競輪に複勝がないのはなぜ?廃止された理由や背景を紹介
公営競技の投票券を初めて購入するという人に最もオススメなのが「複勝」と呼ばれている種類の投票方法です。
ところが競輪には「複勝」という買い方自体が存在していません。
本記事では競輪の複勝について深く掘り下げていきます。
「複勝」とは?
複勝とはどういう買い方なのかをまず見ていきましょう。
公営競技の投票方法にはいくつかの種類があって、それぞれ的中となる条件が異なりますが、中でも複勝は1番的中条件が緩い買い方で、レースの予想が出来なくても運や勘で当たる事もあるため、公営競技初心者に最もオススメの買い方です。
公営競技をやっていて1番興奮する瞬間はやはり自分が購入した投票券が当たった瞬間なので、複勝は初めて当たった時の喜びを実感してもらうには最適な買い方と言えるでしょう。
各公営競技の複勝の平均配当は?
ただし、ある程度経験を積んだ人にとって複勝は「あまり買おうという気にはならない」投票方法です。
買おうという気にならない最大の理由は、平均配当が最も低い買い方だからでしょう。
全体的に配当が高額な競馬でさえ、複勝の平均配当はたった350円となっており、一点買いで勝負しなければ当たってもトリガミになってしまうような金額です。
ちなみに競艇の複勝の平均配当は200円となっています。
そしてオートレースの複勝ですが、2021年4月をもって廃止されており、現在は販売されていません。
競輪には単勝・複勝が存在しない
冒頭にも書いた通り、競輪はオートレースに先んじて複勝の販売を停止しています。
更に複勝だけではなく単勝の販売もおこなっていないので、競輪の車券を的中させるためには最低でも2車が3着以内に入っている事が条件となっています。
単勝・複勝の歴史について
競輪の単勝・複勝についてですが、最初から販売されていなかったわけではありません。
競輪がスタートした頃は普通に単勝と複勝の車券も販売されており、だいたい2002年から2003年ごろまでは販売を継続していました。
ですから現在40代か50代くらいの競輪ファンの人の中には競輪の単勝や複勝を買った事があるという人もいるかもしれません。
何故なくなってしまったのか
競輪の単勝・複勝の販売が廃止となった理由はただひとつ、「採算が取れないから」です。
今では自動券売機やネット販売などによって、車券の販売に人の手が取られる事はほとんどなくなったのですが、昔はそのような機械はもちろん存在していないため、車券は人の手で一枚一枚販売していました。
単勝や複勝の車券は他の車券と比べると非常に売り上げが低く、人件費を支払えるほどの売り上げすら確保できないような状態でした。
そうした頃に日本ではバブル景気が崩壊します。
バブル景気の頃に絶頂期を迎えていた競輪をはじめとする公営競技も大きな影響を受け、競輪の売り上げは著しく低下しました。
この最悪な状況を改善するために導入されたのが「3連複」と「3連単」です。
そして、このふたつの車券が導入されるのと入れ替わるように単勝・複勝は廃止となり、現在に至ります。
3連複と3連単は賭け式としては新しいですが、導入後の反響は多くの人が知っている通りで、今では競輪の売り上げの大部分を占めるようになりました。
単勝・複勝が無いのは競輪界にとっては大きなデメリット
このように単勝と複勝が廃止となった理由は売り上げを確保できないからですが、この二つの車券が存在しないというのは競輪界においては大きなデメリットであると個人的には感じています。
何よりも初心者が競輪に参入しづらい
冒頭で紹介したように、単勝は1着、複勝は3着以内に入る1名を予想出来れば的中となる車券です。
当てる事が難しい9車立でも単勝は9分の1、複勝に至っては3分の1という確率で的中します。
この確率ならば競輪が未経験の人でも「当たるかも」と思えるのではないでしょうか。
こういった初心者がとっつきやすい買い方が無いというのは、競輪の人口を増やすという目的において大きな障害となっている事は間違いありません。
競輪はチーム競技なので軸を決めづらい
競輪は各選手同士の個人戦であるのにも関わらず、レース後半までは「ライン」という隊列を組んで争われます。
