競輪の最高ランク「S級班」について詳しく解説!なり方・特典などについて

競輪S級

現役競輪選手で最強は誰?という話になった時に全員が1名の選手の名前を挙げるという事はなかなかないでしょう。

しかしながら「S級S班」にランク付けされている選手はこの現役最強に最も近い存在である事は間違いありません。
本記事ではS級S班について詳しく解説していきます。

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競輪は選手ごとにランク付けされている

競輪のランク(引用元:オッズパーク)

競輪選手は全部で2,000人以上居ます。全員を覚える事はほぼ不可能ですし、何の情報もない状態だと競輪初心者からするとどの選手がどれくらいの実力があるのか全く分かりません。

また、レースに出走する選手を決める際も何かしら選手の強さを判別できるものがないと選手の実力差が大きいレースばかりになってしまう恐れがあります。

公平な条件でレースが行えるように競輪選手は一人一人ランクづけされていて、このランクを見ると競輪初心者でもその選手の実力がある程度分かるようになっています。
競輪選手のランクはA級3班からスタートします。

A級は1班まであり、A級1班で一定以上の成績であればS級2班に昇格、更に好成績であればS級1班に昇格します。

ちなみに女性選手は全員「L級」というガールズ競輪独自のランクになっており、成績でランクが上下する事はありません。

S級S班は全選手のなかでわずか9名のみ

競輪S級S班 S級S班は全選手のなかでわずか9名のみ(引用元:youtube)

そして今回紹介するS級S班はS級1班よりもうひとつ上のランクに位置することになります。
2023年現在、S級S班を名乗れるのは2,000名居る男性競輪選手のうちたった9名です。
S級S班は正に選ばれしトップ選手達だけが名乗れる称号であると言えるでしょう。

S級S班の特典

S級S班の特典

S級S班自体栄誉ある称号なのですが、それ以外にも実は9名にのみ許された特典があるのです。

無条件でG1とG2レースに出場可能

競輪のレースも「グレード」というランク分けがなされており、ランクが高いレースには出場条件が設けられています。

特にG2レースとG1レースは条件が厳しいのですが、S級S班選手は無条件で出場可能という特典があります。
これは賞金を加算する上で非常に大きなメリットであると言えるでしょう。

S級レースにシード出場できる

そしてグレードのないS級の一般レースでは「シード権」が与えられます。
競輪のレースは予選はトーナメント制になっていて勝ち上がらなければ決勝に進む事はできません。
S級S班選手は最初の予選は自動的に勝ち上がりとなり、2日目のレースから出走する事になります。

専用ユニフォームを着用できる

競輪レーサーパンツ(引用元:競輪ガイド)

これは選手自身が有利になるという訳ではないのですが、S級S班には専用ユニフォームがあります。

通常S級選手のユニフォームは黒字に赤いラインなのですが、S級S班の選手は「赤パン」と呼ばれる赤地に黒いラインが入ったユニフォームを着用します。
このユニフォームを着用する事が全競輪選手の目標のひとつとなっている事は間違いないでしょう。

S級S班になるには「グランプリ出場」が絶対条件

競輪グランプリ2022(引用元:けいりんマルシェ)

以上のようにS級S班選手は他のクラスの選手よりもかなり優遇された状態で年間通してレースに出走できます。

しかも通常は半年毎にクラスの更新があるのですがS級S班だけは次のKEIRINグランプリ前まではどれだけ成績が悪くてもランクが下がる事はありません。

しかしながらS級S班になるためには非常に厳しい条件をクリアしなければなりません。
その条件とはたったひとつ、「KEIRINグランプリに出場する事」です。

KEIRINグランプリはトーナメント戦ではなく一発勝負のレースであり、出走できるのは9名のみで、その9名がそのまま翌年S級S班選手となります。
KEIRINグランプリに出場する資格を得るための条件は以下のようになっています。

G1レースを優勝する

ひとつ目の条件は「G1レース優勝」です。
対象レースは、以下6レースです。

対象レース一覧
・読売新聞社杯全日本選抜競輪
・日本選手権競輪
・高松宮記念杯競輪
・寛仁親王牌・世界選手権記念トーナメント
・オールスター競輪
・朝日新聞社杯競輪祭

これらのどれかひとつだけでも優勝すれば無条件でKEIRINグランプリへの出場権を獲得、S級S班になる事ができます。

G1さえ優勝すれば後は成績が散々でもKEIRINグランプリに出場できるならかなり緩い条件だと感じるかもしれません。

しかし、そもそもG1レースに出場すること自体厳しい条件をクリアしなければならないので常に必死にレースを戦わなければならないです。

また、G1レースは何が何でも勝ちたいと全選手が思っているので一般戦とは比べ物にならないほど激しい戦いを勝ち抜いて優勝しなければならないため、その年トップクラスの強さを維持していなければG1レース優勝という条件を達成することは難しいでしょう。

その年の獲得賞金上位になる

G1レースは全部で6レースです。
KEIRINグランプリは9名で開催されるレースなので3名足りません。

残りの3名はどうやって選ばれるのかというと、まず「賞金ランキング上位の選手」が選ばれます。
とはいえ、G1レースは一般戦とは比べ物にならないほど優勝賞金が高いのでG1レースを勝った選手というのは自動的に賞金ランキング上位に食い込みます。

