競輪のレース中における「頭突き制裁」が話題に!その経緯と競輪の反則行為を紹介
競輪最大の醍醐味といえば、鐘が突かれてからの攻防ではないでしょうか。
それまでは互いを牽制しつつ自分にとって有利なポジションをキープしようと走っていますが、鐘が突かれた瞬間、各選手は一気に全力疾走をはじめます。
それからの攻防は正に息をつく暇もないほど目まぐるしく全選手が動きます。
しかし何をしても良いというわけではありません。
競輪には厳格なルールがあり、そのルールに違反する行為をしたと認められれば大きなペナルティを課せられる事になります。
本記事では一時期ネット上で話題となった「頭突き事件」を中心に、競輪の反則行為について解説していきます。
競輪は激しい競り合いも魅力のひとつ
繰り返しになりますが、競輪最大の魅力は最終周回になってからの激流のような激しい競り合いです。
それまで牽制しあっていた選手達が一気に1着を目指して常人の域を超えた速度で自転車を漕ぎます。
時にはライバル選手を押しのけながら前に出る事もあるなど、文字通り「身体と身体のぶつかり合い」を耐え凌いで誰よりも早く先頭に立った選手が勝利を手にするのです。
しかし度を越えた競り合いをすると違反と見なされることも…
最終周回になると各選手は自分のポジションを死守しながら最短距離を走行するため「密集状態」になります。
走っていて他の選手と接触する程度の事であれば許容範囲ですが、明らかに故意に接触していたり、危険な走り方をしているとルール違反とみなされてしまう事もあります
2022年オールスター競輪での「頭突き行為」が話題に
実はとあるレースの反則行為について、ネット上で多くの競輪ファンから大きな批判を浴びる事となったレースがあります。
具体的に何があったかを説明すると、なんとレース中にとある選手が別の選手に頭突きを敢行、その結果落車してしまったという事件が発生したのです。
頭突きに至った経緯について
誰がどのレースで誰に頭突きをしたのかについてですが、頭突きをしたのは阿竹智史選手で、頭突きをしたレースは2022年8月11日に西武園競輪場で実施された「オールスター競輪」です。
最終直線で横に並んだ犬伏湧也選手に対して頭突きを行い、頭突きを食らった犬伏選手は落車し、それに巻き込まれた鈴木竜士選手も落車してしまいました。
巻き込まれた鈴木選手は6着に、頭突きを食らって落車した犬伏選手は8着、そして阿竹選手は反則行為とみなされて失格となっています。
頭突きの瞬間をとらえた動画のリンク先を貼っておくので見てもらうと分かると思いますが、黄色のユニフォームの阿竹選手が明らかにわざと隣の赤いユニフォーム犬伏選手へ頭突きをしているのが分かります。
犬伏選手はまさか頭突きが来るとは予想だにしなかったでしょうから、この落車事故はかなり危険なものであると言って間違いありません。
阿竹選手が失格となるのも当然といえるでしょう。
オールスター競輪は競輪のレースのなかでも最高位ランクであるG1レースのひとつです。
G1レースは2022年時点では年間6レースしか実施されておらず、選出されるだけでも選手にとってはとても栄誉ある事な上に、「オールスター競輪」はファンからの人気投票によって出場選手が決まります。
人気と実力を兼ね備えていなければ出場できないということもあって、G1レースのなかでも更に特別なレースであるという扱いになっています。
そのような格式高いレースで悪質な頭突き行為をしてしまったというのは阿竹選手自身にとても深い傷を残してしまったに違いありません。
なぜこのような行為を実行してしまったのでしょうか。
2名は同じラインを組んでいた
実は阿竹選手と犬伏選手は師匠と弟子という関係であり、このレースで阿竹選手と犬伏選手は同じラインで走っていました。
ちなみにラインについて説明すると、ラインとは競輪のレーススタートから終盤(鐘がつかれるまで)の間組まれる隊列のことで、競輪は個人戦でありながらレース序盤から終盤まではラインによるチーム戦が繰り広げられるというのがほかの公営競技との大きな違いであり、競輪の大きな魅力のひとつとなっています。
ラインが崩れてしまった事による制裁?
