競輪の控除率・還元率とは?控除されたお金の使い道を徹底解説!
この記事をこれから読もうとしている人の中で、競輪の控除について考えた事がある人はあまり多くないのではないでしょうか。
本記事では競輪の控除について詳しく解説していきます。
今まで控除については無関心だった人も、この記事を読めば競輪で使うお金について改めて考え直すきっかけになるかもしれません。
競輪の配当金はどこから捻出されている?
控除について解説する前に、競輪の配当金がどこから捻出されているのかを理解しておく必要があるでしょう。
競輪の配当金は、私たちが車券を購入する際に支払う「車券代」から捻出されています。
悪い言い方をすれば私たち競輪ファンは車券を買うためにお金を支払い、的中した場合は支払ったお金を取り戻す事ができる、というわけです。
ところがこのシステムだと的中したところで何の得もないので、誰も車券を買わないでしょう。
しかし、競輪をはじめ公営競技には「オッズ」というもうひとつのシステムがあります。
オッズは各車券の全売り上げのうち、その買い目の売り上げがどのくらいの割合を占めているかによって決まります。
多くの入金があったオッズは配当倍率が低くなり、入金が少ないオッズは逆に配当倍率が高くなります。
このシステムのおかげで的中した人はオッズが1.0倍にならない限りは支払ったお金よりも多くのお金を受け取る事ができるため、得をするというわけです。
売り上げの全額が配当金になっているわけではない
私たちが支払った車券代を使って配当金を生み出している事は理解してもらえたでしょうか。
ところが、実は売り上げ金額を全額配当金に回しているわけではありません。
競輪をはじめ、公営競技では売り上げ金から定められた割合を差し引き、残った分を配当金として私たち競輪ファンが受け取っています。
つまり、胴元である運営側はどれだけ売り上げが低迷していたとしても、車券の販売に関しては得をするようにできているのです。
この売り上げ金から差し引いたお金の事を「控除」と言います。
控除率は各公営競技またはギャンブルなどで割合が定められていて、競輪の控除率は25パーセントとなっています。
控除率が25パーセントという事は、残りの75パーセントが私たち競輪ファンに還元される「還元率」という事になります。
競輪以外の公営競技の控除率について
競輪以外の公営競技の控除率についてですが、競艇は競輪と同じく一律25パーセントです。
競馬は馬券ごとに控除率が設定されており、単勝・複勝は控除率20パーセント、最も人気がある3連単の控除率は27.5パーセントと、競輪の控除率よりも高く設定されています。
そしてもうひとつの公営競技である「オートレース」の控除率は一律30パーセントです。
控除率が高ければ高いほど、私たちファンに対する還元率が低くなるため、相対的に稼ぐ事が難しくなります。
ここまで読み進めて、「絶対に得するように売り上げ金から天引きするなんて、酷いシステムだ!」と思う人もいるかもしれませんが、控除によって得たお金を使って運営側はレースの賞金を支払ったり、競輪場の維持費にしたり、競輪場で働いている社員たちに給料を支払ったりしています。
競輪場の運営が成り立っているのは私たちの車券代のお陰だと考えればこのシステムも納得がいくのではないでしょうか。
競輪の運営の仕組みや運営団体について
競輪は複数の運営団体によって成り立っている競技です。
控除に少し関連する事なので、競輪の運営団体について軽く触れておく事にしましょう。
競輪競技の運営主体は「地方自治体」なので、例えば奈良競輪場ならば奈良県が、岸和田競輪場ならば大阪府が主体的に運営しています。
そして、その地方自治体を「経済産業省」が監督していて、地方自治体の運営方針に何かしら不備がある場合は経済産業省から指摘を受ける、というわけです。
地方自治体はレースを開催する際には監督官庁である経済産業省に届け出をする事が義務付けられていて、経済産業省のチェックをクリアする事でレースを開催する事ができます。
