女子競輪で死亡事故や大事故は発生しているのか徹底調査

女子競輪で死亡事故や大事故は発生しているのか徹底調査

近年、競輪は女子選手の育成にも力を入れており、今では「ガールズケイリン」として女子選手限定のレースが開催されるまでになりました。

しかし競輪は時に自転車同士が接触するほどの激しい争いがあるスポーツであり、接触した際の転倒事故も発生します。

女子競輪でそのような痛ましい事故は発生していないのでしょうか。
本記事では女子競輪の競技中における事故について解説します。

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競輪が危険な競技である理由

競輪が危険な競技である理由

日本で認められている公営競技は競馬、競艇、オートレース、そして競輪と全部で4つですが、どの競技もほかのスポーツと比べても危険な競技であるという共通点があります。

「スピード」「天候」「順位争い」「自転車の構造」、これが競輪が危険な競技である理由となっています。
簡単に一つ一つの要因について解説していきましょう。

スピード

競艇選手が全力で自転車を漕ぐと、最大で時速80キロにもなります。
私たちの漕ぐ速度であっても突然転倒したら擦り傷だけではすまないですし、場合によっては骨折してしまうこともあるでしょう。

過去には自転車と歩行者が接触した死亡事故も発生しています。
一般の人の倍近くの速度で走行している自転車に乗っていて転倒してしまったら、その衝撃は想像もつきません。

天候

次に天候ですが、競輪は屋外でおこなわれる競技なので天候の影響を直接受けます。
そして雨が降っていても基本的に競技が中止になることはありません。

雨が降っているときや降った後などは当然コースが濡れていてスリップしやすくなり、事故の発生率も高くなります。

順位争い

そして事故が発生しやすい危険なスポーツである最大の要因となっているのが順位争いです。
競輪の世界は完全に実力主義であり、上位に入賞すればするほど収入が多くなります。

競輪選手全員が誰よりも早くゴールしたいと思っている以上、特に最終周回での激しい順位争いは避けることができません。
時には半ば強引に前の選手よりも良いポジションにつこうと動き、その際に他の選手と接触して転倒することがとても多いです。

自転車の構造

最後の自転車の構造に関してですが、一般的な自転車とは異なり、競艇用自転車にはブレーキがありません。
したがって、例えば目の前の選手が急に転倒してこちらに迫ってきたとしてもブレーキをかけて停まることができないのです。

被害を防ぐためには左右に動いて回避するしかありませんが、咄嗟にその方向へと動くのはとても難しいですし、避けた際に横に選手がいれば接触して転倒という事故が発生してしまいます。

幸い女子競輪では死亡事故は発生していない

幸い女子競輪では死亡事故は発生していない

転倒した際、頭部など打ち所が悪ければ命を落としてしまうこともある競輪ですが、結論から言えば幸いにも今のところ女子競輪で死亡事故は発生していません。

女子競輪、公式での愛称「ガールズケイリン」が本格始動したのは2012年7月1日で、まだ歴史が浅いことがまず死亡事故が発生していない理由の一つといえるでしょう。

女子競輪で死亡事故が起こっていないのはルールの違いによるもの?

女子競輪で死亡事故が起こっていないのはルールの違いによるもの?

それ以外に女子競輪で現在のところ死亡事故が発生していない要因のひとつと考えられるのが、女子競輪独自のルールです。

競輪は個人競技ではあるのですが、レース開始から終盤までは「ライン」と呼ばれる隊列を形成し、半ばチーム戦のような形で争うことになります。

特に最終周回あたりになると、各ライン同士で激しいポジション争いが勃発、選手同士がぶつかり合うことは日常茶飯事です。

ただでさえバランスを取りづらい競輪用の自転車に乗っていてほかの自転車とぶつかってしまったら転倒してしまうのも仕方ないでしょう。

しかし女子競輪ではラインを組むこと自体が禁止されています。
ポジション争いはあくまで個人同士となりますし、そもそも女子選手同士で激しいぶつかり合いそのものが発生しません。

しかしあわや大惨事の事故は発生してしまっている

しかしあわや大惨事の事故は発生してしまっている

しかし、発生していないのは「死亡事故」に限定すれば、の話です。
通常の競輪とはルールが異なる女子競輪であっても、最終周回においては激しい争いとなる事に関しては全く変わりありません。

また、女子競輪であっても最高速度は60キロを軽く超えますし、雨の中でもレースは継続されます。

そして女子競輪用の自転車もブレーキがついていないなど、ラインを組むことが禁止となっている以外の条件は全く同じであるため、たとえ女子競輪であっても落車事故は発生していますし、一歩間違えれば命を落としていたのではないかというような危険な事故も過去に発生しています。

本項目では女子競輪で発生した落車事故のうち、特に命を失う危機に直面した選手を3名紹介します。

加瀬加奈子

加瀬加奈子(引用元:KEIRIN.jp)

加瀬加奈子選手は2022年に記録が更新されてしまったものの、それまでは最年長記録となる41歳1か月13日での優勝という記録を持っていたベテラン選手です。

ガールズ競輪発足時から選手として活躍し、2013年にはガールズケイリンにて13連勝を記録するという無類の強さを誇っていました。

そんな加瀬選手ですが、2015年12月、四日市競輪場でのレースにて落車し、その際に頭を強く打って意識不明となってしまいます。
本人も「気が付いたら病院に居た」というかなり危険な状況でしたが、幸いにも命に別状はありませんしでした。

