競輪場で飛び交うヤジについて検証、罵声との違いは?
競輪場は競馬や競艇、オートレースと比べるととても静かです。
そのため観客席からの声というのはよく聞こえます。
コアな競輪ファンのなかにはレースを楽しむことももちろんですが、そういった観客席から聞こえる声を楽しみに毎日のように通い詰めている人が居たりします。
本記事では観客席から聞こえる声のなかでも特に特徴的ともいえる「ヤジ」について色々と検証していきます。
競輪場では様々な声援が飛び交っている
競馬場や競艇場の最終直線では大歓声が巻き起こります。
テレビ中継でもよく聞こえますし、ゴール前の大歓声はそのレースを盛り上げる要素のひとつであることは間違いないでしょう。
しかしレース中に聞こえるのはゴール前の大歓声だけではありません。
特に競輪場は馬の駆け抜ける音もボートやバイクのモーターの爆音も聞こえないので、ゴール前の大歓声以外の様々な声援がよく聞こえます。
レース前に推し選手に必死の応援を送っている人ももちろん沢山いますが、とにかく目立つのがいわゆる「ヤジ」で、なかには聞いていてあまり気分が良くないものもあります。
競輪ファンの間でもヤジに対してのイメージは両極端であり、「ヤジこそが競輪の醍醐味」と考えている人もいれば、「ヤジが飛び交っていると野蛮で場の雰囲気が悪くなる」という完全否定の意見も沢山聞かれます。
ヤジの語源について
少し雑学的な知識にはなりますが、「ヤジ」の語源について少し解説しましょう。
ヤジに似た言葉ですぐに思い浮かべるのは「野次馬」ではないでしょうか。
ヤジと野次馬は似ているだけあってものすごく関連性があり、実はヤジという言葉の元となっている言葉が野次馬なのです。
野次馬の現在の意味は「火災や犯罪現場などを見物に来た事件とは無関係の人たち」といった意味合いですが、元々の野次馬とは、「競走能力が無くなって役に立たなくなった「野次馬(おやじうま)」を指す言葉で、その場に居ても全く役に立たないという意味では現在の使われ方でも共通しています。
また、前を走る若い馬にただついていくだけの馬という意味合いもあるらしく、これが少し意味を変えて、「無責任にその場の出来事に対して騒ぎ立てる人たち」というヤジや野次馬の現在の使われ方になっていったと言われています。
選手に鬱憤をぶつけるのは「罵声」
競輪場に行くと必ずと言って良いほど聞こえてくるのが、特定の選手に対して集中的に飛ばされる「やる気あんのか!」「辞めちまえ!」などと言う怒号であり、こういう言葉を聞くと自分に向けられていなくても気分を害する人も多いでしょう。
恐らくこういった怒号を飛ばしている相手はその人が本命にしたり軸にしていた選手で、車券内に入らなかった事を怒っているのだと思います。
一部にはこれもヤジだと認識している人も居ますが、選手や聞いている人たちの気分を害する内容のものはヤジではなく「罵声」に該当します。
罵声ではなくヤジを飛ばせるようになろう
罵声は周りの人が聞いていて気持ちの良いものでは決してありませんし、場の雰囲気も悪くなります。
そして何より毎回全力でレースに挑んでいる選手たちの頑張りを真っ向から否定する行為です。
また、罵声を浴びせている人は他の人から良いイメージを持たれる事は絶対にありません。
選手に何か声をかける時は罵声ではなくヤジを飛ばすようにしましょう。
ユーモアのあるヤジを飛ばすと競輪場の雰囲気が和らぐ
罵声を浴びせるのはとても簡単ですが、これがヤジになるとセンスを問われるため途端に難しくなります。
周りが不快に感じないヤジを飛ばすためには、そのままだと罵声になってしまうような一言を少し頭の中で変化させる事を心がけるようにしましょう。
例えばあるレースで自分が軸にしていた選手が車券外になってしまったとします。
この時「馬鹿野郎!金返せ!」だと罵声になってしまいますが、これを「馬鹿野郎!お前が負けたから今日の晩飯がかけ蕎麦になっちまったじゃねーか!」になると、言葉のトゲが無くなり、聞いている周りの人が思わず「クスッ」となってしまうような内容になります。
これはあくまでも一例ですが、ユーモアを含めたものにすると、聞いている人達が不快に感じる事はありませんし、何より競艇場の雰囲気が和らぎます。
声をかけられた選手も気分を害する事はないでしょう。
ガールズケイリンだとヤジは圧倒的に少なくなる
男性選手のみのレースだとあちこちから罵声も含めてヤジが飛び交うのですが、これがガールズケイリンになると別の競技かと思うほど競艇場の雰囲気が一変します。
競輪場を訪れるのは男性が圧倒的に多いので仕方ないと言えば仕方ないですが、ガールズケイリンで罵声を含めたヤジが飛び交う事は滅多にありません。
前のレースであれだけキツい罵声を浴びせまくってたおじさん達が別人のように、「○○ちゃん、頑張って〜」「○○ちゃん、お疲れ様〜」と、選手を気遣うような声援を送るようになります。
この変化を楽しむのも競輪の醍醐味のひとつではあります。
選手はヤジの事をどう思っている?