それ以外のだいたい10位以内の中でG1レースを優勝していない選手が条件をクリアすることが多いですが、G1レースといかないまでも重賞レースを優勝またはそれに準ずる成績を複数獲得しなければ条件を満たすことは難しいでしょう。

選考委員会に認められた選手

3つ目は自転車競技で類まれなる成績を上げて選考委員会にKEIRINグランプリ出場を認められた選手です。

しかしながらこの条件のみで選ばれるケースというのは極めて少ないというのが現状で、自転車競技で好成績を上げる選手というのは競輪でも強い走りをすることが多く、選考委員会推薦の条件が無くてもG1レースを買ったり賞金ランキング上位に入る事も多いですし、自転車競技のみに専念して選考委員会推薦でKEIRINグランプリに出場するというのはオリンピックで金メダルを獲るくらいの活躍をする必要があるでしょう。

この条件に関してはないと思ってしまっても問題ないです。

2023年S級S班となる選手

2023年S級S班となる選手

2022年のKEIRINグランプリに出場した9名の選手は自動的に23年度のS級S班選手になる事が決定しています。
本項目ではその9選手を簡単ではありますが紹介しましょう。

古性優作

古性優作選手(引用元:KEIRIN.JP)

古性選手は大阪支部の選手で、競輪選手になる前にはBMXで全日本選手権を3連覇するという実績を持っていました。

デビュー戦で勝利しただけではなくデビューレースの節で全勝、いきなり完全優勝するという鮮烈なデビューを飾ります。

その後2021年にG1レースを初制覇、KERINグランプリへの出場を決めるとその勢いのまま1着でゴール、初のグランプリ制覇を果たすと共にその年の賞金王のタイトルも獲得しました。

郡司浩平

郡司浩平選手(引用元:KEIRIN.JP)

郡司選手は神奈川支部所属でお父さんは元競輪選手でしたが、学生時代は自転車には全く興味がなく野球に明け暮れていました。
小学生の時に全日本リトルリーグで優勝、高校は甲子園の常連校横浜商業野球部に入部します。

その中でレギュラーを獲得するものの、夏の大会予選ベスト8で敗退、甲子園出場が叶わなくなっただけではなく将来の道も閉ざされてしまいました。

そこでお父さんが競輪選手だった事を思い出し、競輪選手を目指す事を決意します。
KEIRINグランプリには2019年に獲得賞金上位で初出場、以降2022年まで4年連続出場を決めています。

新山響平

新山響平選手(引用元:KEIRIN.JP)

新山選手は青森支部所属で、学生時代から自転車部に所属し、アジア選手権大会優勝の実績を持っていました。

高校卒業後は日本大学に進学しますが中退して競輪学校に入学、デビュー戦で初勝利を上げたのち、年末には3場所完全優勝という離れ業をやってのけます。

この成績が高く評価され、新山選手はなんとデビュー2年目で早くもS級へと昇格しました。
更に2016年7月26日、デビューから387日でG3レースに優勝するという新記録を達成、翌2017年にS級1班に昇格します。

それまで競輪選手と自転車競技選手の二足の草鞋を履いていましたが、2022年にナショナルチームを引退して競輪に専念する事を決意しました。

そしてグランプリ最後の出場者を決める「競輪祭」において圧倒的な強さで優勝、自身初となるグランプリ出場となりました。

守澤太志

守澤太志選手(引用元:KEIRIN.JP)

守澤選手は秋田県出身で青森支部所属です。
中学生までアルペンスキーをしていましたが大曲農業高校に入学後、アマチュア自転車部に入部、高校疎通業後は明治大学に入学するも中退して自転車学校へ入学、2009年7月18日青森競輪場でデビューしました。

その後2016年6月久留米競輪場での記念競輪でG3レースを初優勝、2020年には賞金ランキングで9位となってKEIRINグランプリに初出場、2021年もG3レースで優勝するなど好調をキープして賞金ランキング8位となり、2年連続でグランプリ出場を決めています。

実は直前のレースで落車して鎖骨を骨折してしまったのですが、手術と懸命なリハビリによって驚異的な回復力を見せ、レースに出場しています。

2022年も重賞レースに勝利こそしていないものの賞金ランキングで5位に入り、3年連続でグランプリ出場となりました。

松浦悠士

松浦悠士選手(引用元:KEIRIN.JP)

松浦選手は広島支部所属の選手です。
学生時代は水泳に打ち込んでいて高校は広島工業高校に入学、しかし水泳部がなかったため、自転車競技部に入部します。

つまり本格的に自転車競技を始めたのは高校に入ってからですが、インターハイ8位、国体7位という優秀な成績を記録、その後競輪学校に入学して2010年7月13日熊本競輪場でデビューしました。

デビュー戦は1着、3着、2着と上々の成績でまとめて以降も好成績を機―欧して順調に昇格、2016年にG1レース初出場を決めると2019年の競輪祭でG1レースを初優勝し、KEIRINグランプリ初出場を決め、自身初のS級S班に昇格しています。