個人戦であれば選手の個々の能力や成績を見て軸になる選手を決めれば良いので軸になる選手を見つけやすいです。
しかし「ライン」を組む競輪の場合、どのラインが残るかを予想しなければ的中させる事は非常に難しいです。
そしてライン争いに勝利した隊列を形成している選手で最終的に着順を争われますが、この争いがどうなるかを予想する事もかなり難しいため、軸となる選手を決めるのは競馬よりも難易度が高く、競輪の新規参入者がなかなか増えない要因のひとつとなっています。
初心者が車券を買うならワイドくらいしかおすすめがない
はじめて競輪の車券を購入しようとしている人から「どの車券がおすすめ?」といわれた際にあなたはなんと答えるでしょうか。
ほかの公営競技であれば迷わず「単勝だったら1着になる番号を当てるだけだし、複勝だったら3着までに入ったら当たりだから初心者にもおすすめだよ」と教えることができるでしょう。
ところが競輪では単勝と複勝がないので非常に困ります。
どの車券でも3着以内に入るふたつの番号を当てなければならないというのはやはり初心者にとってはかなりハードルが高いと捉えられてしまうでしょう。
各車券の特徴から考えると、3着以内に入る2名を当てれば的中となる「ワイド」くらいしか初心者におすすめできる車券はありません。
このワイドも勘や運ではなかなか当たる車券ではないというのが正直なところです。
初心者にはとにかく競輪を楽しんでほしいと思うのがベテランの同行者の気持ちですが、競輪で最も楽しい瞬間である「車券を的中させること」が初心者にはとても難しいというのが今の競輪です。
競輪単勝・複勝の復活はある?
競輪の単勝・複勝の復活があるかについてですが、今のところ単勝・複勝が再び販売されるという発表はなされていません。
利益を重要視して廃止された単勝・複勝ですから、復活させたところでそこまで利益の上積みは見込めない単勝・複勝は競輪を運営する側にとってはメリットがあまりないため、よほど何か大きな動きがない限りは競輪の単勝・複勝が復活するということは考えられないでしょう。
しかし競輪ファンの多くは単勝・複勝の復活を願っています。
やはり単勝や複勝は買いやすいですし、競輪初心者にも気楽におすすめできる買い方であるというのは非常に大きいです。
ここ最近、競馬と競艇は非常に盛り上がってきており、新規参入者も続々と増えてきています。
競輪ファンは競輪も同じようにムーブメントが起こって新たな競輪ファンがたくさん出てきてほしいと思っているはずですが、ここで単勝・複勝がないというのは大きな枷となってしまっていることは否定できません。
ネット販売が主流の現在、流れは変わってくるかもしれない
しかし競輪をはじめ公営競技は大きく様変わりしています。
投票券の販売はレース場または場外売り場での販売から一気にネット販売が主流となりました。
ネット販売であればシステムさえ構築してしまえば人の手はほとんど必要ありません。
つまり、ネット販売限定で単勝・複勝を販売すれば競輪を運営する側にはそれほど負担がかからないので単勝・複勝を復活させることは十分可能なのではないでしょうか。
まとめ
単勝は1着になる番号を当てれば的中、複勝は3着以内に入る番号を当てれば的中と両者とも的中条件が非常に緩いため、特に公営競技初心者におすすめできる買い方です。
ところが競輪では2003年以降単勝と複勝は販売していません。
単勝と副賞の売り上げが芳しくなく、窓口を設けたり係員を配置したりする際に発生する経費を単勝や複勝では回収できないという理由で「3連複」「3連単」の販売開始と同時に単勝と複勝の販売を廃止しました。
現在も運営側からは探勝や複勝の販売を再開するというアナウンスは出されていません。
しかしながら競輪ファンを増やすという目的を達成する上で気軽に買える単勝と複勝がないというのは大きなデメリットであることは間違いないでしょう。
昔は競輪場での手売りがメインでしたが、今ではネットで車券を購入する人がほとんどであり、人の手がかかることはほとんどありません。
ネット販売限定でも良いので、単調と副賞の販売を再開させることが競輪のさらなる発展には必要不可欠ではというのが個人的な意見です。