しかし脳に影響を及ぼす怪我であったため、一時は引退することも考えたそうです。
しかし懸命の治療によって現在も現役の競輪選手として活躍し続けています。

永塚祐子

永塚祐子(引用元:KEIRIN.jp)
永塚祐子選手は競輪選手になるまではバリバリのキャリアウーマンで、不動産関係の会社に勤務していたという異色の経歴の持ち主です。

自転車は趣味で乗る程度でしたが、川崎競輪場で開催されていたイベントにお客さんとして訪れた際、店員さんからガールズケイリンというものがあることを紹介され、それがきっかけで女子競輪選手への道を歩むことになりました。

2020年にデビューした時、すでに長塚選手は35歳と、ほかのデビューした選手と比べると一回り以上も年齢が上でした。
基礎体力などは若い選手に劣っては居ましたが、努力を積み重ねた結果、2021年2月に念願の初優勝を手にします。

ところがその直後に行われた小倉競輪場でのレースにて落車し、右鎖骨、ろっ骨、腰椎圧迫骨折という聞くだけでも痛ましい大怪我を負ってしまいました。

怪我から復帰後はなかなか思うような結果が残せておらず、苦しいレースが続いていましたが、2022年に入ると徐々に復調の兆しを見せており、もう少しすればこれまで同様の活躍が期待できるでしょう。

石井貴子

石井貴子(引用元:KEIRIN.jp)
石井貴子選手はご両親がスキー好きだったこともあり、幼少期からずっとスキーを続けていたのですが、電車の吊り広告で「ガールズケイリン選手募集」という文字を見て即座に競輪選手になる事を決意、見事競輪選手としてデビューします。

2014年にデビューするといきなり2位の選手に大差をつけて勝利、さらにはその節を完全優勝してしまうという鮮烈なデビューを遂げます。

その後もガールズケイリンコレクションやガールズケイリンフェスティバルといった女子競輪の重賞レースには毎回のように出場している、女子競輪界ではトップ選手のひとりです。

そんな石井選手ですが、2021年京王競輪場でのレースにてほかの選手と接触してしまい転倒、右の肋骨を骨折したうえに血気胸を発症してしまうという大怪我を負ってしまいます。

長い競輪人生のなかでもこれだけの怪我を負ってしまったのは初めてであり、身体だけではなく精神的にも大きなダメージを負ってしまった石井選手は引退も考えるほど憔悴してしまいます。

しかし、ファン投票となっているガールズケイリン総選挙において5位に選ばれたことを聞き、競輪選手として現役を続けることを決意、その後は懸命のリハビリに励みます。
体調は万全とは言えない状態でしたが、見事ガールズドリームレースにて復帰、ファンを大いに喜ばせました。

練習中公道で大事故を起こしてしまったという例も

練習中公道で大事故を起こしてしまったという例も

競輪選手は日々のトレーニングも競輪場で行っていますが、時には自前の自転車を使って公道でトレーニングすることもあります。

しかし2015年、公道で自転車トレーニングをしていた山本奈智選手の自転車と歩行者が接触、接触した歩行者は一時意識不明の重体に陥ってしまいました。

非常に少ない数ではありますが、レース中だけではなく公道でのトレーニング中に事故が発生してしまうというケースもあります。

今後も死亡事故が発生しないことを祈るばかりだが…

今後も死亡事故が発生しないことを祈るばかりだが…

今のところ、幸いにも女子競輪で死亡事故は発生してはいませんが、今後も死亡事故が発生しないという保証はどこにもありません。

女子競輪とほぼ条件が変わらない通常の競輪においてはレース中、これまでに40件以上もの死亡事故が残念ながら発生しています。

単純比較は出来ないですが、時速60キロで走行する車が衝突したときの威力は高さ14m、階層に換算するとだいたい5階建てのビルから落下して激突したときと同じくらいの威力だといわれています。

このような力で頭から地面に激突してしまったら、いかにヘルメットをかぶっているとはいえ、命を失う危険性は十分あります。

また、優勝金が高額となる重賞レースの決勝戦などでは「このレースで勝てば一気に大金が手に入る」という考えが先行し、つい安全面がおろそかになってしまうのは仕方ないといえます。

しかし、命を失ってしまえばそれ以降一切お金はもらえませんし、好きなものを購入することも、行きたいところに行くこともできません。
「自分の命が一番大事」という気持ちを忘れずにレースに臨んでほしいと個人的には常に願っています。

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まとめ

ガールズケイリンが本格的に発足したのは2012年ですが、2022年6月現在において死亡事故は幸いにも発生していません。

しかしながら、競輪は女性同士のレースであっても時速65キロ近くというかなり速いスピードで争われるため、ほかの選手と接触し、落車してしまうと骨折などの大怪我を負ってしまう可能性は十分ありますし、実際に女子競輪において複数ヵ所を骨折、長期休養を余儀なくされてしまうといった事例もあります。

レース中の事故は本当に痛ましいことですし、選手だけではなく競輪を愛する多くのファンも辛い思いをします。
自分が投票した選手が勝ってくれるのが一番ですが、まずは落車事故を起こすことなく無事に完走してくれることを願いつつレースを観戦するようにしましょう。