ところが地方自治体が競輪の運営に関して行う事というのはここまでであり、実際のレースの運営そのものは、「公益財団法人JKA」に全て委託しています。
JKAはレース全体の運営を司る団体であり、その下には更に「全国競輪施行者協議会」「日本競輪協議会」という団体があります。
JKAはレース進行や選手の管理といった、実際のレースに関する運営がメインですが、日本競輪協議会は選手の訓練、管理育成など、どちらかと言えばレースそのものではなく、各選手の資質向上をメインとしている団体です。
そして全国競輪施行者協議会は、JKAと日本競輪協議会の間に立ち、両者が滞りなく運営出来るようパイプ役を担っています。
上記示した団体も含め、競輪を運営する団体をざっとまとめると、以下8団体あります。
・(公財)車両競技公益資金記念財団
・(公社)全国競輪施行者協議会
・(一社)日本競輪選手会
・(一財)全国競輪選手共済会
・(一財)日本サイクルスポーツセンター
・(公財)日本自転車競技連盟
・(一財)日本自転車普及協会
なんとこれだけの団体が競輪の運営に絡んでいるのです。
確かに競輪という競技を運営維持するのは大変ではありますが、果たしてこれだけの団体が必要なのかと疑念を抱かざるを得ません。
売上金の用途は明確に定められている
私たちが支払った車券代はそのまま売り上げになるわけですが、この売り上げの使い道は明確に定められていて、運営側が自由に使えるわけではありません。
まず何度も解説しているように売上金のうち75パーセントは私たちが車券を的中させたときに受け取る「配当金」として使い、残りの25パーセントを「控除」として運営側が確保します。
控除として確保したお金のうち、3.3パーセントで出場選手への賞金と、JKAへの交付金を支払い、さらに1.1パーセントを「地方公共団体金融機構」に納付しています。
そして残ったお金が地方自治体側の収益となって、その収益を元に競輪場の維持や整備、そして競輪の収益の使い道としてもっとも有名な公共事業の振興に充てられています。
ちなみにJKAや全国競輪施行者協議会など、競輪の運営にかかわる団体の理事や管理職を務めている人物というのは元経済産業省や総務省などといった政治家経験者が多いです。
この理由から、競輪の団体は政治家たちの「天下り先なのでは?」という指摘も出てきています。
控除という記事のテーマから大きく逸脱するのでこれ以上は触れませんが、複数の団体の管理職を兼任していれば、巨額の年収になることは間違いないでしょう。
収益金の実際の使われ方についての一例
競輪の収益金は実際どのように使われているのでしょうか。
ネットで調べてみると、「別府市」と「宇都宮市」の事例を確認することができました。
それぞれの市がどのような使い方をしているのか、別府市と宇都宮市の実例を本項目では紹介していきます。
別府市
令和3年度の収益の使い道を見ていくと、「様々な公共事業の維持費として活用」「周辺対策事業」「地域振興補助事業」という3つの目的で使われており、以下のようにさまざまな活動事例が紹介されていました。
(まち・ひと・しごとの創生に係る取組を推進するための基金)
・財政調整基金積立金
(令和4年度のPCR検査センター運営費の財源として積立て)
・在宅支援事業費
(緊急通報システム、在宅高齢者介護者見舞金など)
・予防費
(各種予防接種費など)
・教育指導費
(小・中学校ICT関連経費など)
・体育施設費
(各種体育施設の改修費など)
・体育振興費
(スポーツ協会補助金、地区体育協会補助金など)
・周辺対策事業
・競輪場周辺の道路整備(市道)
・各種イベントへの協力、協賛(別府エール花火の協賛など)
・そして、地域振興補助事業の活動事例として、
・ドライブインシアターinべっぷ事業
・大分県立別府翔青高等学校校外活動用バス購入事業
・大分県立別府翔青高等学校校外活動用バス購入事業
宇都宮市
次に宇都宮市の活動事例を確認してみましょう。
宇都宮市にある「宇都宮競輪場」は、「地方財政健全化を目的に開催」していて、収益金は様々な事業に活用していると冒頭に説明文があります。