翌2020年にオールスター競輪、2021年には日本選手権と連続でG1レースを優勝しておりグランプリレースに出場、2022年もG1レース勝利とはならなかったものの獲得賞金第2位となって3年連続のグランプリ出場を決めています。

平原康多

平原康多選手(引用元:KEIRIN.JP)

平原選手は埼玉支部の選手ですが、14歳まで新潟県の岩村村で育ちました。
中学3年生の時に埼玉県に移住すると、その当時競輪選手だったお父さんの影響を受けて高校生の時に自転車競技部に入部、国際大会の出場も経験しています。

競輪学校在学時に最も将来性があると評価されており、2002年8月5日にデビューするとそのデビュー戦で勝利、期待に違わぬ活躍を見せました。

2006年以降から重賞レースの常連選手となり、G2レースふるさとダービーを優勝、G1レース全日本選抜でも3着に入ると2008年に創設されたS級S班のメンバーに選出されます(当時は18名)。

翌2009年高松宮記念杯でG1レース初制覇を達成、11月の競輪祭でも優勝して同年でG1レース2勝という好成績で終えました。

2011年、2012年はS級S班から陥落してしまいましたが2014年にS級S班に復帰した後は毎年グランプリに出場、S級S班を維持し続けています。

新田祐大

新田祐大選手(引用元:KEIRIN.JP)

新田選手は福島支部所属で、高校生の頃より自転車競技では一線級の活躍を見せていました。
それ以降も日本の自転車競技をけん引する存在として活躍を続け、2022年の東京オリンピックにも出場しましたが、この年をもって代表から引退することを決意、以降は後進の教育に専念することとなります。

競輪選手としては自転車学校に技能試験免除という形で入学するも在学中は全く振るわず全体の56位という成績で卒業しました。

しかしレースでは自転車学校での成績が信じられないような活躍を見せてどんどんクラスを上げていき、2011年にはS級S班に昇格、すぐにG1レース初制覇を果たします。

その後も自転車競技と並行しつつトップ選手として恥じない活躍を見せ、2022年には全G1レースを制覇、史上4人目のグランドスラムを達成しました。

佐藤慎太郎

佐藤慎太郎選手(引用元:KEIRIN.JP)

佐藤選手は福島支部の選手で2度目の受験で競輪学校に入学、プロデビューしてしばらくは先行選手として実績を積み上げていきましたがS級になってから頭打ちとなったのを機に追い込みへ転向、その後大怪我を負って長期スランプに陥るといった試練もありましたが地道なトレーニングで乗り越え、2011年に初めてS級S班に昇格、そして2019年に13年ぶりにKEIRINグランプリに出場するとその勢いを維持して初優勝を飾りました。

2023年1月現在46歳とベテランの域に達していますが未だに第一線で活躍しているというのは驚異的です。

脇本雄太

脇本雄太選手(引用元:KEIRIN.JP)

2022年のKEIRINグランプリを制した脇本選手は福井支部所属で、学生時代既に国体で優勝経験がありました。
高校卒業後に競輪学校へ入学、2008年7月12日にデビューしてそのまま初勝利も経験します。

その後も重賞レースで活躍はするものの、自転車競技選手としてもレースに出場している事もあってか優勝には一歩届かない年が続いていました。
2018年8月のオールスター競輪でついにG1レース初制覇を遂げます。

実に14回目の挑戦でのタイトル獲得で、これはグレード制が導入されてから最多記録となっています。
2019年にはG1レースで完全優勝を達成、2020年にも高松宮記念杯で同じく完全優勝を成し遂げますが、翌2021年は東京オリンピックのレースに専念するため競輪のレースは欠場します。

東京オリンピックへの出場をもって自転車競技選手としては引退し、競輪に専念する事となりますが、連戦の疲れによる腰痛発症と疲労骨折により2022年2月まで休養を余儀なくされました。

しかし復帰後は3つしか出場できなかったG1レースのうち2つに勝利、通算勝率8割9厘という異次元の強さでグランプリに進出、そのままグランプリも制覇して公営競技では初となる年間獲得賞金3億円超えを達成しています。

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まとめ

競輪は選手の強さが一目でわかるように、またレースを公平に組みやすいように各選手にランクが設定されています。

ランクはA級3班からスタートし、一定以上の成績を上げればA級2班に昇格、A級は1班まであってA級1班で一定以上の成績を上げるとS級に昇格します。

S級は2班、1班に分けられていますが、その上にS級S班という最上級クラスがあります。
S級S班になるにはKEIRINグランプリ出場が絶対条件であり、その条件を満たすためにはG1レースを優勝するか賞金ランキング上位に入る必要があり、非常に厳しい条件となっています。

しかしS級S班になるとG1レースやG2レースなど重賞レースに無条件で出場できるうえにS級レースにはシード権が与えられるという特典を1年間受けながら戦えるので非常に有利ではありますが、この特典を受けることができるのは激しい戦いを勝ち抜いた選ばれし9名だけです。