2名の選手について調べてみると犬伏選手は「逃げ・まくり」が得意な選手で、阿竹選手は「自在」となってはいましたが決まり手を見るとほぼ「追い込み」となっていたことから、後方から一気に前を抜き去る戦法が得意な選手と見てよさそうです。
ラインを組む際は当然逃げまくりが得意な犬伏選手が前を走り、その後ろを阿竹選手が追走するといった隊列となっていました。
そして鐘が突かれて最後の争いとなった際、犬伏選手と阿竹選手は中段あたりを走っており、犬伏選手は当然まくりを決めようと早々にスパートをかけます。
本来ならば阿竹選手もこのまくりに追走するのがベストなのですが、阿竹選手は犬伏選手のスパートについていくことができずにラインが「千切れる」形となってしまったのです。
その後、犬伏選手はまくりを決めることができず徐々に下がってしまいました。
下がってしまったということはスタミナが切れてしまったと想定できるので、恐らく犬伏選手がスパートをかけるタイミングが早すぎたのでしょう。
阿竹選手は千切られたのではなく、「今付いていってもスタミナがもたない」と判断してわざとスパートをかけなかった可能性があります。
そしてスタミナ切れで徐々に下がってしまった犬伏選手に追いついた瞬間、阿竹選手は頭突きをかまし、落車事故になってしまったのではないかと推測されます。
これらの事を踏まえると、阿竹選手の頭突きは「弟子の犬伏選手が仕掛けどころを間違えた結果ラインが崩れてしまったことに対する制裁」の意味を込めた行為であるといえるでしょう。
当然制裁とはいえ、時速70キロ近く出ている自転車を故意に転倒させるような事は断じて認められません。
失格になってしまうのも当たり前です。
この行為を見ていたファンからの反応について
この行為に対して競輪ファンはすぐにTwitterなどに自分の意見をツイートしているのですが、
「あの頭突きは要らない」「見てて不快」「師匠が弟子に千切られた腹いせに頭突きはアカン」「阿竹はA級チャレンジからやり直せ」など、阿竹選手を擁護する意見はほぼありませんでした。
全員があの頭突き行為はまったく不要なものだと認識していて、阿竹選手に対しては批判的な意見しかありませんでした。
2023年も「オールスター競輪」が開催されますが、恐らく多くのファンが「オールスター競輪」という文字を見ただけで阿竹選手の頭突き行為を思い浮かべるでしょう。
すると、「阿竹選手には票をいれたくない」という気持ちになりますし、もし出場したら多くのファンが「票を入れた奴は昨年の頭突き行為の事を忘れたのか?」とが激怒することでしょう。
阿竹選手がオールスター競輪に出場するためには票に頼らず自力で出場権を獲得する以外に道はないと考えられます。
自力で出場するためには、以下の条件のうちいずれかを満たさなければなりません。
・過去3回以上優勝した者(開催時S級1班所属が条件)
・選手選考対象期間において2ヶ月以上JCFトラック種目強化指定(A)に所属した者(開催時S級1班所属が条件)
恐らくこの条件をいずれも現時点で満たしていないでしょうから、2023年に阿竹選手がオールスター競輪に出場することはほぼ絶望的と考えられます。
競輪における代表的な反則行為は4つ
阿竹選手の頭突き事故に関しての説明はここまでとなります。
ここからはそもそも競輪の反則にはどのようなものがあるのかについて紹介していくことにしましょう。
競輪の反則行為は大きく分けると「斜行」「内側追い抜き」「押圧」「押し上げ」の4つとなっています。
斜行
(引用元:競輪ガイド)
斜行とは文面通り斜めに走る行為の事で、選手はレースの際に斜めに走って後ろを走る選手の進路を妨害してはいけないと定められています。
・斜めに走って自分あるいは他の選手の自転車が大きく損傷した
・そのほか進路妨害に当たるような斜行
主に上記3つに該当する行為が斜行と見なされて失格となります。
内側追い抜き
(引用元:競輪ガイド)
外帯線という場所の内側を走っている選手に対して内側から差したり追い抜きをすることは禁止されています。
外帯線は内側から2番目にひかれている線で、さらに内側は「退避路」といって通常のレースでは走ってはいけない線です。
つまり外帯線はレースで走る場所としては一番内側ということになります。
その場所より内側から差したり抜いたりするのは反則になるのは当然の事だということは理解してもらえたでしょうか。
・内側追い抜きで自分や他の選手が落車した
・内側追い抜きが原因で自転車が大きく故障した
これらの行為が認められた場合、内側追い抜きと見なされます。
押圧
(引用元:競輪ガイド)
押圧は他の選手に何かしらの衝撃や圧力をかけて内側に押し込む事です。
下記3つが押圧と見なされる行為となっています。
・押圧によって自転車が故障してレースが出来なくなった
・上記以外で特に著しい押圧をした場合
押し上げ
(引用元:競輪ガイド)
押し上げは押圧の逆で衝撃や圧力をかけて外側に追い出すことです。
押し上げと見なされる行為は押圧とほぼ同じだと考えてもらって間違いありません。
・押し上げによって自転車が故障してレースが出来なくなった
・上記以外で特に著しい押し上げをした場合
阿竹選手の反則行為は上記4つのうち、この押し上げと見なされて反則となりました。
まとめ
本記事では2022年8月11日の「オールスター競輪」で発生した頭突き事故を取り上げました。
今回の頭突き事件は頭突きを敢行した阿竹選手と犬伏選手が同じラインを組んでいたことによって発生したと考えられます。
経緯を見る限りラインを崩した弟子の犬伏選手に対しての制裁行為と思われますが、このような制裁行為は断じて認められるものではありません。
2023年現在犬伏選手は通常通りレースに出走しているため、大きな怪我には至らなかったようですが、競輪の落車事故は大怪我はもちろん最悪死亡してしまうこともある大変危険な事故です。
そのことは頭突きをした阿竹選手も私たち以上に認識しているはずで、にも関わらずこのような行為を実行してしまったことが非常に悪質であるといえるでしょう。
ファンの中でも阿竹選手を擁護する意見は一切なく、今回の行為によって人気は著しく低下してしまったと考えられます。
競輪には「斜行」「内側追い抜き」「押圧」「押し上げ」という4つの反則行為がありますが、いずれもほかの選手から見れば非常に危険な行為です。