レースに集中している選手達にはヤジや罵声を飛ばしても聞こえはしても内容までは入らないだろうと勝手な思い込みで言いたい放題暴言を浴びせかけている人たちも中にはいるかもしれませんが、実際のところ選手達はヤジの事をどう思っているのでしょうか?
選手にもヤジはちゃんと聞こえている
競輪選手へのインタビューでヤジについての意見などをやり取りしたものがありますが、選手達にもしっかりとヤジや罵声は聞こえているようです。
冒頭にも触れましたが、競輪場はモーター音などが一切ない為、他の公営競技のレース場よりも静かという事もあり、観客の話し声や歓声などもよく聞こえるのでしょう。
中には聞いていて耳を塞ぎたくなるような酷い内容のものがあるのも事実らしいですが、ほとんどの選手は競輪のレースにヤジや罵声はつきものだと思っているらしく、更に「ヤジを飛ばされているうちが華」と回答する選手もいました。
確かにヤジや罵声を飛ばされるという事は、裏を返せば注目されているという事になります。
ヤジすら飛ばされなくなるという事は、選手としての興味を全く持たれていないも同然で、そうなってしまうと選手生命はそう長くはないと言えるでしょう。
選手が驚くようなヤジを飛ばすファンも
そして聞こえるだけではなく、何を言われているのかもきっちりと把握しているとインタビューでは答えていました。
流石にゴール前の直線の時にはレースの事で頭が一杯で内容までは覚えていないでしょうが、スタート前のヤジなどはしっかりと記憶していて、中には「どうしてその事を知っているんだ⁉︎」と、選手自身が驚いてしまうようなヤジが聞こえる事もあるそうです。
レース前日に飲みに行っていた事についてヤジられる事は当たり前で、中には公にしていない結婚や離婚している事までヤジられる事もあるそうです。
今ならばSNSで情報はすぐに拡散しますが、そんなものがない時代でも例に挙げたような事が起こっていたらしく、コアな競輪ファンの情報網というのはなかなか凄いものがあります。
ヤジがまったくない競輪場は寂しいと感じている
ヤジを含めた声援は、選手にとってはやはり力になるらしく、期待されている事が分かるといつも以上の力が出たりする事もあるそうです。
一時期はコロナ対策で無観客でレースを実施したり、元々無観客で実施されるミッドナイト競輪ではヤジが全くない環境で走る事になります。
こういったレースで走っている時は寂しく感じたり、物足りないと感じる選手が大半で、ヤジというのは良くも悪くもレースを一味違ったものにする、「スパイス」の役割を果たしていると言えそうです。
まとめ
ここまで競輪場でよく聞かれる「ヤジ」について色々と解説しました。
ヤジは事故現場や火災現場などに頻繁に顔を出す無関係な人たちを意味する「野次馬」が語源となっていて、「試合に無関係な観客が好き放題選手に対して発言すること」といった意味です。
ヤジと似たような言葉に「罵声」がありますが、罵声は選手や聞いている人たちの気分を害するような発言であり、ヤジとは全く意味合いが異なります。
ヤジは聞いている周りの人や選手の気分を害しないような内容のものが該当し、自虐的な内容だったりユーモアを含めた内容だと競輪場の雰囲気も和やかになり、野次を飛ばされた選手の気分を害するようなこともないでしょう。
良いヤジはレースのスパイスとしての役割を果たしますし、飛ばされた選手のやる気もアップして良いレースづくりに貢献します。