これまで道路・河川整備・学校建設・消防等の施設整備といった公共事業を実施するための財源として活用されてきていて、近年はより市民生活に密着した事業の財源として使われています。
「競輪事業収益金の使途一覧」という資料があり、そこにはどのような事業にどれだけのお金が使われてきたのかが記載されています。
項目を見ていくと、
・障がい者福祉費
・児童福祉費
・老人福祉維持費
・環境衛生総務費・地球温暖化対策
・保健体育総務費
といった目的で収益金が使われていました。
各項目ごとの使われる金額というのは毎年変動していて、その年によって割合が変化しています。
埼玉県における競輪事業の現状について
埼玉県が提示していた「競輪事業の現状と課題について」という資料を見ると、競輪そのものの売り上げは最も低かった時期と比較すれば回復基調にあります。
しかし競輪場の入場者数は減少の一途をたどっていて、コロナ禍前の平成30年でも平成24年の半分となってしまいました。
これは恐らくネット販売の普及によってわざわざ競輪場に足を運ぶ必要がなくなったというのも大きいと思われます。
しかし競馬や競艇も同じような状況でありながら、入場者数も徐々に回復してきています。
それは競馬場や競輪場がただレースを観戦するだけの場所ではなく、カップルや家族連れも楽しめる「アミューズメント施設」としてリニューアルしたことが大きいでしょう。
競輪の入場者数を増やすのであれば、同じような大幅リニューアルをしたり、魅力的なイベントを開催するなどといった工夫が必要です。
そしてもうひとつ大きな課題となっているのが「競輪のファン層」で、全体の約85パーセントが男性であり、さらにそのうち60パーセントが70歳以上の高齢者となっており、若い年代の競輪ファンというのはほとんど居ません。
この状況を打破しない事には競輪ファンは増えないどころかある時期を境に一気に減少してしまうでしょう。
課題解決として、「収益向上」「競輪事業の活性化」「競輪事業のイメージアップ」という項目が掲げられ、様々な案が提示されていました。
効果がありそうだと感じた案もたくさんありましたが、一部であまり効果はなさそうだと感じたものもあります。
特に「場外車券売り場」の増加という案については、インターネット販売による売り上げが今後ますます増えていくことは間違いないという現状を踏まえると資金の無駄遣いになってしまうのではと思われます。
それ以上に「わざわざ足を運ぶ価値のある競輪場にしていく」ことが大事なのではないでしょうか。
まとめ
競輪の配当金は私たちが支払った車券代によって成り立っていますが、車券代すべてが配当金に充てられているわけではありません。
競輪では売上金のうち25パーセントを「控除」として差引き、残り75パーセントを配当金として私たちに還元しています。
控除した売上金は全額が競輪場の取り分になるわけではありません。
競輪は景山産業省を監督官庁としており、運営そのものは地方自治体の管轄です。
しかし地方自治体はレースの開催を経済産業省に伝えるのみであり、実際の運営はJKAや日本競輪協議会など様々な運営団体によって成り立っています。
そして競輪の収益金のうち一部はこのJKAや日本競輪車競技会などへの交付金として使われていて、更に一部がレースの賞金に使い、残った分は地方自治体の取り分で、この中から競輪場の施設を維持するための費用を捻出したり、公共事業の振興費に使ったりしています。
毎年売上金の用途は明確に定められているため、各競輪場や地方自治体が自由に使うことはできません。
競輪事業の現状として、どこの競輪場も売り上げ自体は回復しているものの、入場者数は大きく落ち込んでいます。
更にファン層に関しても若者はほとんどおらず、60パーセント以上が70歳以上の男性であるため、ある時期を境に競輪ファンの数は激減することが懸念されています。
若者が興味を持つようにイメージアップさせること、そしてインターネット投票が今後ますます主流になっていく状況であっても「わざわざ足を運びたいと思える競輪場」を作り上げていくことがこれからの急務だといえるでしょう。