追い抜けるような位置で走れるのであれば、競り合うことはデメリットしかありません。

しかし、競り合いが発生しなければ結果として前を行くラインは体力を温存して自分達の自由なペースで走ることができます。

結果的に先に前を走ったラインの選手による決着が7車立てや9車立てよりも圧倒的に増えるというわけです。

レース予想は非常にしやすい

5車立て全体の傾向として、レース予想は非常にしやすいです。
レース中盤などでの競り合いがないということはレース自体に波乱が発生する可能性が非常に低いということになります。

各選手が自分の力を温存してレースを進められるので、単純に能力の高い選手がそのまま勝利するといった傾向が非常に強いです。
ガールズケイリンのような個人戦になると考えておけばよいでしょう。

5車立てでは実質配当金はどれくらいになっている?

5車立てでは実質配当金はどれくらいになっている?

5車立てでは配当金がどれくらいになっているのかを確認していきます。
もっとも平均配当が高額となっている3連単で9車立てと5車立ての平均配当を各クラスごとに比較していくと、S級クラスでは平均配当約1,830円、A級上位クラスでは約2,602円、A旧チャレンジレースでは約1,490円という結果でした。

競輪の3連単の平均配当は、7車立ては約13,800円、9車立ては約31,300円なので、5車立ての平均配当はこれらよりも遥かに劣るという結果になりました。

もっとも5車立てを実施していたのはごくわずかな期間であるため、データ数としては不足だという声もあるかもしれませんが、5車立てのレースを積み重ねたとしても、7車立てに匹敵するような平均配当には決してならないでしょう。

総じて5車立てのレースでは波乱決着は望めず、大きな配当を得たいのであれば買うべきではないという結論に至りました。

5車立てに関しては批判的な意見が多かった

5車立てに関しては批判的な意見が多かった

5車立ての車券を実際に購入していたファンからの評判はどうだったのでしょうか。
結論から言えばどちらかといえば批判的な意見が多かったというのが実情です。

競輪のレースを見ているうえでもっとも楽しいのは「ライン争いでの駆け引き」ではないでしょうか。
少しでも有利な位置に行こうと番手を狙う選手と今のポジションを保持しようとする選手の競り合いを見ていると、レース展開がどうなるのかとワクワクします。

しかし5車立てではこのような競り合いはほとんど起こらず、終盤まではほとんどレースが動くことはありません。

普段の競輪のレースを見慣れている目の肥えた競輪ファンからすると、5車立てレースは実に味気ない、つまらないものになってしまいます。
競輪ファンのなかには「5車立てのレースは車券を買わない」という意見を述べる人もいたほどでした。

また、平均配当を見ても分かる通り大きな利益はほぼ見込めません。
3連単がもっとも売れているのは、爆発力があるからにほかなりません。

その3連単ですら平均配当が数千円クラスになってしまうわけですから、競輪ファンが5車立ての車券を買わないと宣言するのも無理ないといえるでしょう。

5車立てでワイド車券は成立していたの?

5車立てでワイド車券は成立していたの?

ワイドとは1着から3着までに入る2名の選手を当てる車券ですが、5車立てのレースでこのワイドは成立するのでしょうか。

結論から言えば、たとえ5車立てであってもルール変更はなかったため、ワイド車年は成立していました。
5名で3位以内の2名を当てるという車券になるわけですから、的中率は非常に高くなっていたことでしょう。

しかし5車立てレースは性質上堅い決着になる可能性が非常に高いので、元々平均配当が低いワイドだと的中してもほとんど儲けはでなかったのではないでしょうか。

再び5車立てを実施せざるを得ない状況にならないとは限らない

再び5車立てを実施せざるを得ない状況にならないとは限らない

2023年3月時点、コロナウィルスに関しての制限は大幅に緩和され、3月13日以降は基本的にマスク着用の義務化はなくなり、コロナ禍前の日常生活をほぼ取り戻しました。

しかしこれはただ単にコロナウィルスが私たちにとって脅威ではなくなっただけであり、また私たちの知らないウィルスが外国から日本に持ち込まれ、一気に広まる可能性は十分あります。

特にこれからの日本はインバウンドに頼らざるを得ないことは確実で、外国人の出入りはこれまで以上に激しくなるでしょう。

したがってもう未来永劫5車立てレースを実施することはない、とか必ずしも言い切れないのです。
その事を踏まえると、5車立てのレースの特性に関しては頭の片隅にでも留めておいたほうがよいのかもしれません。

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まとめ

本記事ではコロナ禍で実施していた競輪の5車立てについて考察しました。
5車立てレースは後方からのスタートでも通常の7車立てや9車立てであれば十分勝てるポジションであるため、後方の選手が無理に前に行こうとはしません。

すると前を走る選手もスタミナを失わずに自分のペースで走ることができるので、結果として前を行くラインを形成している選手内でレースが決着することがほとんどです。

レース中の駆け引きも生まれず、高額配当も出ない5車立ては総じて競輪ファンからは評判がよくありませんでした。
しかしながら、今後一切5車立てが開催されることはないという保証は何処にもありません。

大きくは稼げませんが、逆に言えばコツコツ利益を積み重ねるのであれば5車立てはかなりおすすめのレースであるため、その特徴や傾向はしっかりと覚えておいて損はないといえるでしょう。